日本船主責任相互保険組合 様

BCP策定と業務改善を同時進行し、
組織の体力強化を加速する

日本船主責任相互保険組合(Japan P&I Club)様は、船舶の運航に伴う様々な事故について船主が負担する責任や費用の補償を目的として、1950年に設立された非営利保険組合です。船主リスクに対する保険てん補というかたちで海の安心・安全を支え、海上輸送の発展に尽くすことを使命に、国際的にも認知されたP&Iクラブとして活動されています。

 

この度、「BCP策定プロジェクト」および「業務効率化・断捨離プロジェクト」に取り組まれるにあたり、弊社サービスをご利用いただきました。その経緯と成果について、理事長 髙橋 静夫 様、企画部 印出 昌秀 様、大澤 綾 様、束原 智美 様にお話をうかがいました。

 

―事業内容をお聞かせください。

髙橋:私ども日本船主責任相互保険組合は、貨物船などの船舶が事故を起こした際、所有者等が負う責任や費用をてん補するP&I保険(Protection & Indemnity Insurance)を提供しています。当組合の提供する保険は国際航海に従事する船舶を対象とする「外航船保険」と日本国内のみを航行する船舶を対象とする「内航船保険」があり、現在の加入隻数は前者後者とも約2000隻、合計で約4000隻の船舶に加入いただいています。

 

―これまでのリスクマネジメントの取り組みについてお聞かせください。

髙橋:当組合で想定される最も大きな事業上のリスクは、組合員が所有する船舶で大事故等が起きた際、巨額の資金が必要になることです。当組合が取り扱うP&I保険は、外航船保険の場合、保険金額に定めがないのが大きな特徴です。船主が事故等の賠償責任を負った場合に保険金をお支払いするのが基本であり、大きな事故が発生した際は多額の資金が必要となります。そのため、当組合は世界13のP&Iクラブから成る国際P&Iグループに加盟しており、いざというときはほかのクラブと保険金を分担したり、再保険を利用したりすることでリスクヘッジを図っています。

一方、運営におけるリスクマネジメントについては、従来から水害や地震等の事業継続に影響を及ぼすようなリスクについてBCPを策定していましたが、最近では時代にそぐわないと感じられる点が出てきていました。そうした折に新型コロナウイルス感染症が流行し、在宅勤務等の新しい働き方が導入されたこともあり、BCPを見直そうという流れになったのです。

BCP策定のプロセスと業務効率化には、高い親和性がある

―ニュートン・コンサルティングをご利用いただいた理由は何でしたか。

印出:コンサルティング会社の選定にあたっては、数社からお話をうかがい、内容を総合的に勘案してニュートンさんへの依頼を決めました。特に惹かれたのは、単純にBCPを策定するだけではなく、職員の意識の向上といった点も含めてお手伝いいただけるという点でしたね。

 

―BCPの見直しと同時に「業務効率化・断捨離プロジェクト」を実施した理由についてお聞かせください。

髙橋:今回、BCPの再構築を行いましたが、BCPとは緊急事態が発生した場合にも重要業務を継続できるよう事前に準備しておくことです。そのため、BCP策定のプロセスでは、会社にとって「絶対に必要な業務」とは何かを検討する必要があります。この作業は「絶対に必要なわけではない業務」、つまり「ムダな業務」の洗い出しにもつながるでしょう。その意味で、BCP策定と業務効率化は親和性が高いと考えられます。

もともと、当組合では「3M(ムリ・ムダ・ムラ)をなくして業務の効率化を図ろう」という取り組みを数年前から進めていました。今回「BCP策定プロジェクト」と並行して「業務効率化・断捨離プロジェクト」を実施することで、重複していたり、生産性の観点から改善すべき点があったりする「ムダな業務」を効率的に整理しようと考えたのが、2つのプロジェクトを同時に実施した理由です。

 

―「業務効率化・断捨離プロジェクト」の概要を教えてください。

髙橋:本プロジェクト(PJ)の目的は、多様な働き方の確保、ペーパーレス化の促進、保険サービスの向上、コスト削減の4つです。これらの業務効率化によって生み出されるリソースを、より高い価値を創出する業務に振り向けることを最終的なゴールとしました。

2020年12月から2021年3月までを第1フェーズ、2021年6月から10月までを第2フェーズとして実施し、職員の4分の1以上にあたる約50名の有志が参加しました。

2020年度の第1フェーズでは、前述の目的を達成するためのテーマを決め、テーマごとにワーキンググループ(WG)を開催して、課題の特定と解決策の検討を行いました。テーマは、①チーム制の見直し、②損害調査部門と契約部門のあり方、③働き方の変化を踏まえたオフィスのあり方、④各部署業務効率化の4つに決定しました。

①②③のWGにはそれぞれに10名ほどの職員が参加し、月1回のWGで活発な意見交換ができました。④については、業務効率化のための意見を集めるために設置したアイデアBOXに集まった意見と、業務フロー図から抽出した3M(ムリ・ムダ・ムラ)のある業務を俎上に載せ、どの部署が責任をもって解決するのかを決めました。そして、3月に全PJメンバーが集まった報告会で各WGリーダーから検討結果を報告し、次のフェーズでの実施事項を合意しました。

2021年度の第2フェーズでは、前年度の活動をさらに深めていくために、同じ4つのテーマで活動を行いました。まず、PJメンバー以外からの声も広く集めるため、テーマごとに全職員からのアンケートを行い、そのアンケート結果を参考にWGグループメンバーが集まって討議を行いました。

2021年度の活動には、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症の長引く影響も色濃く現れたため、在宅勤務の影響についての討議も行い、前年同様に報告会を開催してアフターコロナを見据えた業務効率化の方向性を示すことができました。

プロジェクトを通じてみえてきた、良質な情報共有の大切さ

―今回のプロジェクトで苦労されたことはありますか。

印出:今回のプロジェクトは各部署から有志を募って実施しました。そのため、複数の部署に関わるような事柄については、意見の調整が難しいこともありましたね。

また、業務効率化の取り組みを進めるにつれて、業務の重要度にはグラデーションがあり、「絶対に必要な業務」と「ムダな業務」に明確な線を引くのはなかなか難しいことが分かりました。両者の間には「必要ではあるがBCP発動時には省略すべき業務」なども存在し、そのような業務がかなり多いことがみえてきたのです。

 

―今回のプロジェクトの成果はいかがでしたか。

印出:例えば、会議で報告するデータについて、これまでは各部署が異なる基準を用いて算出していたのですが、本プロジェクトで基準の見直しを行い統一しました。このように、具体的な業務において効率化が進んだ点もいくつかあります。

先ほど申し上げた通り、全体として完全に排除すべき「ムダな業務」はさほど見つからず、本プロジェクトを機に“断捨離”した業務は多くはありませんでした。しかしながら、プロジェクトを通じて部署間の壁を越えて様々な議論を行ったことで、ともに課題に向き合う前向きな意識を醸成できたと思います。

髙橋:今回のプロジェクトでは、経営にとっても大きな気づきがありました。一つは、会社における様々な業務について、それぞれが持つ意義や目的を職員にしっかりと伝えることが重要であるということです。いくつかの業務については、職員から「ムダな業務」ではないかとの指摘もあったものの、組織として検討した結果、やはり「必要な業務」であると判断されました。これは、職員に対する説明が足りておらず、業務の意義や目的が正しく認識されていなかったということでしょう。

また、本プロジェクトでは、「チーム制の見直し」や「部門間の連携」の必要性なども課題として挙がってきました。これらはいずれも組織内のコミュニケーションに関わる課題であり、このことから多くの職員が現状の情報共有のあり方に改善の必要性を感じている実態がみえてきました。とはいえ、「情報共有をしっかりやろう」と言うのは簡単ですが、定例ミーティングを実施するといった方法ではムダが増えるばかりです。情報共有の改善にあたっては“断捨離”と逆方向に進まないよう気を付ける必要があります。

 

―プロジェクト終了後の取り組みについて教えてください。

髙橋:今回のプロジェクトで見えてきた課題を踏まえ、今後も改善を続けていきたいと思います。特に、情報共有の改善については、デジタルツールの活用に可能性を感じています。当組合では、昨年からCRM(顧客関係管理)ツールを導入し、余計な報告をしなくても営業状況が共有できる状況を整備してきました。ほかにも、業務の中でビジネスチャットツールを有効活用しようという意見も出てきています。こうした新しい武器を手にすることで大きくレベルアップできるかもしれない、という期待感を持って検討を進めているところです。

プロによる伴走で、プロジェクトの進行がスムーズに

―ニュートンのコンサルティングはいかがでしたか。

大澤:ニュートンのコンサルタントの皆さんは、仕事が非常に丁寧ですね。資料等にも全くミスがなく、細かな点まで気を配っていただき、素晴らしいと感じました。

束原:細かな点についてメールで質問させていただくこともあったのですが、迅速にお返事をいただけたのがありがたかったです。おかげで、一人で悩みを抱えることなくスムーズに進行できました。

印出:当組合の取り扱うP&I保険は一般的にあまり知られていない分野ではありますが、ニュートンの皆さんにはかなり込み入った、細かい話にもお付き合いいただけました。各部署のメンバーが自由に発言する中、とりまとめは大変だったかと思いますが、うまくファシリテートしていただき感謝しています。

髙橋:私はニュートンさんの工程管理の手際に感心しました。今回のようなプロジェクトは予算との関係もあり、「年度内に必ず完了させなくてはならない」といった締め切りがあるものですが、社内で主導するとどうしてもスケジュールが遅れがちになるものです。経験が足りず全体の流れがよく理解できていないために、序盤で時間をかけすぎて後半は駆け足になってしまう、といったことが起こるわけですね。その点、全体をバランスよく進行してくださったニュートンさんは、「さすがプロだな」と感じましたね。

 

―本日は誠にありがとうございました。

担当の声

エグゼクティブコンサルタント  辻井 伸夫

社内の有志が主体となり、業務効率化を推進

「業務効率化・断捨離プロジェクト」は、2ヶ月ほど前から先行してスタートした「BCP策定プロジェクト」から派生したプロジェクトです。BCP策定のご支援にあたって最初に行う「組織と事業・業務の理解」は、とても重要なプロセスです。さらに業務の流れを理解するために、業務フロー図を作成します。「業務効率化・断捨離プロジェクト」では、「BCP策定プロジェクト」で作成した業務フロー図を詳細化し、その業務を担っている部署の責任者や担当者からヒアリングしながら、3M(ムリ・ムダ・ムラ)を見つけていきました。業務フロー図から見つけ出された3Mに加え、全職員に呼びかけてアイデアBOXに集められた効率化の意見、そしてプロジェクトメンバーの討議において出された意見を、4つのワーキンググループで検討して、対策をまとめていきました。

このプロジェクトをご支援するにあたって、私からお願いしたことがありました。それは、各テーマを検討するWGにお客様の中からリーダーを置き、月1回のWGの間でもリーダーを中心に社内で検討を進めていただくこと。そして、プロジェクトの最後に実施する報告会ではリーダーが報告内容をまとめ、リーダーから検討結果を報告していただくことです。これは、業務効率化はコンサルタントが主体となるのではなく、お客様ご自身が中心となって検討されることで効果を発揮するという考えによるものです。

プロジェクトにおいては、このお願いを越えるような活動を、各WGのリーダーを中心とするプロジェクトメンバー全員が実行してくださいました。業務効率化によって生まれたリソースをサービスの向上と多様な働き方の実現に振り向ける、というゴールに向けて、活発化した社内コミュニケーションを武器にさらなる業務改善を進めていただければと思います。

利用サービス

お客様情報

名称 日本船主責任相互保険組合
所在地 東京都中央区日本橋人形町2丁目15番14号
設立 1950年10月2日
事業内容 船舶の運航に伴い生じる海洋汚染・人身・積荷・施設等、様々な事故の損害賠償を行う非営利保険組合

(2022年2月現在)

プロジェクトメンバー

お客様

理事長

髙橋 静夫 様

企画部

印出 昌秀 様

企画部

大澤 綾 様

企画部

束原 智美 様

ニュートン・コンサルティング

エグゼクティブコンサルタント

辻井 伸夫

コンサルタント

田口 翔海

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