大江戸温泉物語グループ様

成長と安全・安心を実現できる
リスクマネジメントを目指して

大江戸温泉物語グループ株式会社様(インタビューを実施した2017年5月時点は大江戸温泉物語株式会社様)は、日本初の温泉テーマパーク「お台場大江戸温泉物語」を2003年、東京お台場に開業しました。以来、旅館、ホテル、温浴施設、テーマパークなど34施設を日本全国に展開しています。この度、更なる事業拡大を見据えて、全社最適を目指した本格的な全社的リスクマネジメント(ERM)の体制・プロセス整備に着手されました。弊社ERM構築支援サービスのご利用に際し、経営管理本部 総務部長 荒川公男様、総務部 課長 前田規夫様にお話を伺いました。

成長スピードに管理体制が追い付けていなかった

―今回のプロジェクトのきっかけをお教え下さい。

荒川:ひとことで言えば、激しい成長痛を感じ始めたことがきっかけです。弊社は2001年に創業し、2003年に現在の「東京お台場・大江戸温泉物語」を開業いたしました。今では日本最大級の温泉旅館・ホテルチェーン企業にまで急成長しています。新鮮な魅力を備えた人気テーマパークとして注目を集め、開業以来約15年という比較的短い期間で34もの温泉旅館・ホテル・日帰り温浴施設・テーマパークを展開するに至りました。全国的にも有名な温泉地の「温泉宿再生事業」を数多く手掛けてきましたが、弊社が、真摯に取り組み、創造した新たな付加価値、言わば大江戸温泉物語グループブランドを、お客様に認めていただけた結果だと考えています。

一方で、このように必死に創り上げてきたブランドが、この業界では油断をすればあっという間に崩れ去るものであることも、理解しているつもりです。急成長を遂げる中、類似の事故やインシデントが散見されるようになり、リスクマネジメントに課題があることを感じ始めていました。
 

経営管理本部 総務部長 荒川公男 様

―具体的にはどのような状況に課題を感じていましたか?

荒川:申しあげたとおり、大江戸温泉物語グループには、温泉旅館のほか、日帰り温泉の温浴施設、テーマパークなどがございます。これまで、各施設では重要インシデントが発生する都度、本社関係部署と連携をとって迅速な対応や改善活動を行う一方、所在場所は違っていても、同じ運営形態の施設から類似事故やヒヤリハットの報告があがってくることも少なからずありました。重要インシデント発生時こそ迅速な対応と改善が図られるものの、時間が経つにつれその必要性や目的についての記憶がだんだんと薄れていきます。つまり、現場に再発防止策がなかなか定着しなかったのです。

加えて、重要インシデントの発生から顛末、再発防止策まで、すべての施設に情報共有されてはいるものの、その改善策は当該施設の問題との意識からか企業全体に波及せず十分なものではありませんでした。本社側から注意勧告を発信しても、対岸の火事のように感じていたのかもしれません。また、他社から施設を取得する際、できる限り従来からの従業員の雇用を継続してきたという現実も、施設運営に関する細かなルールや、管理体制などの標準化がなかなか進んでこなかった一つの要因かもしれません。

事業の特性上、お客様は老若男女問わず幅広い層がいらっしゃいますし、そこで働くスタッフも多様な年齢層とバックグラウンドを持っています。一つの老舗温泉宿の施設として培ってきたカラーや伝統を損なわず、大江戸温泉物語グループとして品質を担保する仕組みが必要なことは明らかでした。
 

恰好良いフレームワークではなく、「大江戸温泉物語グループ」の仕組みを求めて

―弊社をお選び頂いた理由についてお聞かせください

荒川:全社的リスクマネジメントをすすめるにあたり、総務の我々二人がメインの担当となりました。但し、総務部として他の多くの業務と同時に進めていかなければなりません。また、二人で一から勉強したとしても、視野が狭くなり対策が網羅的にならず、結果として事故も減らない、というような悪循環に陥る懸念もありました。であれば、多少費用がかかっても、はじめから外部専門家の知見を入れようと考えたのです。

前田:実際、ニュートンさんを含めて多数のコンサルティング会社からお話を聞きました。

各社からご提案をいただく中、選定の条件としてあげたポイントの一つは、必ずしも成熟した組織ではないという当社の実情と企業風土を踏まえていただけることでした。そのように依頼したにも関わらず、グローバル展開している企業に向けた、海外のリスク管理のフレームワークを穴埋めしていくような方法論を提案されたコンサルティング会社もありました。

総務部 課長 前田 規夫 様

しかしそういうグローバル企業向けの、格好良いというか、レベルの高い仕組みを入れても自分たちで運用していくことは難しいし、現場もついてこられない。とはいえ、様々なガイドラインやフレームワークなどの知見も無視することはできません。

ガイドラインやフレームワークの手法を取り入れつつ、実際に機能させるため、当社の求める「大江戸温泉物語グループのためのリスクマネジメント」を構築しましょう、と言っていただいたのはニュートンさんだけだったのです。

立派なマニュアルや成果物を作り、取締役会で発表することが目的ではなく、毎日忙しく働く現場の人たちが、できる限り負担感なくPDCAを回すためには、という視点からの提案があったことがニュートンさんを選んだポイントでした。

最大のリスクは、企業ブランドを損なう「風評」

個別リスクマネジメント ダッシュボード

―プロジェクトの概要と策定過程についてお聞かせください

荒川:約半年間のプロジェクトを、総務2名とニュートンのコンサルタント3名でタッグを組んでこなしました。

おおまかには関係者の意識のすり合わせ、課題特定、ERMの目的・範囲の設定、ERMの設計、導入・運用という流れになります。

本部長クラスのリスクマネジメントに対する意識のすり合わせのため、研修を実施しました。同時に、トップインタビューを進めていただきました。社長の森田含め各本部長クラスに対する、直接面談です。当社の執行役員を対象に、現状抱えている課題を洗い出すことが目的でした。こうした課題特定を通じて、大江戸温泉物語グループにおけるリスクマネジメントは一体何を目指して・・・具体的にはたとえば、どのような最悪の事態を避けるための活動にするのか・・・などといったことを明確化させました。
つぎに行ったのは、大江戸温泉物語グループの身の丈にあったERMの体制・プロセス整備です。ここでは、関係者がリスクマネジメントにかける時間、すなわちキャップを設けて、その中でPDCAをまわすような設計を提案いただきました。

この設計では、本部長、本部の次長課長層を巻き込んでの重大リスク種別ごとにワークショップを行う形になります。階層や部門を超えたコミュニケーション不足も一つの課題でしたから、リスクの洗い出しから、リスク対応や、管理体制を検討する上で、集まっていただいたほうが効果的・効率的だろうといった判断からです。併せて、その成果を見える化するための仕組みも入れました。弊社で「リスクマネジメントダッシュボード」と呼んでいますが、経営層が一目で現在のリスク管理状態が分かるような工夫が施されています。

こうした活動のほかに、前段で触れた各施設の再発防止策問題にも着手しました。こちらについては、インシデント報告のプロセスや基準を再整備するとともに、恒久対策も盛り込んだ形であらためて全社視点での再発防止マニュアルとして文書化しました。こちらについても、すでに現場において運用を開始しています。
 

―洗い出されたリスクの中で、もっとも大きかったものはどのようなものでしたか?


荒川:最終的に風評につながるものが、リスクとして大きいと思っています。火事、地震、食中毒など特定のリスクはもちろんですが、細かくみていくと別の種類の事件、事故も目につきます。

風評悪化は、「大江戸温泉物語グループ」の企業ブランドを毀損しかねないほか、成長スピードを加速させたいという社長の思いに沿った人材確保にも影響を及ぼしかねません。

今は、悪評が一度webに載ってしまうと、その影響をいつまでも受け続ける時代です。そうした場合には、一般のお客様や取引先との間で培ってきた信頼が失われてしまいます。

トップマネジメント層と現場スタッフの意識を高める活動を

―今後はどのようなことに注意して取り組んでいきたいですか。

前田:トップダウンとボトムアップ、両方同時にすすめることを意識したいと思います。一時は大変でも結局はいちばん早く効果を生むでしょう。

具体的には、弊社を取り囲む事業環境変化やステークホルダーのニーズをキャッチアップしつつも、常に会社としてのリスク認識を全社レベルで平準化し最適なリスクマネジメントを実現できるよう、トップマネジメントを巻き込んで議論できる場を数多く設けていきたいと思います。

同時に、リスクマネジメントについての会社の姿勢や方針を全社にしっかり浸透させていくつもりです。現在、従業員は正社員1,000名以上、パート・アルバイトさん含めると3,000名を超えています。これまでは、社長の森田がマネージャークラスの全員を把握していて、直接指示を出し、状況をコントロールすることができていましたが、組織が拡大するにあたり、その方法では目が行き届かなくなります。ですから、現場には施設レベルで直接出向いて、ダイレクトに我々が伝える、あるいは一緒に議論をして、考え方や手法を理解してもらうことを推進したいと考えています。

荒川:「日常の活動に落とし込んで行かないと継続していくことは難しい」。これは、ニュートンさんからのアドバイスで強く記憶に残っている言葉です。つまり、今回導入した仕組みをどのように継続させていくかにも注意を払いたいと考えています。

たとえば、「何かリスクがあるから、新しいルールを入れよう」といった短絡的な活動では、一時的にはまわっても、あっという間に形骸化してしまいます。当社でいえば支配人は、経理、人事管理、サービス、日常のオペレーション、施設について、全ての責任を負っていて、そこにさらにリスクマネジメントという観点で何か新しいことを始めても、現場に負荷がかかるだけで、それでは長続きしないのです。そうした点も踏まえて現実的にどのようなルールを整備していくか、そこは本当に重要な事だと感じています。

前田:まだしばらくは苦労が続くと覚悟していますが、これまでの信頼とこれからの大江戸温泉グループを守る、新しいカルチャーを根付かせるため、焦らず腐らず進めていければと思います。
 

―本日はありがとうございました。

担当の声

 

お客様の安心安全を守るERM

大江戸温泉物語グループ様は、お客様の安心安全をモットーに、高品質なサービス提供を追求されています。しかし、「温泉宿再生事業」というビジネスモデルであることや、BtoCという形態であることから様々なリスクが隣合わせであるということもまた事実です。

さて、今回のプロジェクトにおける成果には、大きく二つの特徴がありました。

ひとつは、目に見える形としての、個別リスクマネジメントダッシュボードです。これはリスクに対する現状の対応力はどのくらいなのか、今後どのような対応を行っていくのか、ということを端的にまとめたものです。すべてのリスクに共通した書式を用いることで体系的な整理と経営層へわかりやすく報告する、ということを目的としています。

そしてもうひとつは、コミュニケーション機会の創出です。本プロジェクトでは、社長をはじめとした本部長クラスの方々に、研修やワークショップ等による「リスク」について話し合う時間を設けていただきました。

リスクに特化して腰を据えて話をする、という機会をもつのはなかなか難しいことだと思いますが、リスクは必ずしも部門に紐づくものばかりではないため、特定の部門だけで検討するには限界があります。大江戸温泉物語グループ様は、今回の取組をきっかけとし、ひとつ壁を越えられたのではないでしょうか。今後、ERM活動を社内に根付かせていくことで、お客様の安心安全をさらに強固なものにしていただければと思います。

お客様情報

名称: 大江戸温泉物語株式会社(現:大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社)
本社所在地: 東京都中央区日本橋本町一丁目9番4号 ヒューリック日本橋本町一丁目ビル9階
設立: 2014年9月(創業2001年11月)
資本金: 112,600千円(2016年10月末時点)
代表者: 代表取締役社長 森田 満昌
事業内容: ホテル旅館温浴施設運営、不動産賃貸
URL: http://corporate.ooedoonsen.jp/

(2017年5月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

経営管理本部 総務部長

荒川 公男 様

総務部 課長

前田 規夫 様

ニュートン・コンサルティング

代表取締役社長

副島 一也

取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント

勝俣 良介

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