リスク管理Navi
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ロッテ 様
お客様 |
リスク管理部 リスク・危機管理委員会 事務局 事務局長 池 孝也 様 リスク管理部 リスク・危機管理委員会 事務局 マネージャー 伊奈 知彦 様 リスク管理部 リスク・危機管理委員会 事務局 宮下 竜一 様 |
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ニュートン・コンサルティング |
シニアコンサルタント 辻井 伸夫 チーフコンサルタント 日野原 小春 |
チョコレートやビスケット、ガムといった菓子や、アイスクリームの製造・販売を幅広く手掛けるロッテ様。総合菓子メーカーとして、創業以来70年以上にわたりお菓子業界を牽引し、「ガーナミルクチョコレート」「コアラのマーチ」「トッポ」「爽」といった数々のヒット商品を世に送り出してきました。そのほか、健康食品や健康雑貨などの販売事業も展開されています。
このたび、ニュートン・コンサルティングのBCM/BCP改善・再構築支援サービスをご利用いただいた経緯やご感想、今後の展望などについて、リスク管理部の池 孝也 様、伊奈 知彦 様、宮下 竜一 様にお話をうかがいました。
池:当社が創業したのは1948年のことです。初代社長の重光武雄が、戦後復興の中で米軍が日本の子どもたちにガムを配っている姿を見て、「世界の人に笑顔を与えるような事業をしたい」という思いを抱き、チューイングガムの製造・販売を手掛ける会社としてスタートしました。その後、チョコレートやビスケット、キャンディー、チルドスイーツ、アイスクリームと事業の幅が広がり、おかげさまでお菓子・アイスクリームの分野での売上は国内トップクラスとなっています。
当社は、日本各地に製造工場や支店を有しています。海外ではタイやインドネシア、ベトナム、台湾、ポーランドに現地法人の製造工場と販売拠点があり、グローバルに事業を展開中です。
宮下:当社は長年にわたり、さまざまなリスクへの対処を続けてきました。最初のきっかけは、2000年に他社で発生した食中毒事件です。当社でも危機管理プロジェクトを立ち上げて、製品事故に関するマニュアル内容を見直し、危機管理体制を強化しました。2009年には新型インフルエンザが流行し、事業継続や初動対応の対策にも着手。ただ、具体的なルール作りまで完了できていなかったこともあり、2011年の東日本大震災では十分な対応ができませんでした。この反省をふまえ、地震対応を中心としたBCPのマニュアル策定などにも本格的に取り組むようになりました。
宮下:2018年頃、有価証券報告書の「事業等のリスク」を明文化する際に、外部から「社内のBCPの内容が古いのではないか」という指摘を受けました。これは、東日本大震災後に構築したBCPをアップデートしてこなかったことが原因でした。その後、リスク管理体制を再構築して、その中の重点項目としてBCPの取り組みの見直しと改善活動の強化をすることになったのです。
宮下:それまでも製品事故防止や初動対応など、個別の事象への対応は進めてきたものの、リスクマネジメントという根本からアプローチをしたことがありませんでした。そのため、リスク管理委員会事務局として何に取り組めばよいのかもよくわからなかったのです。「まずは勉強しなくては」とセミナーに参加したり、専門書を読んだりするところから始めました。
そんな中で2021年に、ニュートン・コンサルティングの勝俣副社長によるセミナーを聞きました。併せて勝俣さんの著書『世界一わかりやすいリスクマネジメント集中講座』も読んでみたところ、大変勉強になったんですね。「『あの時、もっとこうしておけばよかった』を世界から失くしたい」というビジョンにも共感し、ニュートンさんに問い合わせてみました。
他の大手コンサルティング会社とも比較検討したうえで、ニュートンさんへの依頼を決めたのにはいくつか理由があります。まず、型にはまったコンサルティングをするのではなく、こちらの要望に合わせて適宜アレンジをしてくれる点です。私たちの「いずれは自走化したい」という希望を念頭に置いたご提案をしてくれました。また、ご提案の際には、副島社長・勝俣副社長が当社の経営陣の前で企業理念などについてプレゼンしてくれました。ニュートンの沿革について、苦労した時代も含めて洗いざらい説明してくださったのが印象に残っています。役員一同、「ここまで率直に話してくれる会社なら信頼できる」とニュートンさんに決めました。
池:既存のBCPをオールハザードBCPへ改善すること、実効力のあるBCMを構築することを目指した4カ年のプロジェクトとしてスタートしました。1年目はまず社長へのトップインタビューと経営層のワークショップを通してBCP基本方針を策定しました。復旧目標と優先ブランド(商品)について経営報告会で合意を取った後、方針実現のために事業継続の要となる全国5工場と、工場での生産を支える資材部、生産管理部、SCM本部、営業本部について、本社でBCP文書を策定しました。
2年目は、本社の業務部、財務・経理部、人事・労政部で支払業務のBCP文書を策定し、1年目に策定したBCP文書の実効力検証のための演習を各工場で実施しました。また、初動対応・対策本部活動に関するマニュアルの改定、役員を集めて各人に異なる情報を付与する本社緊急対策本部訓練に取り組みました。
3年目は本社部門にもBCP演習を展開し、各工場では現地緊急対策本部訓練を実施。また、工場訓練で決まった有事の対応方針をインプットに2回目の本社緊急対策本部訓練を行い、事前に決めておくべき全社の対応方針を議論・決定しました。
4年目となる今年度は、二度の本社緊急対策本部訓練、関東3工場で計画停電を想定した事業継続演習、本社の部門長を対象とした、部下に適切に指示を出せるかを検証する初動対応訓練の実施を予定しています。
伊奈:プロジェクト開始前は、BCPはどこか遠い存在で、自分たちには関係がないと捉えてしまっている社員が多かったと思います。しかし、何年にもわたって訓練や演習を重ねた結果、各部署が「当たり前のこと」として自然に取り組んでくれるようになりました。
また、今の時代、企業がBCPを策定することは常識となってきているため、社員が得意先の企業様から「ロッテさんはどんな取り組みをしていますか?」と聞かれる場面もあります。社会的な信頼獲得という意味でも、BCPに注力してきてよかったと思いますね。
池:本社緊急対策本部訓練は、社長を含む役員に参加してもらい複数回実施してきたのですが、初回はあまりうまくいきませんでした。シナリオに沿って方針を議論してもらうのが狙いだったものの、実際には各自の管轄範囲における懸念を列挙することに留まり、議論に発展しなかったのです。この反省をふまえてニュートンさんとも話し合い、2回目以降では「議論してほしいこと」を事務局から明示したうえでシナリオを付与しました。このように、最初から想定通りにはなかなか進まないもので、ニュートンさんと話し合いながらトライ&エラーを重ねました。
宮下:ニュートン・コンサルティングの強みは「翻訳力」だと思います。世の中には、簡単なことを逆に難しく説明してしまうようなコンサルタントさんもいらっしゃいますが、ニュートンさんはどんなこともかみ砕いて話してくれるんです。例えばBCPという言葉一つをとっても、「営業におけるBCPとは」「工場でのBCPって?」というところまで落とし込んでくださるので、初めて取り組む現場もすんなりと理解ができました。
また、人事業務に長年携わってきた私は、研修運営などの経験を通して「対面で話し合うことで、参加者を本気にさせることができる」と考えています。ニュートンさんも、現場から経営層までを巻きこむワークショップ型でのコンサルティングを重視している会社です。そこで、この4年間の演習・訓練は、地方の工場も含めてすべて対面で実施することにこだわりました。狙い通り、皆が同じ場所に集うことで議論が大変盛り上がりました。一方で白熱すると様々な意見も飛び交うものですが、現場でコンサルタントの皆さんが的確にファシリテーションを務めてくださいました。
池:今まで4年間真剣に取り組んできましたが、BCPの改善に終わりはないと感じています。役員の意識も高く、例えば社長との日常的なミーティングの中でも「夜間や休日に災害が発生し、本社で対策本部を開くことになったら、ビルにどうやって入ればよいのだろうか?」といったさらに細かい懸念点が出てくるので、その都度、関連部署に確認しています。また、富士山噴火やサイバー攻撃など、リスクが一層高まっている事象もたくさんあります。あらゆるシチュエーションを想定しながら、訓練・検討を重ねていきます。
また、今後は、プロジェクトのスコープを国内の関連会社や、工場を含む海外法人にも広げ、グローバル全体での事業継続力を底上げしていきます。IT-BCPについてもニュートンさんにご支援をいただきながらさらなる深化・高度化に向けた取り組みを進める予定です。
※取材は2025年8月に実施。記事内の所属先および役職名は、プロジェクト当時のものです。
名称 | 株式会社ロッテ |
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所在地 | 東京都新宿区西新宿3-20-1 |
設立 | 1948年6月 |
事業内容 | 菓子、アイスクリーム、健康食品、雑貨の製造および販売 |
利用サービス | BCM/BCP改善・再構築支援サービス / BCP訓練・演習支援サービス |
チーフコンサルタント
日野原 小春
当事者を巻き込んで、自社独自のBCM活動へ
ロッテ様とのBCM/BCP改善・再構築プロジェクトは4年目を迎えますが、ご支援するなかで特徴的だと感じるのは、毎年、経営・本社部門・工場と各階層を巻き込んだ訓練・ワークショップを実施していらっしゃることです。例えば、座学ではなく当事者が頭を使う訓練・ワークショップで各階層を巻き込み、また、事務局・コンサル含めて対面で顔を合わせて実施し、有事対応の当事者たる参加者同士が率直に対話できる環境になるように企画・設計を行っています。そして、工場向けの施策では設計段階から工場の現場当事者にヒアリングし、日々の業務で感じる事業継続上の課題を設計に反映させるなど、より実効性のあるBCM活動になっています。
さらに、当事者にとって有意義な活動になるよう、演習手法を事務局自らアレンジ・設計いただくなど、ご支援が続く中でBCM活動の自走化も活発に進んでいます。自社独自のやり方を自ら考えて活動するロッテ様のお取り組みは、企業文化・風土に沿ったものとして社内の各階層の方々からも好評で、災害への意識向上にも繋がっています。特に、役員向けの緊急対策本部訓練は2024年度から年2回実施・計画されており、全社一丸の取り組みとしてますます対応力が向上していくものと思います。
今後もロッテ様の製品や会社そのものが多くの人々に愛され続けるように、私たちも、危機に揺るがない組織づくりを皆様と共に目指し、引き続きご支援して参ります。