リスク管理Navi
リスク管理Naviは、リスクマネジメント(Risk Management)に関しての情報サイトです。
日本自動車連盟(JAF)様
お客様 |
経営企画部 経営企画課 課長 渡邊 敬太 様 経営企画部 経営企画課 井上 賢人 様 |
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ニュートン・コンサルティング |
エグゼクティブコンサルタント 坂口 貴紀 |
日本自動車連盟(以下、JAF)様は、ロードサービスや災害発生時の特別支援隊派遣、地域防災訓練への参画など、円滑な交通環境の維持に取り組まれている一般社団法人です。会員向けの優待サービスや、社会課題解決に向けた啓発活動も幅広く展開中。さらに、国内唯一の四輪モータースポーツ統轄団体としてモータースポーツの振興にも取り組まれています。2023年には創立60周年を迎えました。
この度、「ERM構築・運用アドバイザリサービス」をご利用いただいた経緯やご感想について、経営企画部 経営企画課の渡邊 敬太 様、井上 賢人 様にお話をうかがいました。
渡邊:私たちの組織は、自動車ユーザーの皆さまに向けてロードサービスなどの各種サービスを提供しているほか、交通安全の啓発、モータースポーツの振興などにも取り組んでいます。東京の本部含め、各都道府県に支部を有しており、現在2,000万名以上の方にご入会いただいています。
自動車業界やJAFをとりまく環境は時代とともに変化しています。昨今は自動車という文脈だけにとどまらず、移動そのものが持つ価値を高め、社会課題を解決することを目指して事業を展開しています。2025年4月には、「JAFは、安全と安心の支えとなるサービスを提供し、移動価値が高い社会の実現を目指します。」という新たな基本理念を公表しました。この理念は、職員一人ひとりの思いや意見を交換し、ディスカッションを重ねて構築したものです。ボトムアップかつ柔軟な組織風土を醸成しながら、新しいチャレンジを進めているところです。
渡邊:2016年~2020年に、ニュートンさんにアドバイスをいただきながら、本部組織のERMの構築、及び地方組織への展開を完了させました。2021年以降は年間スケジュールに基づき、事業計画や目標達成度の進捗、リスクマネジメントの振り返りを都度実施しつつ、ERMの仕組みの形骸化防止や、世の中の最新トレンドを意識したERMの高度化を目指しています。
井上:ERMの高度化を目指す中で、最近取り組んだ戦略リスクマネジメントの設計・導入は重要なテーマでした。これは、「近年社内外の環境が急速に変化する中で、『事業戦略の意思決定そのもの』に不足はないだろうか?」という問題提起から始まっています。例えば「機会の獲得や目標達成のために、本来は積極的に挑戦しなければならないことが戦略から漏れている」など、戦略を立てる過程の中にリスクが潜んでいる可能性もある…ということです。そこで、私たちは戦略リスクを従来の「事業戦略の失敗」に加えて、「戦略的意思決定の不足」を含めて再定義し、既存の仕組みで拾い切れていなかった、より戦略的な視点に基づく戦略リスクアセスメントに取り組むことにしました。
井上:今回の戦略リスクアセスメントでは、事業戦略における意思決定の漏れ・不足を防ぐべく、その土台づくりをニュートンさんにサポートいただきました。
2022年、コンサルタントの坂口さんを講師に迎えて、本部のマネージャー職を対象に「戦略リスク及び機会の特定」に焦点を当てた研修を実施しました。この研修ではまず、JAFが掲げる基本理念・運営指針・行動指針や事業計画、部門計画等の経営目的・戦略に係る情報を整理。また、短期・中期・長期・超長期の内部環境変化の予測、想定される外部環境変化(PESTEL)などをインプットしました。そのうえで、短期~長期目線での「機会」と「リスク」を各自で考え、その結果をとりまとめました。こうした講義やワークを通して、戦略策定上考慮すべきリスクや、掴むべき機会を考える手法をレクチャーしていただきました。
2023年には、会長・専務を含めた役員陣へヒアリングし、今後の事業戦略を立てるうえでどのような部分を重要ととらえているのかを聞きました。その結果を整理・分析し、優先順位をつけました。2024年以降はそれらをもとに2025年~2035年の10年間を見据えた長期的な事業計画を作成しています。
井上:2022年の研修では、戦略リスクの基本的な考え方を学ぶことができました。そのうえで臨んだ経営層へのヒアリングは、事業戦略に関して抱えている課題をあらためて言語化してもらう良い機会になったと思います。例として、経営層らは人口減少が進んでいることをふまえ、「人的資本戦略をもっと打ち出していかなければ」と強く感じていることが明らかになり、その後の事業戦略づくりに反映することができています。
井上:継続的にERMに取り組んできた結果、「リスクを発見し、評価して、対応策を考えて実行し、振り返る」という一連のサイクルが着実に定着しています。この仕組みが形骸化しないように気を付けつつ、正しい危機意識をもってチャレンジを続けられるようにしていきたいですね。
また、今感じているのは、「戦略リスクに対応できたかどうか」を後で計測・評価するのは非常に難しいということです。この点については引き続き、坂口さんにアドバイスをいただきながら進めていきます。
渡邊:トップである会長がよく、「想定外の事態が起きた場合に、いかに素早く対処していくかが重要」と言っているのですが、その通りだと思います。想定外の出来事が発生したとしても、これまでに身に着けてきたERMや戦略リスクアセスメントの考え方を生かして、適切に連携し対応できる風通しのよい組織でありたいです。
渡邊:やはりニュートンさんは、デジタル分野を含め、リスクマネジメントに関する最新の知見を幅広く持っていて心強いですね。坂口さんには長年の支援の中で地方の支部にも一緒に回っていただいていますし、組織風土を熟知したうえでアドバイスをしてくれるので、大きな信頼を置いています。
井上:内部だけでERMやBCPに取り組むと、どうしても形式的な体制に陥ってしまうと思うんです。その点、リスクマネジメントのプロとして第三者の目線から「今のJAFには、こういったことがリスクなのでは」とアラートを出してもらえるため、助かります。今後もよろしくお願いします。
※インタビュー内容および所属先は取材当時のものです。
名称 | 一般社団法人日本自動車連盟 |
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所在地 | 東京都港区芝大門1-1-30 日本自動車会館 |
創立 | 1963年4月1日 |
事業内容 | ロードサービスなど |
利用サービス | ERM構築・運用アドバイザリサービス |
エグゼクティブコンサルタント
坂口 貴紀
内発的な問いから始まった、攻めのERM改革
JAF事務局様は、「本当に役に立つERMとは何か」を常に追求されていました。既存の仕組みに安住せず、リスクの本質と真摯に向き合い続けた結果、“『事業戦略の意思決定そのもの』に不足はないだろうか?”という根源的な問いに至ったのだと確信しています。特に、内発的にこの問いにたどり着かれたことが大変重要だと感じています。
JAF様のように、組織内からこの野心的な問いが生まれ、積極的に対応できるケースは、実はそう多くありません。多くの組織では、“経営者がリスクに精通していない(あるいは事務局がそう思い込んでいる)”、“組織全体にリスク管理の基本が備わっていない”、“戦略とリスク管理の仕組みが分断している”といった課題が、その進展を阻んでいます。
JAF様では、年2回のリスク管理委員会で必ずトップである会長から本質的なメッセージが発信されます。2016年から約9年にわたるリスク管理PDCAサイクルの継続と改善により、組織のリーダーにリスク管理の思考プロセスと基本行動が浸透しています。そして、経営企画部が戦略とリスクを横断的に見ることで、攻めと守り両面の視点から的確に課題を発見し、最適なアクションをとられています。
自組織のERMはどうあるべきか、どう経営に貢献すべきか。JAF様の成功要因はこの本質的な問いに向き合いつづける姿勢にあります。JAFのERM運営当事者のみなさまと、永続的な発展を見据えて引き続き伴走させていただけること、それが私たちの何よりの喜びです。