トヨックス様

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株式会社トヨックスは、国内有数の産業用ホースメーカーです。東日本大震災の際に仕入先様が被災し、自社の業務に多大な支障が出たことから事業継続への取り組みの重要性を痛感し、今般広大なサプライチェーンの洗い出しを含む総合的な対策を実施されました。この積極的なプロジェクトのビジョンを示し、陣頭指揮をとられた代表取締役 宮村 正司 氏にお話をお伺いしました。

 

-貴社の事業内容を教えてください。

当社はホースの製造メーカーで、樹脂ホースを用いて「装置から装置へ安心・安全を届ける」流体輸送システムの構築をおこなっております。お陰様で当社の技術力、組織力をご評価いただき、多くのお客様にお取り引きいただいておりますが、お客様の仕入れにおいて非常に高いシェアをいただいておりますので、その分だけ責任も重大だと認識しています。例えば、現在ではTOTO様、INAX様のシャワーホースは100%当社から納品させていただいております。

また、近年では、輻射空調システムの構築に注力しており、大変な将来性を感じています。輻射空調というのは天井に冷水や温水を通すホースを張り巡らせることで、風や埃の発生しない体に優しい環境を実現する技術です。ドイツでは輻射空調は知的生産性を高める環境技術であるという認識のもと、オフィスビルの9割で採用されています。日本では今までどうしても「ホース=水漏れ」という偏見が払拭しきれず、導入が進んでいませんでしたが、当社が過去10年取り組んできた実績をご評価いただき、丸の内エリアでの採用を始め、病院や介護ホームなど、普及が進みつつあります。

今後予想される複数購買への動きに先手

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代表取締役 宮本正司氏

-今回、BCPに取り組まれた理由を教えてください。

理由はいくつかあります。

もともとリスク管理については創業当時より意識高く取り組んでまいりました。というのも、工場を開業した途端に石油ショック等で材料が入らないという事態があり、事業を守るための備えについて常々考えてきたからです。

直接のきっかけとしては新潟の中越沖地震がありました。

この地震の際に、まずは当社の一番の財産である社員の命を守る備えが必要だと感じました。当社は国内に営業拠点がいくつかありますが、工場はここ富山の一ヶ所のみです。福井や新潟で近年地震がありましたので、富山も近々被災するのではないかと考えています。富山県との県境近くの新潟県には大きな断層帯であるフォッサマグナもありますし、また最近の研究の結果、実は工場の敷地の下を活断層が通っていることが分かりました。ここは川も近く、デルタ地帯であることから、液状化や水害の懸念もあり、対策は順次進めておりました。

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トヨックスは北アルプスの裾野、黒部にあります

もう一つの大きな理由であり、当社が最も懸念しているのが、世の中の「複数購買」への動きです。

実は当社の商品には、顧客企業様にとって唯一のサプライヤーである商品がたくさんあります。お客様に占めるシェアが高いということは、それだけ供給責任も伴います。その責任を果たしたい、と思う一方で、今後リスク分散の観点から購買先を分散させるお客様も増えると予想しています。

当社は東日本大震災の際に、一番重要な原材料である塩化ビニールの仕入れ先が被災し、入荷目途が全く立たないという状況に直面してしまいました。国内の他の供給先に連絡をしてみたものの、どこも注文が殺到していて対応が追いつかない。当然です。平時に取り引きがあるところが優先されるわけです。それでも当社は納品を遅延させることはできませんので、翌週明けにはイタリアの技術提携企業を通して材料の確保をおこないました。結果として、当社の平時の仕入れ先は供給が4ヶ月ストップしましたので、この決断は間違いではなかったのですが、緊急に必要な分の原料を航空便で対応するなどしたため、非常に大きなコストがかかったことや対応に多くの労力が割かれてしまいました。

このような経験から、災害後当社がすぐに取り組んだのは、仕入れ先の分散です。塩ビに関しては殆ど1社購買に近い状況でしたので、これは何とかしないと、と考えました。

となると、当社のお客様も同じことを考えるのは必然です。その際、現在100%のシェアを80%まで落とされるのか、或いは、半分まで落ちてしまうのか。全てのお客様の発注が半分になってしまったら当社は倒産してしまうかもしれません。そのためには、既存のお客様の信頼を獲得すること、今まで取り引きのなかった新しいお客様に、購買先として当社を選んでいただくためにも、きちんとBCPに取り組むことが必要だと考えたわけです。

常にNo1と付き合う主義

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-何故ニュートン・コンサルティングを選ばれたのですか?

 

国取り物語ではありませんが、当社の方針として取引相手は常にNo1の方や会社を選ぶようにしています。何故ならNo1の方はその地位にたどり着くまでに一番努力して一番苦労して実績を積んでこられた方だからです。なので、BCPの構築について外部の知恵をお借りしようと考えた時、私がBCPの構築について当社の副社長に出した唯一の指示は「BCPの分野のNo1を探して来い」ということでした。

副社長は金融機関や他の企業、インターネットでの情報などから総合的に判断してニュートンさんが最適だと判断しました。

評価したポイントとしては、前述の通りまずはきちんとした実績があること。これは内容を確認するためにニュートンさんの既存のお客様数社を実際に訪問してお話をお伺いしています。次にトップの方にやる気があり、それを支える組織力があること。これはNo1という地位を維持するために必要なものになります。そして最後に、当社の目指す方向性と合致していることです。

実際にニュートンさんにコンサルティングをお願いして、当方の目に狂いはなかったと確信しています。

サプライチェーンを徹底調査してBCP策定

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-今回のプロジェクトの内容を教えてください。

先ほどBCPに取り組んだ理由として、東日本大震災の際の当社の経験をお話ししましたが、製造業としては、やはりサプライチェーンの問題は避けて通れません。自社の環境調査、リスク分析の一環として、サプライチェーンのBCP取り組み状況の調査を徹底的におこない、それに基づいて平時の対応および有事の対応を検討しました。

具体的には、3次サプライヤーまでBCPの取り組み状況の確認をおこなっています。今までは直接取り引きのある企業を中心に調査をしていましたが、どんなに小さな部品であろうと、少量の配合剤であろうと、2次、3次まで確認しなければ安心できません。現在は、9割のサプライヤーから回答を得ており、ようやくつながっている道筋が見えてきた状態です。調査の結果としては、既にBCPに取り組んでいるサプライヤーは17%、これから取り組みたいと考えているところが36%です。ただし、取り組んでいると回答している企業も計画は持っていても訓練はしていないところがあるかもしれません。今後は、現場や工場をオープンに調査させていただくところまで進めたいと考えています。

この調査結果に基づいて、平時の購買体制の見直しと原料・商品双方の在庫見直しをしています。現在それぞれに1ヶ月分ずつ在庫していますので、有事でも2ヶ月は持ちこたえることができます。それに基づいて、復旧の体制を検討しています。

結局BCPについて突き詰めていくと、ビジネスのあらゆる側面の見直しをせざるを得ません。そういう意味でBCPは企業経営の「ど真ん中」です。

例えば、今回の検討においては、商品ラインアップの見直しも図りました。取引先の取り組み状況に依存するシステムは、やはり脆弱にならざるを得ません。それを根本的に解決するためには、当社のサプライチェーンを強化する必要があります。特注品を製造するために特別な材料を仕入れているのでは外部への依存が高まります。そこで、当社はお客様に対しても、特注品を汎用品に置き換える、使用部品を標準化するなどの取り組みを促進することにしました。

これは当社の競争力が下がるという側面は確かにあるでしょう。お客様も今までは「自分専用スペック」にこだわる向きが確かにありました。しかし、もうそういう時代ではありません。その部品が特注品だったからと言って、お客様製品の真の意味での差別化につながるのか、ということをお考えいただくと汎用品のメリットの方が大きいと気づいてもらえるのです。当社としては、こうした総合的な取り組みで自社のリスク対策を強化しています。

全社一丸のBCPプロジェクト

-全社員を巻き込んだプロジェクト運営の秘訣はありますか?

当社は幸い多くのお客様に支えられてこうして成長を維持していますが、当社の現在は5年前、10年前の投資判断、経営判断の産物です。経営者がどれだけの意識を持って取り組んでいるのか、それを社員が理解し、一丸となって進められているか、ということがカギを握ると考えています。

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なので、当社は事業運営にあたっては、全社員が共有し、理解し、実行する事業計画書を作成、配布、教育しています。そして、今年度の事業計画にはBCPの要素がたくさん盛り込まれ、各部署、各人に至るまで、何をしなくてはならないのかということを徹底しています。

社員には、自分の会社に誇りを持って働いて欲しいと考えています。誇りを持てる会社というのは、会社が世の中の役にたっていて、お客様から感謝され、尚且つ高収益である、ということだと考えます。なので、BCP策定にあたっても、これに準じた分かりやすいメッセージを発信することが大切です。私が先ほど申し上げた、複数購買による収益悪化を防ぐための手立て、とはそういうことです。お客様から発注を4割カットされてしまったらリストラやむなし、というのは誰にでも理解できることですから。

求められるのは経営者の意識と組織力

-苦労されたポイントや気づきはありますか。

BCPの策定は大変でした。一応ひと通りのステップは踏みましたが、まだまだ始まったばかりだというのが正直な感想です。これから全ての経営判断はこの観点なしにはできなくなりましたので、これからも継続して取り組んでいきます。

ただ、今回の検討で一番変わったのは、購買の仕組み、いや、概念だと思います。従来の調査項目であった技術力、経営状態などの他にBCPの取り組みも加味した上で、適切な割合での購買を常におこなわなくてはならなくなりました。購買担当者はこれから更に重要な役割を担っていくでしょう。

一方で、仕入れ先の担当者の方にも意識共有をお願いしています。私は、主要取引先の担当者の携帯電話番号をリストにして持っており、いつ何時でも電話をさせて欲しいとお願いしています。東日本大震災の時にも痛感しましたが、いかに早く情報交換できるかが命ですね。

BCPコンサルティングには豊富な経験が必要

-ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか。

先ほども申し上げましたとおり、さすがはNo1のコンサルティング会社だと感心いたしました。一番研究熱心で、一番実績があるところだからこそNo1になれるのだと考えます。また、ことBCPに関しては、いくら頑張っても一朝一夕に身に着けることはできないでしょう。頭で考えるだけでなく、身を持って様々な体験をされている会社だからこそ、こういうサポートを頂けるのだと感じました。

トップの方のやる気とHPに書いてあるように情熱コンサルタント宣言をそのまま実践しているコンサルタントの方の熱意に、当方も感化されました。説明は具体的で分かりやすく、当方のレベルに合わせて解説していただけましたし、面倒な依頼事項にも何とかしようという前向きな対応をしていただけ、助けられました。

また、豊富なネットワークから当社の必要とするサービスや外部ブレーンをご紹介いただけたり、今回の取り組みについてメディア露出の機会をご紹介いただけるなど、様々な観点からご協力いただきました。

-今後の予定についてお聞かせください。

現在当社はASEANに工場設置を検討中です。成長市場に生産拠点を持つ、という経営戦略であると同時に、一ヶ所しか工場がない状況のリスク分散を図る観点もあります。他にもBCP関連で色々と仕掛けていきたいと考えていることがあるのですが、それはまだ秘密です(笑)。

とにかく、お客様に対する使命を果たすべく、今後とも計画的且つ積極的にBCPに取り組んでいきたいと考えています。

-今日は貴重なお話をありがとうございました。

担当の声

BCPの本質を見つめ続ける、ぶれない姿勢から生まれたBCP

BCP策定時にはどの企業も悩まれます。
どの範囲を選定するのか? 対象事業、製品・サービスは? 対象顧客は? サプライヤまで巻き込むか?
しかし、トヨックス様についていえば、この最初の範囲設定から終始一貫、ぶれることはありませんでした。「自社の従業員の生命と雇用を守り、取引先に迷惑をかけない」ことを信念に範囲を設定された結果、全社についてのBCMを構築することになりました。構築過程で悩まれた際には基本方針にも書かれている上記の内容に都度立ち返り、強い信念のもとBCPへ取り組まれました。

仕入先へのBCP調査で、1次と2次サプライヤのどこまで調査するのかという際にもその姿勢はぶれず、「機能するBCP策定には3次サプライヤまで調査が必要」という強い信念で進められました。また依頼するばかりではなく仕入先や代理店のメリットも考え、全体として強くなろうというバランス感覚を持ち合わせていることも、個人的に非常に感銘を受けた点です。

「機能するBCPとするために、必要なことをする」という姿勢の先に形づくられたBCP。

最終的にトヨックス様は多くのBCP対策を導入され、今も様々な対応を進めています。これだけ短期間で多くの対策を導入した企業を私は知りません。私はトヨックス様のBCPへの取組みが広く世の中に知られることが、日本のBCPを大きく前進させることにつながると強く信じています。

お客様情報

商号 株式会社トヨックス
本社所在地 富山県黒部市前沢4371
設立 1969年4月
資本金 9,880万円
従業員数 291人
代表者 代表取締役  宮村 正司
事業内容 耐圧ビニールホースの生産・企画・販売など

(2012年2月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

代表取締役

宮村 正司 氏

ISO事務局

出嶋 光之 氏

ニュートン・コンサルティング

代表取締役社長

副島 一也

プリンシパルコンサルタント

内海 良