特集テーマは「広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル」、「令和7年度版情報通信白書」を公表 総務省
総務省は7月8日、「令和7年度版情報通信白書」を公表しました。
第1部は「広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル」と題された特集となっており、社会基盤的な機能を発揮しているデジタル領域(SNSやクラウド)拡大やAIの進展の動向などを概観しています。
第1部の特集ではまず、社会生活と企業活動いずれにおいてもデジタル領域が拡大していることが示されました。特に企業ではクラウドサービスの利用率が約10年で倍増し、2024年は80.6%の企業が利用していることがわかりました。また、クラウドサービスを利用している企業に「現在使っているサービスを他サービスや自社構築システムへ代替する際の課題」についてアンケート調査を行ったところ、「運用費用の増加やサービスレベルの低下」が最も大きな課題として挙げられました。「代替可能なサービスがない」と回答した割合は低いものの、コストやサービスレベル維持の観点から代替は難しいことが示唆されています。
次に、AIの進展についていくつかの動向を取り上げました。例えば2024年9月、Open AIが推論モデル「OpenAI o1」の開発を発表し、従来のAIが苦手としていた科学・コード生成・数学の分野における多くの指標でOpen AIの「GPT-4o」モデルを上回ったとされています。具体的には、アメリカ数学オリンピック予選テストを約83%解き全米の学生トップ500人に匹敵、化学・物理学・生物学の専門知識を問う評価指標で博士号を持つ専門家を上回る、2025年の東京大学入学試験問題で合格最低点を上回るなどの結果を残したと記されました。また、日本のAI研究開発・活用はアメリカ・中国・イギリスといった上位国には及ばず(※1)、高い評価を得ているとは言えないものの、LLMやAIエージェントの開発が進んでいる一面もあると見ています。
※1:2024年11月にスタンフォード大学のHAI(Human-Centered Artificial Intelligence)が発表した2023年のAI活力ランキングによるもの。1位アメリカ、2位中国、3位イギリス、日本は9位。
そして、デジタルの進展がもたらす課題として、▽デジタル社会を支える信頼性ある基盤の確保▽AIによるイノベーション促進とリスク対応▽インターネット上の偽・誤情報などへの対応▽サイバーセキュリティの確保を挙げました。デジタル技術がもたらす利益を享受しながら、リスク抑制のため、こうした課題への対応も不可欠だと述べています。
このほか、第2部では情報通信分野の現状と課題が示されました。ICT産業、電気通信分野などの動向や、総務省におけるICT制作の取り組み状況などについて分析を行っています。