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コラム

東京都公表の「首都直下地震による東京の被害想定」の活用

2011年01月31日

コンサルタント

英 由佳

2005年2月に、内閣府中央防災会議の首都直下地震対策専門調査会(以下、専門調査会)が、国として初めて首都直下地震の被害想定を公表しました。この動きを受けて、2006年5月に、東京都防災会議によって作成・公表された報告書が「首都直下地震による東京の被害想定」(以下、都の地震被害想定)です。

専門調査会においては首都直下地震として18パターンの地震が検討対象とされましたが、東京都はその中から発生可能性が高く、東京に大きな被害を及ぼすものとして2パターンの地震を選択し(東京湾北部地震、多摩直下地震、いずれも発生可能性の高いM6.9、M7.3について想定)、地盤、急傾斜地、建物道路等についての実態に即したデータを活用し、区市町村別の被害を想定しました。

構成としては「Ⅰ本編」、「Ⅱ資料編」および「Ⅲ手法編」の三編から成り、その特徴については、本編2章「被害想定の特徴」においてまとめられているほか、東京都防災ホームページにおいて、国の専門調査会想定との対比のもと、分りやすく示されています。

ところで、地震の被害想定とは、東京都の定義によると、「ひとたび想定した地震が発生すると、どのような被害が発生するかを推定」し、防災対策や事業継続計画(BCP)の基礎資料とするものとされています。事業継続計画(BCP)においても、重要な事業の継続を脅かす災害(原因事象)として地震を想定する場合、地震発生時の被害(結果事象)想定を策定する上で極めて有益な情報源となります 。

以下、都の地震被害想定をBCP策定時に活用する際のヒントおよび留意点をいくつか述べたいと思います。

都の地震被害想定‐「Ⅰ本編」および「Ⅲ手法編」のBCPへの活用

都の地震被害想定における被害の想定項目は、地震動(地震による揺れのこと、一般的に地震動自体をも「地震」と呼ぶことが多い)、地盤、建物、人的被害、交通(道路、鉄道、港湾・空港)、ライフライン(電力、通信、ガス、上下水道)、避難者数の推移、帰宅困難者の発生数などが挙げられます。

この内、特に地震動、地盤、建物、道路等については、実態に即した詳細なデータを活用して、区市町村別にもたらす被害を想定した結果となっており、「Ⅰ本編」5章の「想定結果の概要」において、その傾向が項目ごとに簡潔にまとめられています。このため、BCPのリスクシナリオ策定に際して脅威の規模、範囲などをイメージする際の参考資料とすることができます。

また、火災によって被害規模が変動すると考えられる建物、人的被害、ライフラインの被害については、インパクトが最大になると現実的に想定される季節、時刻、気象条件(冬の夕方18時、冬の朝5時、いずれも風速は冬の平均風速の約2倍の6m/s)を基に算定しています。復旧にかかる日数の算定も同条件に基づいています。ただし、都全体ないし区部/多摩地区毎の平均値であるため、必ずしも個別の企業の周辺環境の実勢を表したものではないことに留意が必要です。

一方、「Ⅲ手法編」では、地震動、液状化危険度、急傾斜地崩壊危険度の定義や、建物被害、火災被害、人的被害、交通被害およびライフライン被害と復旧などに関する算定方法の解説が中心になっています。

BCPのリスクシナリオやBCP対策について、より詳細な条件設定をする際の参考情報としての活用が考えられます。

都の地震被害想定‐「Ⅱ資料編」のBCPへの活用

出典:「首都直下地震による東京の被害想定‐Ⅱ資料編」図5「震度分布」- 東京湾北部地震(M6.9、7.3)における震度分布図

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「Ⅱ資料編」には、都地図を用いて、本資料で想定する震源地および破壊される震源断層、地盤のゆれやすさ、液状化の発生可能性の高い地域、震度分布などの各種分布図が収録されています。震度分布などのように、一部の区市町村から、より詳細なハザードマップが別途公開されているものもありますが、本資料は都全体における傾向を一覧できることに意義があると考えます。「Ⅱ資料編」は図1~11から成りますが、その中でも特にご一読頂くと有意と思われるものを以下ご紹介します。

(1)地震動・・・「Ⅰ本編」の5(2)において、地震動の想定がM6.9、7.3いずれの場合も、区部東部を中心とした広範囲に渡って、震度6強となると指摘されていますが、具体的には図5「震度分布」に示されています(東京湾北部地震および多摩直下地震、いずれもM6.9および7.3の場合)。前述の通り、実態に即した詳細なデータに基づく図ということで、BCPのリスクシナリオ策定に際して地震の規模を決定する参考資料とすることができると考えられます。ただし、BCP策定を検討している住所地について、想定されている震度を同地図から読み取るのが難しい場合や、複数の震度が混在する地域である場合 は、都の考え方に則り、区市町村においてより詳細な地震ハザードマップなどが公開されている場合もありますので、併せて活用することができます。
(2)地盤 ・・・地盤に関連して、図2「地盤のゆれやすさ」、図3「液状化の発生可能性の高い地域」、図4「急傾斜地崩壊危険箇所」が公表されていますので、一度目を通して、地勢としてのリスクの有無を把握することもBCP策定を進める上で役立つと考えられます。なお、一部の区市町村では、より詳細なハザードマップが公開されています。

(3)ライフライン被害・・・電力、通信、ガス、上水道、下水道の5項目について、区市町村ごとに想定被害平均をまとめた「Ⅰ本編」の「7-2.ライフライン被害総括表」を地域毎の分布図にしたものが図11「ライフラインの被害分布」です。被害の生じる割合が高いとされている地区内であっても、個別の地点によって条件は異なってくるため、BCP策定に際して、災害時に即ライフラインが全く使えなくなると考える必要は必ずしもありませんが、ライフラインについてどのようなリスクがあるかを大まかに認識しておくことは、実行性の高いBCPを策定するためには有意と考えられます。
 

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