WOWOW 様

自社独自のリスクマネジメントを客観的に評価
改善案を元に「守り」と「攻め」のERMへ

WOWOW様は日本初の民間衛星放送局として創業され、BS(放送衛星)により有料でテレビ放送を行うほか、ケーブルテレビ、CS(通信衛星)放送、IPTVでもサービスを提供されてきました。また、放送事業にとどまらず、自社映画レーベルによる映画事業や、音楽・ステージなどのイベントを開催するイベントビジネス事業など、幅広いエンターテインメント・ビジネスを展開されています。

 

この度、組織のリスクマネジメント力・危機管理力評価サービスをご利用いただいた経緯と成果について、総合計画局 総合計画部 和田 裕司 様と市嶋 健太郎 様にお話をうかがいました。

 

―貴社の事業内容をお聞かせください。

総合計画局 総合計画部
市嶋 健太郎 様

市嶋:当社は、1984年に日本初の有料放送を行う民間衛星放送局として開局しました。スポーツや国内外の新作映画、音楽ライブなど世界のトップエンターテインメントコンテンツをお届けしており、現在では約272万件のお客様にご加入いただいています。

2021年からは配信サービス「WOWOWオンデマンド」を立ち上げ、配信経由でもご加入いただける形で幅広くサービス展開しています。

また、2003年からはWOWOWが独自に制作している「ドラマW」「連続ドラマW」といったテレビドラマの放送も開始しており、これらのオリジナルコンテンツにも引き続き力を入れているところです。

より効果的・効率的なERMを構築したい

―これまでのリスクマネジメントの取り組みについてお聞かせください。

市嶋:当社がリスクマネジメント活動をスタートしたのは、2008年のことです。その後、2009年の新型インフルエンザの流行や2011年の東日本大震災を経験し、災害等を想定したBCP活動にも取り組むようになりました。これを機に、別々に活動していたコンプライアンス委員会とリスクマネジメント委員会を統合し、現在のリスク管理・コンプライアンス委員会を運営しています。

これらの活動に加え、近年、力を入れているのが情報セキュリティです。当社では多くの個人情報を扱っているほか、権利者および制作者の方々のご信頼のもとに番組を制作し、多数の番組情報資産を保有しています。これらを適切に管理するため、セキュリティ対策は重要だと考えています。

 

―ERM構築に取り組むことになった経緯についてお聞かせください。

総合計画局 総合計画部
和田 裕司 様

和田:私は今から2年ほど前に総合計画部に異動となり、リスク管理・コンプライアンス委員会に加わったのですが、その時に感じたのは「もったいないな」ということでした。各部署が真面目にリスクマネジメントに取り組んでいるものの、少々形骸化している印象があり、より効果的・効率的なやり方があるのではないかと感じたのです。

ちょうど「ISO31000:2018」が公開されたこともあり、その内容を踏まえて活動の見直しをしたいと考え始めていた時に、人事異動で委員会のメンバーが多数入れ替わり、市嶋さんも加わることになりました。そこで、新メンバーで活動するにあたり、委員会内部の活動のやり方をがらっと変えてみたのです。さらに、「もう少し改善の余地があるだろう」と感じたのですが、ここから先の取り組みは社内のみの知見では難しいと考え、外部パートナーのお力添えをいただくことにしました。

 

―ニュートン・コンサルティングをご利用いただいた理由は何でしたか。

市嶋:ニュートンさんを知ったきっかけは、リスクマネジメント関連のネット記事で勝俣さんについての記事を読んだことでした。記事では勝俣さんのコンサルティング事例が紹介されていて、「なるほど、リスクマネジメントはこういうふうにやっていくものなのか」という驚きがありました。

それで、今回パートナーを探すにあたり、お声掛けをさせていただいたのです。お話をうかがったところ当社に適したコンサルティングをしていただけそうだと感じ、ご依頼することに決めました。

和田:ニュートンさんとはこれまでお付き合いがなく、しっかりとした客観的な評価をいただけそうだということも決め手でしたね。もともと当社とお付き合いがあったり、社内の事情をよく知っていたりすると、フラットな目線で見ていただけない可能性があるのではないか、と考えたのです。今回、当社としては外部からの客観的かつフラットな意見を求めていたので、その点でもニュートンさんが適任と感じました。

目指すのは、成長戦略に資するリスクマネジメント

―プロジェクトの概要を教えてください。

市嶋:今回のプロジェクトは、2021年2月から8月まで、経営戦略を行う局内にあるリスク管理部門が事務局となった半年間のプロジェクトです。プロジェクトの目的は、現行のリスクマネジメントをWOWOWに本当に必要なものに改善するための計画を立てることでした。具体的には、独学で行ってきたERMを外部専門家の目で評価し課題を明らかにすることと、課題解決の優先順位・方法を決めることの2点です。

まずは、社長や監査役を含むトップマネジメントへのインタビューを実施し、会社の目指す方向性やリスクマネジメントに期待する姿を言語化しました。これを踏まえ、ERM評価フェーズと、ERM改善フェーズの2つのフェーズで進めました。

ERM評価フェーズでは、3か月をかけてリスクマネジメント関係者へのインタビューと、文書類や各種証跡の精査を実施していただきました。その結果をもとにリスクマネジメント力評価報告書を作成いただき、最終的に実務の責任者及び経営陣に提示して今後改善すべき課題を合意しました。

次にERM改善フェーズでは、評価報告書における優先度の高い課題解決案に基づき、どのように実現するかを議論しながら、ERMのビジョンや将来の体制図等の作成を3か月かけて進めました。結果として、ERM改善の必要性とその方向性をエビデンスをもって経営に伝え、よりWOWOWにふさわしいERMに方向転換することを決めました。すでに、新ERM体制や、BCMとの連携、インシデント管理、管理職への教育研修など具体的なテーマの改善を順次進めているところです。

 

―今回のプロジェクトの成果はいかがでしたか。

和田:今回、リスクマネジメント力評価報告書の中で、現状のリスクマネジメントの良いところや足りないところをご指摘いただけました。客観的な現状把握は社内では難しいところでしたが、報告書によってこれまで漠然と感じていた課題が明確になり、可視化できたのは大きな一歩になったと感じています。

また、今後の計画についても、有意義な示唆をいただけました。これらは、私達が社内で頭をひねって考えるだけでは思いつかなかったでしょう。

現状を把握できたことと、未来への示唆をいただけたこと。大きく分けてこの2つが、今回の成果と感じています。

市嶋:とても勉強になった、というのが一番の感想ですね。社内であれこれディスカッションしていても、導き出した結論が本当に正しいかどうかは分かりません。今回のプロジェクトでは、私達が考えて提示したアウトプットに対して色々とご意見をいただき、他社事例や業界のトレンドなども踏まえた助言をいただけたので、本当に勉強になりました。

勝俣さんの言葉で特に心に響いたのが、「リスクマネジメントはビジネススキルだ」というものです。私は経営戦略を担う部門に所属し、中期経営計画の策定や戦略管理に携わっているのですが、それらの業務においても「どこにリスクがあるか」といった話を意識的にするようになってきました。自分としても、“ビジネススキルとしてのリスクマネジメント”が身に付いてきたことを実感しています。

和田:中期経営計画のお話が出ましたが、当社では2025年度までの中期経営計画を策定しており、「映像メディア業」から「コンテンツ・コミュニティ業」への変革を目指しつつ、事業領域を拡大していく考えです。これまで以上に様々な挑戦をしていく中では、足元に潜むリスクを特定し、適切に管理するリスクマネジメントがいっそう重要になってくるでしょう。

新しい挑戦をするにあたり、「障害物があるから」という理由で毎回進むことをやめてしまっては、どこにも足を踏み出すことはできません。大切なのは、「どこにどのような障害物があるのか」を正しく認識し、乗り越えて進むべきか、退却すべきか、適切な判断を下せるようになることです。

ERMというと「企業価値維持(守り)」中心の活動になりがちですが、当社としては、そこに「企業価値向上(攻め)」という視点を取り入れたいと考えていました。こうした考えに基づき、リスクマネジメントを積極的に企業の成長戦略に活かしていくための改善の道筋を立てられたのも、今回の成果の一つといえるでしょう。

臨機応変なアドバイスで、最適なサイズ感のERMを目指す

―今回のプロジェクトで苦労されたことはありますか。

和田:今回のプロジェクトでは、二週間に一回くらいのペースでニュートンさんから宿題をいただき、こちらでそれに取り組み、結果をみていただく、という流れで進行していただきました。全体的にやりやすく、苦労は特になかったですね。強いていえば、ほかの業務も忙しく、プロジェクトのための時間を作るのが難しかったことくらいでしょうか。

 

―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか。

市嶋:一番ありがたかったのは、私達の要望をしっかり理解してくださり、ちょうどいい規模感のリスクマネジメントをご提案いただけたことですね。当社は、規模的にはあまり大きな会社ではなく、社員数も多くありません。そのため、今回のERM改善にあたっては、しっかりとした見直しをしながらも、かかる時間や労力が過剰なものにならないようにしたい、と考えていました。

そのような意向を踏まえて、いわゆる世間一般のリスクマネジメント改善手法を提示するのではなく、当社にあったサイズ感と内容のご提案をいただけたのがとても良かったと思います。

和田:私達のやりたいことや進め方、レベルに合わせて、臨機応変な対応をしていただけたこともありがたかったです。例えば、ニュートンさんが何か宿題や提案をくださっても、こちらがスムーズに対応できずにいると、作戦を変えて別のやり方をご提案くださったり。状況に応じて柔軟な対応をしてくださったのが印象的でした。

 

―今後の取り組みについて教えてください。

市嶋:現在、ERM改善に取り組んでいる最中ではありますが、先日、当社の内部監査から、BCPについての改善指示がありました。「コロナ禍においてテレワークが普及する中、大災害が起きた場合の対応はどうするのか」など、リアルなBCPの見直しが喫緊の課題となっているため、その辺りを優先的に進めていく予定です。

併せて、当社にとっての最悪の事態はほかにどのようなことがあるかを改めて見直し、今後のリスクマネジメント活動に活かせるようにまとめたいと考えています。今年の下半期中にとりまとめを行い、2022年度からは新しいERMをスタートできればと思っています。

 

―本日は誠にありがとうございました。

担当の声

アソシエイトシニアコンサルタント  藤岡 誠

丁寧なコミュニケーションを徹底し、ERM改善を強力に推進

WOWOW様について私の一番の印象は、本質的な議論をすることをためらわない姿勢でした。WOWOW様では、ERMを形式的で経営の重荷になるものではなく、より筋肉質で実質的なものに変えるため、プロジェクト全体を通して社内・コンサルタントと双方向のコミュニケーションを徹底されています。

そんな当プロジェクトにおいて、弊社の役割は、精力的に会社を動かす事務局の後押しをすることでした。事務局が自信をもってERMを改善し続けられるよう、プロジェクトマネージャーと事務局が密に連携して、柔軟に関係者を巻き込んだプロジェクト運営を行いました。

例えば、経営の本音を明らかにするためにトップマネジメント6名にインタビューを行ったほか、WOWOW様のERMの本当の姿を描き出すため、調査票だけでなく関係者へのインタビューをしたり、関係者に刺さる報告書を作るため、課題と改善策を何度もやり取りしたりしました。評価の報告会前にも中間報告会を開き、「課題の強調点を変更してほしい」という要望を受け、対応優先度やWOWOW様の状況にあった書き方に記載を修正しました。これによって、重要な論点について関係者に危機感を感じさせつつ、より納得感ある伝え方で関係者を動かす、という課題解決ができました。さらに、最終的な課題への対応方針の検討にあたっては、事務局とコンサルタントで電話・チャットツール・その他の手段でのコミュニケ―ションを通して喧々諤々の議論を続け、分からないことを一つ一つ解決し、明確なERMのビジョンと具体策を練りました。

結果的に、半年のプロジェクトで、WOWOW様の社内では関係者が動き始め、トップマネジメントの考える、あるべきERMの姿に生まれ変わる道筋を立て、それが実装されつつあります。それは変革期にあられるWOWOW様が、上下・社内外を問わず、組織を変えるために必要な議論や質問をためらわず、関係者を納得させながらあるべき姿に変えてゆく丁寧なコミュニケーションを徹底されていたからだと思います。ERMの改善を効果的・効率的に進めるにあたり、WOWOW様のような姿勢が必要不可欠であることを学ばせていただきました。

お客様情報

名称 株式会社WOWOW
所在地 東京都港区赤坂5-2-20 赤坂パークビル21F
設立 1984年12月25日
事業内容 放送衛星による一般放送事業(有料放送を含む)

(2021年10月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

総合計画局 総合計画部

和田 裕司 様

総合計画局 総合計画部

市嶋 健太郎 様

ニュートン・コンサルティング

取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント

勝俣 良介

アソシエイトシニアコンサルタント

藤岡 誠

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