東京ガス様
事務局をつとめた防災・供給グループ 防災チーム 課長 猪股渉氏と山内亜希子氏にお話を伺いました。(以下、敬称略)
首都圏のライフライン確保が最大の課題
-貴社のリスク管理、防災の取り組みについて教えてください。
猪股: 当社は統合マネジメントシステムを構築し、「経営が管理すべき重要リスク」に対して対応策を策定していますが、その中で最も被害が甚大であると考えられているのが首都圏直下型大地震です。大地震については、災害対策基本法に定められた指定公共機関として「防災業務計画」を策定し、それに基づいて防災対策を運用しています。
山内: ライフラインの一つである都市ガスの供給継続は当社に課せられた最重要課題と捉え、予防対策、緊急対策、復旧対策の3つの取組みをおこなっています。予防対策とは、災害による被害を受けない、または最小限にとどめるための施策で、緊急対策は被害を受けた場合に被害の大きな地域の二次災害を防止し被害の少ない地域への供給を継続させる対策を指します。そして、復旧対策は被災によってガスの供給を停止した地域への早期復旧することを目的とします。
最新のフレームワークで見直し
-既に相応の対策を実施されているという印象ですが、BCP取組みのきっかけは?
猪股: 2005年の中央防災会議において大企業では10年以内にBCPを策定することが目標として掲げられました。当社は以前よりBCPに相当する防災業務計画を定めておりましたが、今般、最新のBCMのフレームワークに即して再度この計画を検証するという意思決定をいたしました。
国のガイドラインや東京都が発表したBCP等を参考に、より詳細な定量・定性的評価をおこない、当社の防災計画をさらに強固なものにするのが狙いです。
被災地周辺の通常業務の継続が課題
-具体的にはどんな検証作業を実施されたのでしょうか?
猪股: 当社は2005年の内閣府首都直下地震対策専門調査会において東京湾北部地震の被害想定を提示していますので、それと同じ想定で再度全ての業務の洗い直しをおこないました。
防災業務計画では、被災時には、二次災害を防ぐために供給を停止した被災地のガス供給をできるだけ早く復旧することに重点が置かれています。内閣府の被害想定では首都圏約1,000万軒のお客さまのうち109万軒が被災するという想定なので、この109万軒へのガス供給を再開するために、オール東京ガス(東京ガス、関係会社、工事会社及び協力会社を含めた総称)が一丸となって対応すると定めおり、それに則した全社防災訓練も実施しています。
今回の見直しでは、被災していない地域へのガス供給を継続するために必要となる最低限の業務とリソースを定量的に分析し計画に反映することになりました。また、復旧が進み、被災地で人員が余剰になった場合は、どの業務に優先的に戻すのかなども予め定めました。
自社の防災対策は適切なのか?
-今回コンサルティング会社を利用したのは何故ですか?
山内: 自社の取組みの過不足を客観的に判断していただきたかったのが一番の理由です。当社には既に何年も運用し、毎年見直しをしている防災業務計画があったので、BCPについても自社内で勉強し、改善をおこなう予定でいました。
一方で、既に基盤が自社内にあることで、その基盤に対して客観的な評価ができていないのではないかという不安と、自分たちでは偏りに気がつけないという危惧がありました。
そこで、BCP策定実績が豊富で、当社の特殊な事情についてもご理解いただけるコンサルティング会社があれば診断をお願いしたいと考え、ニュートン・コンサルティングさんにご相談しました。
広い見地からの指摘と作業効率化推進
-実際のコンサルティングはいかがでしたか?
山内: 大きな方向性としてBCPの観点からも当社の取組みには問題がないと分かり安心しました。偏りや抜け漏れについて総合的、客観的に判断していただけたと評価しています。
あとは、作業の進め方や社内への情報共有方法についていただいたアドバイスが有益でした。自分たちの取組みについて体系的に説明するメリットや、社内用マニュアル作成時の留意点など、今後作業を進めていくうえでも非常に参考になりました。
猪股: また、今回の取組みで特にBIAにおいては定性的な検討が多かったのですが、定量的な分析を加えることで社内や経営層の合意が得やすいことも認識しましたので、来年度からはこうした点を取り入れていきたいと考えています。
-今日は貴重なお話をありがとうございました。
利用サービス
プロジェクトメンバー
お客様 |
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防災・供給部 防災・供給グループ 防災チームリーダー 課長 萬來 雄一氏 |
防災チーム 課長 猪股 渉氏 |
副課長 大石 哲也氏 |
山内 亜希子氏 |
ニュートン・コンサルティング |
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取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介 |
担当の声
取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介
日本有数の企業のBCPプロジェクト支援を経て
今回プロジェクトをご一緒して何よりもまず感じましたのは、責任感を背負って“安定したガス供給”に対する取り組みを進められている社員みなさんの“真剣さ”です。本格的に災害対策に取り組まれるようになってから既に何十年も経つ今にいたっても、慢心することなく、何十ものワーキンググループを作るような大がかりな災害対策プロジェクトを進められ、また、様々な工夫をした災害演習を毎年行なっておられます。
東京ガス様の活動は、これから災害対策の取り組みを進めようと考えられている他の組織・団体の方々に向けての“先進的な事例になる”という点でも、その活動の意義は非常に高いものであると思います。
このような最先端且つ大きな視野に立ったプロジェクトに参加させていただけたことは大変光栄でした。