サービスデスク

掲載:2011年01月08日

執筆者:執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント 内海 良

用語集

サービスデスクとはユーザからの問い合わせに対応する単一の窓口()です。またユーザからの問い合わせに端を発した活動のみではなく、社内で検知されたアラートへの対応や新しいサービスの情報発信などさまざまな役割を担うことが求められます。

※ 英語表記ではSingle Point Of Contactと呼ばれることから、略してSPOCと呼ばれることもあります。

         

ユーザとのコミュニケーションを一手に引き受けるサービスデスク

プロセスではなく機能としての位置づけ

“サービスデスク”はITILでは“プロセス”ではなく、“機能”として位置づけられています。見逃しがちですが、この違いは大きな意味を持ちます。“プロセス”は「ビジネス目標を達成するための活動」であり、誰が実施しようとプロセスとして成立するという特徴があります。それに対し “機能”は「ひとつ、ないしは複数のプロセスを支える活動」であり、その活動を行う人や体制によって品質に大きな差が出るのが特徴です。

サービスデスクに当てはめるとどうでしょうか?

サービスデスクが支えるプロセスはインシデント管理問題管理変更管理構成管理など多岐に渡りますし、サービス品質はオペレータの技量に大きく左右されます。つまり他のプロセスとのスムーズな連携、そして実施する人員体制の整備がサービスデスク成功の鍵となるのです。

顧客満足度への影響が大きい極めて重要な機能

サービスデスクの影響力は非常に大きく、不十分なサービスデスクの対応は、例え他のサービスが正常に稼動している場合でも、ITサービス全体に対して好ましくない印象を与えます。先に述べたように構成管理や変更管理が正しく機能していても、サービスデスクからのユーザへの通知一つでサービス全体の印象が悪くなる場合があります。サービスデスクを運営する際には「利用者が期待していることの正確な把握」「コミュニケーションスキル、インシデントを解決するための技術的スキルの教育」「形骸化させないための人員配置の工夫」等が重要なポイントとなります。

サービスデスクの様々な形態

サービスデスクには以下に述べる4つの形態があります。それぞれメリット、デメリットがあるので、必要に応じて自社に適した形を採用するとよいでしょう。

また今後も技術の発展により、この4つ以外の形態も登場すると考えられます。
形態 特徴 メリット デメリット
ローカル
サービス
デスク
サービスデスクがユーザと同じ場所か物理的に近い場所に存在する形態 物理的にユーザとの距離が近く、蜜なコミュニケーションと迅速な対応が可能 スタッフが常に待機する必要があり、リソースに関しては非効率
中央
サービス
デスク
サービスデスクを一箇所で運営する形態 サービスデスクの数を減らすことができ、効率と費用対効果の向上が見込まれ、より少ないスタッフでより大量のコールに対応が可能 物理的にユーザと距離があるため、即時に現地対応する場合などに遅延が発生
バーチャル
サービス
デスク
インターネットの利用および企業向けサポートツールによって、実際には複数の要員が複数の地域や別部門に分散していても、単一の中央サービスデスクがあるかのような印象を持たせる形態 在宅勤務、2次サポート・グループ、アウトソーシングなど任意の組み合わせが可能となり柔軟な運営体制が構築可能 サービスの品質と文化の一貫性と画一性を確保するための手段が必要
フォロー・
ザ・サン
地理的に分散した2つ以上のサービスデスクを組み合わせる形態(ヨーロッパのサービスデスクは解決できなかった場合、更にそのインシデントを米国に引き継ぐやり方) どのデスクも単一シフトで働けばよいため、比較的低コストで24時間対応が可能 共通のプロセス、ツール、情報共有DB,文化、引継ぎルールなど、整備すべき課題も多数発生

ストレスの多い業務内容でありスタッフのケアが重要

ITILではサービスデスクスタッフに対するケアの重要性にも言及しています。サービスデスクは苦情処理という面も大きいためストレスの溜まりやすい業務であり、以下のような環境を整えることが重要としています。
  1. 雰囲気を明るくするような環境と備品
  2. スタッフがちょっとした離席でも休憩をとれるよう休憩室やリフレッシュエリアの設置
  3. 電話対応が電話の対応の音で邪魔されないような適切な騒音対策
示唆に富んだ内容でありぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。

サービスデスクとヘルプデスクの違い

サービスデスクとヘルプデスクは同じ意味で使われることが多いですが、ITILでは意図的にサービスデスクという言葉を使用しています。ヘルプデスクはあくまでユーザを“ヘルプ”するという受身のサービスですが、サービスではユーザへの情報発信といった積極的なコミュニケーションも要求される点が大きく異なる点です。

サービスデスクの測定基準

最後にサービスデスクの有効性を測定するための代表的な基準を以下に挙げます。こういった結果を定期的に測定することで、サービスデスク活動の質の向上や運営体制の最適化など、様々な改善活動へつなげることが可能となります。
  • 1次サポートでの解決率
  • インシデント解決の平均時間
  • インシデントをエスカレーションするまでの時間
  • 一件あたりのインシデント処理にかかった平均コスト
  • 解決されたコールのレビューとクローズの平均時間
  • 平均コール時間の測定基準と組み合わされた時刻ごと、および曜日ごとのコール数の内訳
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