日本貿易振興機構(JETRO)は3月25日、調査レポート「ASEANのデジタル経済とデータ関連規制」を公表しました。
本レポートは、ASEANのデジタル経済に関わる日本企業や、将来的に参入を検討している日本企業に向けた基礎情報をまとめたものです。具体的には、デジタル経済の発展がめざましい主要6カ国(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)に着目し、経済成長やデータ関連規制の状況、テクノロジーをめぐる動向などを報告しています。
まず、ASEANにおけるデジタル経済の成長について記載されています。各国が成長している中でも、ASEAN Digital Integration Index8(ASEAN各国のデジタル統合の実施を測定する指標)を見てみると、特にシンガポールが指標の全ての柱で高い数値を獲得していることが報告されています。また、代表的なネットサービス・アプリ・SNSの中でのユーザー数の内訳を見ると、YouTubeやTikTokといった映像コンテンツプラットフォームの視聴ユーザーが特に多いことが分かりました。
また、主要6カ国は、ASEAN域内のさまざまな規制・法制制度に参加しています(ASEAN電子商取引協定、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定など)。なお、デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)については、主要6カ国のうちタイのみ未参画ですが、参画に向けて準備中です。
6カ国それぞれにおいても、国内でデジタル化推進を目指す戦略・枠組みが定められています。例えばベトナムには、電子商取引を最優先産業として、流通システムの近代化、企業の競争力向上などを目指す「Eコマース開発計画(2021-2025)」があります。
また、6カ国における、自国市場に参入する企業に対するデータ関連規制もまとまっています。これらは、日本企業を含む外国企業にも適用されます。
さらに、テクノロジーごとの動向(データセンターや、5G・6G、越境電子商取引、電子決済、デジタル・ペイメント、電子インボイス、デジタルID、デジタル認証など)もまとまっています。例えばデジタル認証の動向では、シンガポールのデジタルID「Singpass」が紹介されています。これは、アプリのホームページに表示されるユーザーのDigital Identity Card(Digital IC)を政府機関の窓口で提示すれば本人確認ができるというもので、幅広い政府サービスに利用されています。
なお、ASEANのデジタル経済は変化のスピードが早いことから、本レポートを参考にしつつ最新動向を都度確認することが望ましいと記されています。