重大サイバー攻撃事案で国際共同捜査を推進、「令和7年版警察白書」を公表 警察庁
警察庁はこのほど、令和7年版警察白書を公表しました。SNS上に偽情報・誤情報が投稿・拡散され社会問題化していることを踏まえ、今年の特集は「SNSを取り巻く犯罪と警察の取組」をテーマとしています。仮装身分捜査の導入といった新たな捜査手法を確立したことや、サイバー人材の育成を強化していることなどが記されています。また、本編となる第2部の第3章では「サイバー空間の安全の確保」と題して、サイバー空間における脅威とそれへの対処がまとめられています。重大サイバー事案への対処を担う、国の捜査機関であるサイバー特別捜査部(関東管区警察局に設置)による国際共同捜査の成果についても記載されています。
白書によると、DDoS攻撃によるものとみられる被害が政府機関、交通機関、金融機関などの重要インフラ事業者において確認されています。さらには、情報窃取を目的としたサイバー攻撃や国家を背景とする暗号資産獲得を目的としたサイバー攻撃、生成AIの高度な技術を悪用した事案なども発生しているほか、企業・団体を標的にしたランサムウェア被害も相次いでいます。
令和6年度を振り返ったトピックとしては、「OTサイバーセキュリティの原則」の共同署名に加わったことや、サイバー攻撃グループ「MirrorFace(ミラーフェイス)」に関する注意喚起を行ったことなどが取り上げられています。前者は、重要インフラ事業者がオペレーショナル・テクノロジー(OT)の管理に関する意思決定を行う際に指針とするべき6つの原則を示しています。後者は、ミラーフェイスの攻撃が、中国の関与が疑われる組織的なサイバー攻撃活動であると評価し、同グループの手口や未然防止策などを周知しました。
サイバー特別捜査部と関係都道府県警は、国境を越えて実行される重大サイバー事案について国際共同捜査に参画しています。昨年11月にはランサムウェア攻撃グループ「Phobos(フォボス)」の運営者が米国司法省によって起訴され、この事案において運営者の特定に成功したのは日本のサイバー特別捜査部だったことなどが紹介されています。
サイバー対処能力強化法および同整備法が今年5月に成立したことも取り上げられています。整備法によって警察官職務執行法の一部が改正されました。具体的には、サイバー攻撃による重大な危害を防止するための警察によるアクセス・無害化措置を可能とする規定が新たに設けられました。この規定は、2026年11月までに施行することとなっています。
このほか、テロや自然災害などへの対処といった災害警備活動についても記されています(本編第4節)。開催中の大阪・関西万博では、テロや雑踏事故などの未然防止に取り組み、安全・安心の確保に向けた活動を推進しています。