
「サイバーセキュリティ・メッシュ・アーキテクチャ(CSMA)」は、複雑化するセキュリティ課題に対応するための新しいアプローチです。近年、IT環境の複雑化やサイバー攻撃の巧妙化により、従来の境界防御型セキュリティだけでは十分な対策が難しくなってきました。CSMAは、分散化したIT環境のセキュリティ機能を統合し、より強固なセキュリティ対策を可能にします。
サイバーセキュリティ・メッシュ・アーキテクチャ(CSMA)の概要と背景
CSMAは、米国の調査会社であるガートナー社が2021年に公表したセキュリティトレンドの中で提唱された、新しいセキュリティ対策のアプローチです。
従来のセキュリティは、社内ネットワークと社外ネットワークの境界にファイアウォールなどを設置し、外部からの不正アクセスを防ぐ「境界防御型」のアプローチが中心でした。その後、境界防御型の課題を解決するものとして、内部と外部の区別に依存せず、全てのアクセスを検証する「ゼロトラスト」のアプローチが登場しました。
しかし近年、多くの企業がハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境を採用し、さらにリモートワークの普及によりIT資産の分散が一般化しています。このような環境では、従来のセキュリティでは以下のような課題が生じてきました。
- セキュリティのサイロ化:
各部門や拠点で異なるセキュリティツールを使用することで、統一的な管理が困難になる - 監視・管理の複雑化:
多数のツールやシステム間でデータやポリシーを共有できず、脅威の検出や対応が遅れる - コスト増加:
個別に運用されるセキュリティソリューションが非効率的で、高いコスト負担を招く
こうした課題を解決するために登場したのが、セキュリティソリューションを「メッシュ状」に結びつけ、ネットワーク全体でデータやシステムを保護するCSMAのアプローチです。
CSMAの基本構造
CSMAは、個別のセキュリティソリューションを相互に連携し、統合的に運用することにより、包括的なセキュリティ対策を講じることができます。その基本構造は、以下の4つのレイヤーで構成されています。
- セキュリティ分析とインテリジェンス:
各システムから収集されたデータを統合・分析し、脅威の検出や対応を行う仕組み - 分散アイデンティティファブリック:
ユーザーやデバイスごとの認証やアクセス制御を行う仕組み - 統合ポリシーとポスチャ管理:
データ保護やコンプライアンス管理を一元化し、セキュリティポリシーを遵守させたり、データ漏えいを防止したりする仕組み - 統合ダッシュボード:
複数のセキュリティソリューションを一つのプラットフォーム上で管理し、組織全体のセキュリティ体系を可視化する仕組み
CSMAのメリット
CSMAでは、セキュリティソリューションが相互に連携し、一元的に管理されます。ツール間の情報共有がスムーズになり、脅威への対応スピードの向上が期待できるでしょう。セキュリティインシデントが発生してしまった場合も、被害を抑えることができます。
また、CSMAは従来型セキュリティの課題であったサイロ化を解消し、運用負担とコストの削減にも寄与します。クラウドサービスやリモートワーク環境などを利用する企業でも一貫したセキュリティ対策が可能となり、高いセキュリティ水準の維持が可能です。多様化・分散化する現代のIT環境において、CSMAは有効なアプローチとなり得ます。
一方で、新しいアーキテクチャの導入には、従来とは異なるスキルセットが必要になります。CSMAの特徴や仕組みを十分に理解したうえで、効果を確認しながら導入を広げていくことで、成功へつなげることができるでしょう。