キャパシティ管理
掲載:2010年10月10日
執筆者:執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント 内海 良
用語集
キャパシティ管理とは、ビジネスが必要とするキャパシティを予測・監視し、最適なコストで改善に結びつけるプロセスです。キャパシティというとハードディスクやメモリなどの「容量」という言葉を思い浮かべる方が多いと思いますが、ITILのキャパシティ管理ではリソースとパフォーマンスという言葉に置き換えるとより理解しやすくなるかと思います。
目次
ビジネス需要と技術をつなぐ3つのサブプロセス
キャパシティ管理は非常に技術的な内容を含むプロセスですが、常にビジネス需要に対して過不足のない最適なキャパシティを提供することを主眼に置いています。この“ビジネス需要”を最適なキャパシティの提供という“技術”に落とし込むために3段階のサブプロセスが定義されています。
1. 事業キャパシティ管理
計画・導入に関わる部分であり、ITサービスが将来必要とするリソースとパフォーマンスを予測し、必要となるキャパシティを計画、実装するプロセス。
2. サービス・キャパシティ管理
運用中のパフォーマンスを常に監視し、SLAなどの目標値を達成するよう改善していくプロセス
3. コンポーネント・キャパシティ管理
個別のコンポーネント(ハードディスクやメモリ、CPU等)の利用率の傾向やパフォーマンスを監視し、リソース不足などの問題を未然に防止するプロセス。
1. 事業キャパシティ管理
計画・導入に関わる部分であり、ITサービスが将来必要とするリソースとパフォーマンスを予測し、必要となるキャパシティを計画、実装するプロセス。
2. サービス・キャパシティ管理
運用中のパフォーマンスを常に監視し、SLAなどの目標値を達成するよう改善していくプロセス
3. コンポーネント・キャパシティ管理
個別のコンポーネント(ハードディスクやメモリ、CPU等)の利用率の傾向やパフォーマンスを監視し、リソース不足などの問題を未然に防止するプロセス。
具体的な測定項目と推奨しきい値
事業キャパシティ、サービス・キャパシティと違い、コンポーネント・キャパシティの監視項目は常に明確です。以下は一般的な測定項目例です。 どの事業分野の企業でもほぼ同様の測定項目を用いていると考えてよいでしょう。
- CPU使用率
- メモリ使用率トランザクション・タイプごとのプロセッサ比率
- IOレートとデバイス使用率
- 待ち行列の長さ
- ディスク使用率
- トランザクションレート
- 応答時間
- バッチ処理時間
- データベースの利用
- インデックスの利用ヒット率
- 同時ユーザ数
- ネットワークトラフィック量
プロセスを支える4つの活動
ストレージ容量、CPU使用率、応答時間などのデータを常時収集し、監視する活動。現在の利用状況が最適なものなのか、増強が必要なのか、もしくは緊急対策を要するものなのか判断する材料を集める活動。
分析
監視により収集したデータを分析し、新たなサービスレベルやしきい値を設定につなげる活動。将来必要となるキャパシティを予測し、リソースの増強の検討や実装時期もここで検討します。
チューニング
分析した監視データをもとにリソースの増強や設定変更などパフォーマンスを改善する活動。ストレージの増設やCPUの割り当ての変更など具体的な対応策を検討します。
実装
監視、分析、チューニングによって検討された対応策を実装する活動。変更管理、リリース管理と連携して実装することになります。実装後は引き続き監視を継続してさらなる改善へつなげていきます。
余裕のあるシステム設計が招く負の傾向
システム設計時にはストレージやメモリが以前と比べ安価になってきたこともあり、過剰に余裕のある設計を実施する企業が多々見受けられます。これはシステムが安定稼働することを考えれば間違ったことではありませんが、無駄な費用が発生することに加え、キャパシティに関する無関心を招く恐れがあります。ファイルサーバに無制限に不要なファイルを保管し続けるといったこともその一例でしょう。
幸いキャパシティ管理は前述したように非常に技術的なプロセスなので、監視ツールやクオータ設定(*1)を利用して自動化することが可能です。極力負荷を軽減するためにツールの有効利用をお勧めします。
幸いキャパシティ管理は前述したように非常に技術的なプロセスなので、監視ツールやクオータ設定(*1)を利用して自動化することが可能です。極力負荷を軽減するためにツールの有効利用をお勧めします。
*1 各ユーザに対し使用可能なサイズの上限を設定する機能
キャパシティ管理の有効性を図る指標となるKPI
キャパシティ管理が有効に機能しているかどうか、活動が成功したかどうか、などを具体的かつ客観的に測る指標が、「KPI:重要業績評価指標)」です。以下のような項目を評価することによってキャパシティ管理プロセスのサービスへの貢献度合いを確認でき、改善につなげることができます。
- パフォーマンスが低いことに起因するインシデントの回数
- 不十分なキャパシティに起因するインシデントの回数
- パフォーマンスが低いことに起因するSLA違反の回数
- キャパシティに起因する緊急課題の回数と予測外の追加リソース購入の回数
- 個別に設定したコンポーネントのしきい値の違反回数
様々な規格に登場する「キャパシティ管理」
キャパシティ管理は、「ITガバナンス」、「IT運用管理」のいずれにおいても中核を担うコントロールになります。
以下に、代表的な構成管理の位置づけについて挙げておきます。
ISO/IEC ISO27001-1:2005 | 6.5 キャパシティ管理 |
---|---|
ITIL Ver3 | サービスデザインの主要プロセスの1つとして言及 |
COBIT4.1 | Delivery and Support 3.パフォーマンスとキャパシティ |