リスク管理Navi
リスク管理Naviは、リスクマネジメント(Risk Management)に関しての情報サイトです。
PHCホールディングス様
お客様 |
代表取締役社長CEO 出口 恭子 様 CEOオフィス 室長 池田 和人 様 CEOオフィス 主任 山内 司 様 |
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ニュートン・コンサルティング |
シニアコンサルタント 高橋 篤史 シニアコンサルタント 日下 茜 チーフコンサルタント 山本 真衣 |
PHCホールディングス株式会社(PHCグループ)様は、グローバルに展開する日本発のヘルスケア企業です。糖尿病マネジメント、ヘルスケアソリューション、診断・ライフサイエンスの分野で、開発、製造、販売、サービスを提供されています。その起源は1969年の松下寿電子工業株式会社の創業にさかのぼり、2014年にパナソニックヘルスケアホールディングス株式会社として事業を開始。2018年にはコーポレートブランドを「PHC」に変更されました。長い歴史の中で、さまざまな企業との統合と発展を重ね、精緻な技術と幅広い知見を融合させ、ヘルスケアの未来を切り拓くソリューションを提供しています。
この度、ニュートン・コンサルティングの「ERM構築・運用アドバイザリサービス」を導入いただいた経緯や成果について、PHCホールディングス 代表取締役社長CEOの出口 恭子 様、CEOオフィス室長の池田 和人 様、CEOオフィス主任の山内 司 様にお話をうかがいました。
出口: 当社グループは、健康を願うすべての人々に新たな価値を創造し、豊かな社会づくりに貢献することを経営理念に掲げています。傘下にPHC株式会社やアセンシア ダイアベティスケアホールディングス、エプレディアホールディングス、LSIメディエンス、ウィーメックス株式会社、メディフォード株式会社などを持ちます。
私たちは、人生においてかけがえのない「ヘルスケア」の分野に、多方面から取り組んでいます。疾病の研究、診断、治療、予防につながる革新的な製品・サービスを50年以上にわたり提供してまいりました。現在、世界125以上の国と地域で事業を展開し、「ヘルスケアの未来」を見据えた精緻な技術の提供に日々邁進しております。私達は「One PHC」を標榜し、グループ内の事業間連携による新しい発想やシナジーを生かしながら、ヘルスケアジャーニーにおける各タッチポイントで患者さまや医療従事者へ価値をもたらし、豊かな社会づくりに貢献します。
池田: PHCグループは、この10年間で複数の企業を買収しながら急速に事業規模を拡大してきました。異なる業態や地域に展開する企業がグループに加わる中で、各社がそれぞれの事業特性に応じた形で、BCP(事業継続計画)やERM(全社的リスクマネジメント)に取り組んできました。しかし、2021年の上場以降、株主や投資家、従業員、取引先など多くのステークホルダーに対して透明性のある経営が求められるようになり、リスク管理は単なるリスク回避策にとどまらず、経営戦略の重要な一環として位置付ける必要性が高まっていました。
事業の拡大と多様化に伴い、リスクの種類や範囲が複雑化する中で、グループ全体で統一されたリスクマネジメントフレームワークを構築することが、持続可能な成長を実現するための重要な課題となっていたのです。
山内: リスク管理の活動を進める中で、いくつかの重要な課題が浮き彫りになりました。例えば、「リスクの選定基準や評価方法は現状の事業環境に適しているのか」「BCPの内容が実際の危機に対応可能なものとなっているか」などです。これらの課題を解決するには、社内だけのノウハウでは限界があり、外部の専門知識を活用する必要があると判断しました。
そこで、リスクマネジメントに特化したコンサルティング会社であるニュートン・コンサルティングに支援を依頼しました。外部の視点を取り入れることで、より精度の高いリスク管理体制を構築することを目指しました。
池田: ニュートン・コンサルティングを選定した理由は、リスクマネジメント分野における専門性の高さと豊富な実績にあります。特に、上場企業を対象としたプロジェクト経験が豊富であり、私たちのようなグローバルに事業を展開する企業に対しても的確なアドバイスを提供できる点に魅力を感じました。
また、初期の相談段階から、私たちの課題やニーズを丁寧にヒアリングしてくださり、具体的かつ実践的な提案をいただけたことも大きな決め手となりました。プロジェクトに伴走して支援していただける姿勢も信頼につながりました。
山内: 今回のプロジェクトは「PJ Risk Vanguard」と名付け、グループ全体のリスク管理を強化し、自律的に運用できる仕組みを構築することを目標に掲げました。具体的には、以下の3つの課題に重点的に取り組みました。
これらの課題に対して、ニュートン・コンサルティングのアドバイザリー支援を受けながら、徹底的に現状を分析し、改善策を講じました。
池田: まず、プロジェクトの初期段階で、経営層4名へのインタビューを実施しました。このインタビューでは、グループにとっての「最悪の事態」を具体的に定義し、それを基にBCPの見直しやERMプロセスの改善に向けたインプットを整理しました。
さらに、リスクマネジメント委員会の定例会を活用して、インタビュー結果を基に現状を共有し、改善方針を検討しました。例えば、「ブランド力の低下やレピュテーションへの影響は何としても避けたい」という経営層の意見を踏まえ、グループ全体の重要リスク選定基準を再構築しました。
また、事業継続リスクについては、経営層の「従業員とその家族の安全安心が最優先」という方針を反映し、本社の緊急連絡体制や役割分担を明確化するガイドラインを策定しました。
山内: プロジェクトを通じて、グループ全体の重要リスク抽出やBCPの見直しにおいて、これまで独自に進めていた部分がニュートン・コンサルティングの助言により大幅に精度向上しました。
また、プロジェクト期間中には、ニュートンのコンサルタントである日下さんにより、リスクマネジメント委員会メンバーを対象としたERM研修を実施していただきました。この研修は、参加者から非常に好評で、委員会の活性化にもつながりました。現在では、ニュートンさんの支援が終了した後も、委員会の運営方法を工夫し、各メンバーが積極的に議論に参加できる体制を整えています。
出口: 今回のプロジェクトは、グループ全体のリスクマネジメント力を向上させる点で、企業価値の向上と持続可能な成長のために極めて重要なテーマだと思いました。私は毎月「タウンホールミーティング」を通じて、全世界の従業員に向けてグループの取り組みを発信しています。社員一人一人がリスクマネジメントを意識できるよう、今回のプロジェクトの成果についても、タウンホールで共有したいと思っています。
池田: 海外の関連子会社では、日本に比べて自然災害が少ないため、BCPの重要性を理解してもらうのに苦労する場面もありました。しかし、リスクマネジメント委員会を中心に、全拠点に統一されたメッセージを発信できるようになったことで、リスク意識の共有が進んでいます。今後は、グローバル全体でリスク意識をさらに浸透させる方法を模索していきたいと考えています。
山内: ニュートンさんは、私たちの課題に対して毎回しっかりと検討・準備を行い、具体的かつ実践的な提案をしてくださいました。他社事例の共有も非常に参考になりました。また、ニュートンさんが掲げる「ホワイトな働き方」にも共感し、コンサルタントの皆さんが生き生きと働いている姿勢が、私たちのプロジェクトにも良い影響を与えました。
池田: ニュートン主催のフォーラムに参加した際、他社のリスクマネジメント担当者と交流する機会を得ました。そこで得たネットワークは、今も継続して活用しています。このようなご縁も、ニュートンさんの支援があったからこそだと感じています。
出口: 今回のプロジェクトを通じて、リスクが顕在化した際の初期対応について、グループ全体で統一した認識を持つことができました。今後は、リスクの発生を未然に防ぐための予兆管理をさらに強化できるよう、リスクを最小限に抑える仕組みを構築したいと考えています。
ニュートンさんからも教えていただいたように、「できているはず」という思い込みが重大な事態を招くことがあります。リスクの兆候を素早く察知し、対応する文化をグループ全体に浸透させることで、さらなる企業価値の向上を目指します。
※インタビュー内容および所属先は取材当時のものです。
名称 | PHCホールディングス株式会社 |
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所在地 | 東京都千代田区有楽町一丁目13番2号 第一生命日比谷ファースト15階 |
創業 | 1969年 (松下寿電子工業株式会社として創業開始) |
事業内容 | 各種ヘルスケア機器・サービスの開発・製造・販売 (糖尿病マネジメント、ヘルスケアソリューション、診断・ライフサイエンス) |
利用サービス | ERM構築・運用アドバイザリサービス |
シニアコンサルタント
日下 茜
経営層・事務局の積極的な姿勢が
プロジェクトの大きな推進力に
全社的リスクマネジメントの活動は、未然防止を目的としたリスクマネジメントと、災害や事故といった有事の場面で取り組むBCP(事業継続)との両輪が相互に機能することが重要です。今回のプロジェクトでは、我々コンサルタントと事務局の皆様がまさに並走して、この2つの活動を同時並行で推進することで、PHCホールディングス様全体としてリスクマネジメント力の底上げができたと感じています。
特に今回最も苦慮した点は、「国内外にさまざまな組織文化・業容をもつ関連会社がある中で、PHCホールディングスとして、各社のリスクマネジメントをどのように舵取りすべきか」という点でした。そこで肝要となるのが、トップの積極的な関与です。本プロジェクトでは、トップインタビュー、プロジェクト中間/最終報告、リスクマネジメント委員会といった主要な場面で、出口社長だけでなく他のCXOの方も毎回、ご出席いただき、積極的なコメントやご要望を伺うことができ、「PHCホールディングスとして本気でリスクマネジメントを変えていくんだ」という姿勢を各社へ波及できたことが本プロジェクトの成否を分けたと言えます。
PHCホールディングス様のリスクマネジメント活動は、始まったばかりでありゴールが見えない活動です。是非、今後も熱意のある事務局の皆様と一緒に、PHCホールディングス様にとっての最適なリスクマネジメント活動が実現できるようご支援を続けてまいりたいと思います。