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顕在化するエジプトのカントリーリスク

掲載:2011年02月01日

執筆者:取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介

コラム

2011年2月1日現在、エジプト情勢が極めて不安定です。チュニジアで始まった反政府デモが飛び火する形で始まったエジプトでの反政府デモ。ムバラク大統領への退陣を要求して、エジプト反政府が5万人規模のデモを展開。デモ5日目にして、既に死者は74人に及ぶと言われています。

そして、この情勢不安はビジネスと無縁ではありません。ジェトロ(日本貿易振興機構)によれば、2010年4月時点でエジプトには56社の日本企業が進出しているとのことで、これら企業の一時的な業務中断が次々と報道されています。

・日産自動車: 現地ギザ工場の操業を30日から当面1週間停止
・スズキ: 合弁工場の生産を30日に停止
・住友電気工業: 工場の操業停止
・大塚製薬: 胃潰瘍の治療薬などを生産している工場を操業停止
・ソニー: エジプト国内約50店舗の小売店の営業を中断
・三菱商事、丸紅、伊藤忠商事など大手商社: 事務所を一時休業
・YKK: ラマダン工場の操業を停止

いずれも再開のメドは立っていません。このほかにも、三菱重工は現地出張中の社員(40人)にホテルへの一時待機指示を、ブリジストンは駐在員の国外待避を、また各社、エジプトへの出張予定者には見合わせるように指示を出しているとのことです。今後、被害が更に拡大する可能性は否定できません。

顕在化するエジプトのカントリーリスク

リスクマネジメントの世界では、今回のような「国の政治・経済・社会環境の変化のために、個別事業が損失を被る可能性のこと」をカントリーリスクと呼びます。情報セキュリティマネジメントや品質マネジメントなどとは異なり、自力でコントロールできるタイプのリスクではありません。カントリーリスクは、天災や金融ショックのようにその発生を予測することが極めて困難なものであり、またその発生を抑える手段が限られています。このようなタイプのリスクを管理するためには危機管理や事業継続マネジメント(BCM)の考え方を取り入れることが必要です。

事業継続マネジメント(BCM)は、何らかの理由により重要な業務が中断してしまった際に、それが事業の致命傷とならないように、どうしておくべきかを考え、手を打っておくための仕組みです。今回の件に照らし合わせれば、たとえば、エジプトにある製造工場のラインが停止しても、在庫を1ヶ月分余分に持っておくとか、一時的に違う国にある製造ラインで代替生産を行う、などの対策を打っておくことを考えることです。

こうしたカントリーリスクは、今回のエジプトに限らず、大手企業がコストメリットや未開拓市場を求めて進出するような新興国では比較的高いとされています。思い返せば、隣国中国でも昨年、原材料の輸出規制や日本製品のボイコット運動に発展した事例があります。

サプライチェーンに強く依存する企業は、いつ自社が同じようなリスクにさらされるとも限りません。企業は、今回の事件を決して“対岸の火事”とせず、学習し、自社のリスクマネジメントに役立てることが肝要です。

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