インフィニ トラベル インフォメーション様

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株式会社インフィニ トラベル インフォメーションは、国際航空券の予約・発券を潤滑に機能させる“空のインフラ”を支える会社です。年間1,800万人を超える海外渡航者に航空券に用意することで、日本の航空・旅行産業の発展を支えています。今回取り組んだBCP策定プロジェクトについて、常務取締役の栗崎信寛様と事務局の経営推進部第1グループリーダー、山口修一様にお話を伺いました。

 
 

BCPを策定するきっかけとなった3.11の体験

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常務取締役 栗崎 信寛 様

―貴社の事業内容を教えてください。

栗崎: 当社はGDS(Global Distribution System、航空会社と旅行会社をつなぎ、航空券等の予約・発券を行うネットワークシステム)を中心とした事業展開を行っています。各航空会社で座席管理を行っているコンピュータをネットワークでつないでいます。例えば、国際線の乗り継ぎで別々の航空会社を使うような場合に、旅行会社がGDSにアクセスするだけで、すべての航空券を予約できるという仕組みです。


 

このシステムは、アメリカン航空が作ったSabre(セーバー)という会社が最初に始めました。各航空会社がお互いをネットワーク化したときに、別会社を作ってコンピュータを設置し、そこに各社のコンピュータをつなぐ方がスムーズにいくという発想から、新しいビジネスが生まれたのです。

ANA(全日本空輸株式会社)が国際線の運航を始めたときは、独自にコンピュータを運用して航空券を販売していました。しかし、それでは限界があったため、1990年に当社を設立してGDSを開始し、販売網を広げました。現在では当社のGDSは国内シェアの約40%を占めています。

当社のホストコンピュータは、オクラホマ州タルサにあるSabre社のサーバを利用しており、そこから日本まで回線を延ばして、国内に設置したサーバに接続しています。本社のカスタマーサポート部では朝から夕方までご相談を受け付けています。我々の会社はBtoBなので、お電話をいただくのは主に旅行会社の方です。航空会社からかかってくることもありますが、一般の旅行客からの電話はまったくありません。現在、組織の中で最も大きいのがヘルプデスクを運営するカスタマーサポート部です。

―今回、BCPを策定されたきっかけを教えてください。

栗崎: 3.11の経験がBCPを策定する大きな要因になりました。社内のサーバが故障して止まると、お客様にご迷惑をかけることになってしまいます。このため、災害が起こっても機械を止めずに運営を継続できる方法を考えていたのですが、そのような時期に東日本大震災が起こりました。

地震発生後、コンピュータが止まることはありませんでしたが、出勤できる人員の確保が問題になりました。我々には旅行会社・航空会社というお客様がいるので、一方的に休業することはできません。飛行機も仙台空港に発着するもの以外は運航していました。地震が起こった金曜日の晩は帰宅できない従業員もいましたが、週末の人員は確保できました。しかし、翌週になってから電車が止まったので、1週間にわたり、ホテルを10部屋程度確保しました。その時期の運用が最も大変でした。

その後、データのバックアップの状況を確認したり、首都直下地震が起こった場合のサーバへの影響を確認したりといった危機管理に関する議論が盛んになり、BCPの策定につながりました。

―当社にお声がけいただいた経緯を教えてください。

山口: 貴社がドキュメントよりも実践や訓練を重視していること、5回のステップで完成するところなどを評価しました。短期間で策定できるうえに、有事に各自が意味のある行動をとれるようになる、実践的なレベルのBCPが完成するだろうという期待がありました。

訓練に緊迫感をもって臨む

―プロジェクトチームはどういった編成で組まれたのでしょうか。

栗崎: 各部の管理職レベルの者で構成し、すぐに意思決定できる者を1名から2名募り、委員会を編成しました。

―今回、策定されたBCPについて教えてください。

栗崎: 最初に守るのは、人です。人員に関しては、今回の取り組みで最低限必要な人数がわかったので、有事の際は、その人数を確保するためにホテルの予約や備蓄品の用意などの対応を考えています。また、緊急連絡網はあるのですが、更新されていなかったり、訓練を行っていなかったりしたので、2013年9月にリニューアルし、安否確認の訓練を1回行いました。

二つ目は、お客様に対する窓口を閉めないことです。旅行会社への窓口となるカスタマーサポートと営業部、それに航空会社への窓口となるマーケティング部の3部門は、必ず業務を継続することにしています。

その次がシステムの保守になります。ほとんどのシステムはデータセンターにあるため、運用は外部の委託先に任せていますが、緊急時には連絡が取れる体制になっています。また、それ以外に社内で使用しているサーバが数台あります。これは耐震対策としてアンカーを打って固定し、ひと通りの対策は実施できています。

栗崎: 当社の業務上、平時から社員は障害への対応ということを意識しています。委託している管理会社では24時間体制でサーバの障害に対応できるようスタンバイしていますし、まれに夜中でも社員に電話がかかってくることや、Sabre社に問合せを行うこともしばしばあります。障害が起きた際には1時間以内に復旧しますということをお客様にコミットしていますので、すぐに対応をしなければならないという空気がもともと社内的にあるのです。そういった空気がないと平和ボケしてしまうのではないかと思うぐらいですね。今回のBCPの取り組みは、そうした平時の意識とはまた別の、会社としての取り組みになります。なお、サーバについては、首都直下地震に備えて、現在のデータセンターとは別に、遠隔地のサーバとの二重化なども検討しています。

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経営推進部第1グループリーダー 山口 修一 様

―事務局として苦労された点は?

山口: やはり5回のステップの時間を確保するのが大変でした。初めは出席者全員で内容を固めていこうとしていましたが、なかなかリズムがつかめず、時間もかかりました。その後事務局で概要を決めて委員会で承認を得るという形式に変更したところ、長時間をかけずに議論を進めることができるようになりました。軌道に乗せるまでは出席者の意識もばらばらで苦労しました。

―策定を終えて、どんなご感想をお持ちですか?

栗崎: 印象的なのは、委員会に参加した社員が非常に真剣だったことです。避難訓練等では仕事の邪魔のように感じる者もいましたが、Step5のシミュレーション演習では緊迫感をもって臨んでいました。委員会のメンバーは各部署から参加しているので、彼らが部会やグループ会で今回の活動内容を共有することによって、社内に浸透していくことを期待しています。

山口: 一般従業員にはまださほど広まっていない印象はありますが、安否確認訓練をしたり、携帯BCPを配ったりしたことによって、会社としてBCPを強く意識していることは伝わっていると思います。

―当社のコンサルタンティングはいかがでしたか?

山口: 私はBCPについての知識があまりないままに参加したのですが、わからない部分も丁寧に教えていただけてよかったです。

eラーニングで全員参加をめざす

―今後はどのような展開を考えていますか?

山口: 社内への浸透のために、現在、eラーニングの活用を検討しています。この方法なら全員が無理なく、いつでも学習でき、繰り返し復習を行えます。シミュレーション訓練は2014年の下期からの実施を検討しています。各部署から数人ずつ募って、定期的に実施していく予定です。また、備蓄品の整備や初動対応部隊の構築なども始まっています。

栗崎: 首都直下地震が起こってホストコンピュータやサーバが破壊されれば、事業が継続できなくなります。ですから、大阪や札幌などの地方にサーバルームを設置し、現在のサーバと二重化していこうと考えています。

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担当の声

BCMは「策定がゴールではなく、その後の運用こそ重要」と改めて認識

今回のプロジェクトにおいては、日常業務に忙しい各部管理職レベルの方に集まっていただくため、「ミーティングの開催は月1回のペースで、しかもできるだけ時間は短く」という条件をスタート時にいただきました。こうして、いかに効率よくご支援をしていくかということが私たちのテーマのひとつになりました。

事務局の山口様のお話にあるとおり、スタートした時点ではなかなかしっくりとしない状態でしたが、プロジェクト開催前の事務局様との打合せである程度のたたき台をまとめておき、プロジェクトミーティングでそれを討議いただくという手法で解決していきました。

通常、5ステップでのBCP構築支援では3.5日(約25時間)のミーティングを実施しますが、当プロジェクトでは約18時間(通常の70%程度)で、緊急時対応計画(ERP)、危機管理計画(CMP)、事業継続計画(BCP)をまとめ上げ、訓練も実施することができました。

インフィニ トラベル インフォメーション様では、2013年11月のプロジェクト終了後も、12月に役員会でBCP全体を承認、翌年1月からは、全社員に向けた教育(e-ラーニング)の準備と実施、備蓄品の購入、安否確認の見直し、ITシステムの二重化の検討等、プロジェクトでまとめた施策実行計画を着々と進められています。策定プロセスや文書化には極力手間をかけず、まず作って、それからPDCAのサイクルを回すことに力を注ぐというBCMの理想形を実際に進めていらっしゃると感じます。

今後も、維持・継続活動こそBCMの基本ということを肝に銘じつつ、訓練や教育のご支援をさせていただきたいと思います。

お客様情報

名称 株式会社インフィニ トラベル インフォメーション
本社所在地 東京都港区赤坂4-2-6
設立 1990年6月20日
資本金 40億円
従業員数 141名
代表者 代表取締役社長 藤木 悟 氏
事業内容 日本国内の旅行市場でのGDSサービスの提供、国際線GDSにかかわる情報提供サービス

(2014年1月末日現在)

プロジェクトメンバー

お客様

常務取締役

栗崎 信寛 氏

経営推進部 副部長

森川 正治 氏

経営推進部 第1グループリーダー

山口 修一 氏

経営推進部 第2グループ主査

田中 照郎 氏

ITソリューション部 部長

長谷川 徹 氏

ITソリューション部 第3グループリーダー

柿沼 隆幸 氏

ITソリューション部 第3グループ専任マネージャー

鶴貝 崇秀 氏

カスタマーサポート部 第3グループリーダー

清野 達也 氏

マーケティング部 第1グループリーダー

由上 昌弘 氏

営業部 第2グループリーダー

久島 靖広 氏

企画部 第2グループ主査

向井 孝一 氏

ニュートン・コンサルティング

シニアコンサルタント

辻井 伸夫

コンサルタント

南 明日香