清水建設様

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BCMSとエネマネの両方を追求する
地域連携=共助の取組「京橋モデル」

清水建設株式会社様は、東京都市サービス株式会社様、株式会社シミズ・ビルライフケア様とともに「経済産業省 グループ単位による事業競争力強化モデル事業」に参加され、ニュートン・コンサルティングの支援のもと、本社ビルのある東京都中央区京橋1・2丁目地域の事業競争力・組織力・ブランド力を強化する、大変ユニークな取組を行っています。当プロジェクトを取組を推進されたecoBCP事業推進室室長 那須原 和良氏にお話を伺いました。

地域のBCPとしての「共助」に取り組む

―“地域のBCP”とは、どういった考えから来ているのでしょうか。

那須原: 今回の取組は、当社本社ビルがある京橋地域においてBCPとエネルギーマネジメントに取り組み、まちのブランド力や競争力を上げようとするものです。

当社のビルは2012年に竣工しましたが、東日本大震災の経験から、地震・災害への備えに万全を期しました。しかし、この京橋地区の周囲を見てみると、他の既存市街地と同様に備えが十分にできない建物もあります。そこで、一社ですべてをまかなうことが難しくても、お互いで補完しあう「共助」の仕組み、つまり近隣でお互いに助け合うことが重要になるのではないかと考えました。更にはこの共助の取組みを拡大、充実していくことで地域の事業競争力が上がると考えました。

そこでまず、この地域で活動している当社、地域熱供給会社である東京都市サービスと当社のグループ会社で建物管理などを行っているシミズ・ビルライフケアの3社で協議会をつくり、今回の事業を始めることにしました。

他地域にも展開できる事業の仕組み

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―事業計画はどのように進めていくのですか?

那須原: 事業計画はフェーズ1~3に分かれています。

フェーズ1は、京橋の中でも、東京都市サービスが地域熱供給を行うエリアとしました。この場所では熱エネルギーの面的利用が既に行われており、共助の取組みが行いやすいと考えました。次のフェーズ2では京橋宝一町会と京橋宝二町会のエリアを合わせた範囲に、フェーズ3では更にエリアを広げ京橋1・2丁目地区全体へと広げていく予定です。

事前に町会の方々や近隣企業に意見をうかがったのですが、この試みを非常に歓迎していただけました。「将来的にまちで自家発電機を配備したり、駐車場の一角に防災の備品置場を設置すれことができればとても助かる」というご意見や、「是非この協議会に参加したい」というご要望もありましたので、積極的に会員拡大をしていきたいと思います。

取得に際しては自分たちだけではなくプロフェッショナルの力を借りてBCPを策定することを決め、ニュートンさんにお願いすることにしました。期待した通り、大きな負担なしに策定を進め、協議会でISO22301については2013年11月27日に、ISO50001については2014年2月22日に地域として日本で初めて取得することができしました。

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京橋1・2丁目地域

―新しいまちづくりの形になりそうですね。


 

那須原: そうですね。今までは建物をつくるときに事業主がそれぞれの計画で行っていましたが、このような協議会の取組みが拡大していくと、「地域に必要な施設を合わせてつくる」という視点が加わります。そのような地域貢献の取組みに対し諸官庁や自治体と連携して、容積率の緩和やその他規制の緩和、優遇措置をしていただけるような仕組みを確立できれば、災害に強いまちづくりの一つの形となるはずです。

当社のビルも、地域貢献の面で中央区と提携して、災害時に帰宅困難者2千人を受け入れることとしています。また、ビル敷地内に地下鉄の出入口の設置、都営駐車場へのエレベーターの設置などをしています。 このような取り組みを、既成市街地のまちづくりを進めるモデルとして確立することで、他地域の既成市街地にも広げていけると考えています。今後も諸官庁や自治体とも連携をとりながら進めていきたいと思います。

―当面建て替えを行わない既存ビルはどのような役割を担うのでしょうか?

那須原: 京橋エリアには大小さまざまな建物があり、ビルの状況によってできることは様々です。例えばあるビルは水を備蓄し、隣りのビルは食糧を持つといった各々のビルあるいは企業で大きな改修などを伴わないでできることを分担していくことが重要だと考えています。個社ですべてを確保するのは大変ですが、お互いに持ち合うことで負担軽減が図れると思います。

再開発によるまちづくりでは、整備された制度・計画のもとに地域貢献を進めることもできますが、既存市街地のビルは、オーナー、入居者の皆さんによる協議会の中で、様々な問題を共有しながら課題を解決し、まちのパフォーマンスを上げていくことが必要だと思います。課題に対する答えを出すのは簡単ではありませんが、その答えを出すための話し合いの場をつくったわけです。

事業継続マネジメントの取組

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演習: 災害対策本部での情報収集

―実施スケジュールの中ではどのあたりまで進んでいますか?

那須原: 協議会を作り、様々な分析を行った結果、BCPについては以下の3つの事業を行うことになりました。

まず、「地域住民に対する緊急生活用水の提供」。発災し、上水の供給がストップした場合には、必要に応じ速やかに生活用水の提供を行うというものです。当社の地下3階に地域熱供給に使用する4千トン程度の水が入った蓄熱槽があります。この水を生活用水として配布します。

2番目に「一時待機施設に対する熱の提供」。帰宅困難者が待機している施設に地域熱供給システムを利用して熱(冷暖房)を送るというものです。

最後に「帰宅困難者及び地域住民を対象とした災害物資などに関する情報提供」。近隣の被災状況や、ここで生活用水を提供していますといったことなどを貼り紙、ツイッタ―などで情報提供します。

上記3つの事業が災害時に機能するか、昨年(2013年)10月に実際に演習を行いました。朝9時に災害が起きたという想定の元、役割を決め、停電、電車の運行停止、インターネット(有線)が使えないといった条件を加味し、作成した計画通りに業務が行えるか確認をしました。この結果、様々な課題が抽出できました。例えば機材が不十分なために、設置したい場所に機材の設置ができなかったり、生活用水は、18リットルのポリタンクに入れて提供する予定でしたが、人力で地下3階から運び上げるのは非常に大変だと分かりました。また、熱の提供を行う際にはバルブの切り替え作業が必要となるのですが、停電時、暗所においてひとりで作業をするのはかなり困難なことだということも分かりました。

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演習: 熱利用切替作業(停電を想定)

抽出された課題に対して、ソフト面では改善を進めていますが、例えば地下からポリタンクの水を運ぶ代わりに地上階に蛇口をつけるというようなハード面の改善は引続き対応策について検討を進めているところです。

―この3事業を中心とするモデルを今後どのように展開させていかれますか?

那須原: まずは協議会のメンバーを増やしていきたいと思います。それにより協議会事業の一層の充実ができると考えます。多くの関係者と一緒になって地域BCPのPDCAを回していこうと考えています。

エネルギーマネジメントの取組

―一方のエネルギーマネジメントはどうやって進めていますか?

那須原: まず、この地域でのエネルギーパフォーマンスを分析したところ、消費エネルギーの69パーセントが電気であることがわかりました。そこで、電気使用量の削減に焦点を当て、東京都の省エネカルテ(17年度)に記されたビルの用途別年間一次エネルギー使用量をベンチマークとして「2020年までに協議会会員が所有または使用する建物の年間一次エネルギー使用量のベンチマーク比30パーセント削減」という将来的な目標を設定し、目標達成に向けてエネルギーマネジメント作業部会というものをつくりました。この作業部会で会員各社のエネルギー使用量の測定分析、エネルギーを多く使用している領域の特定、省エネ活動に関する情報交換などを行いエネルギーマネジメントに取り組んでいます。

―貴社のような超省エネの設備が整ったビルもあれば古いビルもあり、差があると思いますが、どうやって整合性をとるのでしょうか?

那須原: 協議会の設立3社は、当社がビルオーナー、シミズ・ビルライフケアがテナントビルのテナント、東京都市サービスは地域熱供給会社と、それぞれエネルギーに対する立場と考え方が異なります。今後加入していただく会員は、ビルの新旧含め、自分と似た会員、場合によっては異なる会員の保有している知見を協議会の場で情報・意見交換を行うことで、今まで個社では持ちえなかった知見を得て、効果的な省エネルギーができると考えています。

また、少し話が異なりますが、本地域は先述の通り熱供給エリアで、熱供給会社の東京都市サービスは契約している各ビルに冷水と温水を送っており、冷水は一年中7度で送り15度程度で戻ってくるように設定されています。しかし、今回のように事業者側とユーザー側で協議の上、冬場なら10度や12度で供給しても構わないという合議ができるとエネルギー効率を向上させることができ省エネとなります。この仕組みを確立できれば今後、他地域でも同じように展開できる可能性があるわけです。

BCMSとエネマネ両方を考えていく必要がある

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左より、株式会社シミズ・ビルライフケア 横井執行役員、那須原氏、東京都市サービス株式会社 宮田常務執行役員

―協議会に入ったメンバー企業は、エネマネとBCMSの両方をやらなければいけないのでしょうか?

那須原: やらなければいけないというものではありません。ただ、協議会の趣旨に賛同いただき、お互いにできるところから実施していければと思っています。会員間で知恵を出し合い、本地域での平常時の省エネルギーと非常時のBCP向上について検討していきたいと思っています。

かつてBCPでは、エネルギーのことはあまり考慮されていませんでした。ところが、東日本大震災以降、エネルギー面のBCPが必須になってきました。それまでは電気は停電してもすぐ復旧すると思われていましたが、実際は復旧までに3日間あるいは1週間ぐらいかかるかもしれません。そうしたエネルギーのBCPについて、非常時のみに稼働する機器を設置するのではなく、同じ機器で平常時にも省エネに資するものとして使用することができれば大変効率的なものとなります。そういった意味でも両方を考えていくことが必要だと思います。

―大変よくわかりました。今日はどうもありがとうございました。

担当の声

PDCAを短期間で回し、認証取得の在り方を問う

この取組は地域を統べる協議会を立上げ、グループとしてISO22301、ISO50001の認証を取得するという非常にチャレンジングなものでした。認証取得した今後も、真に防災に強いまちづくりやエネルギー効率の良いスマートシティの構築を見すえ、世界の先進モデルとなるべく活動していく取組です。

今回一番難しいと感じたのが、企業ではなく複数企業が集まり連携して認証取得に取り組むという点です。これは世界的に見ても初めての実験的なケースと言ってよいでしょう。

まずポイントとなったのが認証取得支援ということもあり、やはり適用範囲の考え方です。京橋地域の協議会が企業ではなく集合体としてどのような事業・業務を行うかということを立ち上げ時から議論するとともに、BCMSの観点で有事の際にどの事業・業務を継続するかを決定していきました。

具体的には誰のためにBCMSを行うのか明確にするため、利害関係者の整理がまず必要となりました。移動市民、地域住民、入居企業、協議会員…。様々な利害関係者を抽出し、その上で競争力強化につなげるためには、移動市民、地域住民に役立つような業務を行うべきという結論に至りました。対象事業は、移動市民および地域住民に対する有事の際の緊急支援であり、熱・生活用水の提供や情報提供など。ひとことで言えば「地域の初動対応を支援する業務が協議会の事業継続対象業務である」となります。その他にもいろいろと特徴がありましたが、あとはその取り組む姿勢の一言につきるでしょう。

どのようなことをすれば協議会の意義が高まるのか。そんな議論をしていた3か月後にはISO22301認証取得の一次審査を受けています。これだけのスピード感で臨んだのは構築初年度で回すPDCAを1回と限定していないからです。PDCAはなんども回したほうが改善につながる、そんな想いからの構築スピードでした。協議会の立上げ、グループとして連携してのBCMS、EnMS構築とそれぞれの認証取得。これを約10か月でやり遂げた志の高さと真摯な姿勢には本当に感心させられました。

お客様情報

名称 清水建設株式会社
本社所在地 東京都中央区京橋2-16-1
設立 1804年
資本金 743.65億円
従業員数 11,050名
代表者 代表取締役社長 宮本 洋一 氏
事業内容 総合建設業建設業

(2014年4月1日現在)

プロジェクトメンバー

ニュートン・コンサルティング

プリンシパルコンサルタント

内海 良