ジオ・サーチ様
個人が最善の行動をとらなければ事業を守れない
認識の違いを体験できた災害時の意思決定訓練
ジオ・サーチ様は、マイクロ波を活用した地中情報の3次元透視技術『スケルカ®』を実用化し、その高い技術力によって、災害時だけでなく老朽化した日本の道路インフラ整備に貢献されてきました。路面下空洞調査のパイオニアであり、調査距離並びに確認空洞信号数で世界ナンバーワンの実績を誇っています。この度のBCP訓練支援サービスのご利用に際し、代表取締役社長 冨田洋様、取締役 人財開発部長 紫垣高志様、人財開発部 課長 萩田隆明様にお話を伺いました。
―まずは貴社の事業内容をお聞かせください。
冨田:弊社は1989年に創業し、インフラ・セキュリティの会社として独自開発した「スケルカ(透ける化)」技術を使い、路面下に発生した空洞や、橋梁等のコンクリート構造物内部の劣化箇所等、内部に潜む見えない危険を調査しています。
2011年東日本大震災では、私自身、何度も現地入りし、合計2,500ヶ所の道路陥没事故を未然に防ぐことが出来ました。また、2016年の博多駅前の陥没事故においては、直後に周辺地域の安全確認のため空洞調査を実施するなど、日本の道路インフラ整備に寄与してきました。今では国内に留まらず、タイや韓国においても要請を受け、スケルカ調査を実施しています。
緊急対応に強いジオ・サーチのBCP
―これまでのBCPの取組状況を教えていただけますか。
紫垣:弊社は、道路陥没など突発的な災害時に全国の自治体からの要請に基づき、緊急対応しています。
平時からBCP訓練を行っているようなものですし、自社のBCPにも真摯に取り組んできました。具体的には、緊急時に速やかに現場に駆け付けられるように拠点を全国に分散する、従業員が今どこにいてどのような状況にあるのかが、すぐに分かるように毎月の安否確認訓練を実施する、第三者の目を入れる意味で内閣官房国土強靭化推進室が進めているレジリエンス認証取得をしています。
安否確認では、震度5弱以上の地震があれば、従業員が自主的に安否確認アプリに所在登録することを決め、ルールの浸透を図りました。また、有事に備え、備蓄品の用意も入念にしてきました。そういった自分たちができる考えうる活動は自社で行ってきました。
ジオ・サーチらしさを大切に、上手に外部を使う
―弊社にお声がけいただいたきっかけは?
紫垣:どんなにマニュアルを万全にしていても、災害は常に経験したことのない事態が起き、マニュアルがあれば全てに対応できるというものではありません。
大事なのは、組織も人もレジリエンス力だと考えます。そのマインドを鍛えていくためには、マニュアルではなくて、何か実践的なきっかけが必要なのではないのかという課題認識はありました。
そこで、BCPセミナーに参加してニュートンさんのコンサルティング事例を伺って、具体的にコンタクトを取らせていただきました。ほかにも色々と情報収集はしていたのですが、ニュートンさんの様々な実効力を高める方法論に特に興味を持ちました。社内で作り上げてきた緊急時の対応を実際の有事に機能するものにするためには、ときに外部からヒントやノウハウを吸収しながら質の高い訓練を行うことが必要です。
思い切った日程確保、設計段階から目的を明確に
―今回の取組についてご紹介いただけますか
紫垣:弊社は北海道から九州まで全国に事業所が12カ所にあります。災害時に迅速な対応をとるために拠点を分散させてきた一方で、全従業員が一斉に集まることが難しい環境にもなっていました。そうした中で災害時に拠点間で連携し、チームとして機能させていくためには、円滑なコミュニケーションをいかに機能させていくかが課題だと感じていました。
毎年、年に1度の全社会議があり、その機会にBCP訓練をやってみようということになりました。いままでは、日帰りの実施でしたが、今年は訓練時間を確保するため、1泊2日に延長して、全従業員で実施することにしました。
冨田:問題点を掘り下げると、大きく2つの課題がありました。一つ目は有事に対しての各部門の温度差です。災害が起きた場合、即時現場へ駆けつける実働部隊と、拠点で分析等を行う管理部門等にわかれます。現場の実働部隊と管理部門が同じ危機感を共有できているのかという課題がありました。
二つ目は、実働部隊が災害時に出動した後、拠点間で連携し、現場をサポートするトレーニングは全社レベルでしていなかったことです。以前は、拠点数も少なく、別拠点の誰が、どの役割で、何ができるか等が分かったため業務は一気通貫で業務ができていましたが、拠点も人も増え、誰が何をできるかが不明確になりつつありました。スケルカ―が災害時に出動して戻ってくる拠点と全国の他の拠点との連携が取れていれば、必要なものを相互で供給しあうことができます。そのためには社内に残る管理部門の拠点間の連携強化をする活動が必要だと感じていました。
―訓練手法の選定にはどのようなことに気を使われましたか?
紫垣:各拠点の管理部門は、顔を合わせる機会も少ないのでコミュニケーションを促進させることです。そのため、訓練手法は、拠点横断で役員、部課長、部門、若手などの階層別のグループがFace to Faceで意見を発表しあえて、議論できる「意思決定訓練」を選ばせていただきました。各階層別にグループをつくり、被災直後の行動について設問をなげかけます。グループ全員が自分の意見を決め、「YES」「NO」カードを表示し、多数派意見、少数派意見それぞれで何故その意思決定をくだしたのか議論を重ねます。議論の結果、そのグループとしての最終結論を意思決定者がまとめて最後に発表を行います。意思決定前の議論で、各テーブルは大変盛り上がっていました。
気づきが多かった意思決定訓練
―今回、参加してみた感想はいかがでしたか?
萩田:私は事務局側で参加はしませんでしたが、予想以上に議論が活発に進みました。アンケートでは、役員と一般職員、それぞれの立場での意見の違いは、双方にとって大きな気づきがあったとの意見が多数あがりました。気を使った点は、2フロアを使い150人で実施したのですが、限られた時間の中で課題をまとめないといけないことでした。進行を管理していただき、フロアが違っても同じ時間で終了することができて、すごくよかったと思います。
紫垣:私は参加者として役員の中で討議に入っていましたが、グループワークの結果を発表すると、従業員からは驚きの声があがったりして、現場の生の反応が新鮮でした。また、訓練で発見された課題で重要なものは直ぐに実施することが決まりました。
要は、正解があるわけではないということです。災害発生時に自分が考えて決めていかなければいけない。BCPの目的である「従業員とご家族の安全を確保し、業務体制を速やかに復旧させる」に則り、その時その時の最善の行動をとらなければ、自分の命は守れないし、会社の事業も継続できません。それは立場とか能力によっても違いがでてくる。意思決定訓練は、従業員がそれを体験し、気づけた効果的な訓練手法でした。
―本日はありがとうございました。
利用サービス
プロジェクトメンバー
お客様 |
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代表取締役社長 冨田 洋 様 |
取締役 人財開発部長 紫垣 高志 様 |
人財開発部 課長 萩田 隆明 様 |
人財開発部 林 美智子 様 |
ニュートン・コンサルティング |
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代表取締役社長 副島 一也 |
コンサルタント 長内 麗奈 |
担当の声
全社を巻き込んだ連携訓練と意識の醸成
ジオ・サーチ様の事業の特性上、現場スタッフは緊急対応に慣れておられます。この度の訓練では、企業規模の拡大に伴う、拠点・支社の増大やリソースの分散化によって懸念されていた、拠点間の連携、現場スタッフを支えるバックオフィスとの連携の実効性を主に検証し、課題を洗い出されました。また、普段顔を合わせない社員同士が訓練を通してコミュニケーションをとることで、全社的に、自身の業務への理解がさらに一段深まり、社会的な役割に対して意識を統一することができたように思います。
こういったことの積み重ねが、BCP活動を継続し、実効力を担保し続けるための企業文化を醸成する活動と言えるでしょう。ジオ・サーチ様の危機対応力の更なる発展をお祈り申し上げます。