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放射線被害と報道される数値が持つ意味

掲載:2011年04月26日

コラム

2011年の福島第一原発事故で有名になった単位「シーベルト」は、人体への被曝量を示す単位であり、1シーベルト(1Sv)は以下のように表記されます。

1 Sv = 1,000mSv(ミリシーベルト)=1,000,000μSv(マイクロシーベルト)

さて、我々の身の回りで起こる被曝量について、この単位に置き換えて表してみますと、たとえば、以下のようになります。

被曝量(ミリシーベルト) 内訳
0.1 - 0.3 1回の胸部X線撮影
0.2 東京とニューヨーク間を航空機で1往復
1.5 1年間に自然環境から1人が受ける放射線の日本平均
7 - 20 1回のX線CTによる撮像

         

放射線の種類

被曝量は、放射線にも遺伝子に強い影響を与えやすいものや、与えにくいものなど色々あることから、被爆した際に受けた放射線の種類と被曝した時間で総量が決まることになります。ここで言う「放射線の種類」は、大きく“透過力”と“電離作用”の2つの要素の組み合わせで決まります。「透過力」とは“人体を貫く力”であり、「電離作用」とは“遺伝子を損傷させる力”を意味します。特に人体へ大きな影響をもたらす可能性の高い放射線について、その「透過力」と「電離作用」の関係性を示したものを以下に挙げます。

アルファ線の場合は、透過力が非常に弱いので通常の衣服で簡単に防御できます。ベータ線も比較的遮蔽は容易です。しかしアルファ線やベータ線を放射する物質を体内に取り入れてしまう(内部被曝する)と、電離作用は非常に強いので被害は大きくなります。逆にガンマ線の場合は透過を防ぐのは大変ですが、電離作用は弱くなっています。中性子線は透過力・電離作用共に強く、極めて危険です。
 
放射線の種類 透過力(遮蔽できるもの) 電離作用
アルファ線 極めて弱い(紙) 非常に強い
ベータ線 弱い(厚さ数ミリのアルミ板) 強い
ガンマ線 強い(厚さ10センチの鉛) 弱い
中性子線 極めて強い(ただし水で遮蔽可) 非常に強い

総被曝量と健康被害の関係

さて、では何ミリシーベルト被曝すれば、どのような健康被害が出るのでしょうか?広島の原爆研究や1999年の東海村JOC臨界事故(死者2名)の事例から高い被曝量の場合の健康被害は比較的明確になっているようです。以下は、いずれも大量に被曝した場合の事例ですが、被曝者は全員「生体器官の機能損失」により命を落としています。

広島の爆心地で被爆して亡くなった方:一人100,000ミリシーベルト以上

東海村の事故で死亡した2名:それぞれ6,000~10,000ミリシーベルト、および16,000~20,000ミリシーベルト

一方、低い被曝量の場合の被害(ガンや白血病)は、その発生確率は必ずしも明確になっているとは言えません。ある広島・長崎の被爆者に関する研究では、50ミリシーベルト以下の被曝でも発がん率が上昇しているといいます。しかし別の研究では一生の間の総被曝量なら5,000ミリシーベルトでも問題ないとしています(なお、自然放射線のレベルが高い地域とされるガラパリ(ブラジル)での自然界からの放射線被曝は年間10ミリシーベルト程度、1日1.5箱のタバコを吸う喫煙者の年間の被曝量が13~60ミリシーベルトといわれています)。

報道される数字が持つ意味

健康被害との因果関係が明確でない低線量の被曝については、報道では瞬間最大値的な被曝量を「毎時何ミリシーベルト/シーベルトか」で報じる傾向にあります。たとえば2011年4月21日の福島では最大放射線量は、2.00毎時「マイクロ」シーベルト(マイクロシーベルトはミリシーベルトの1/1,000)と報道されました(※)。これは、福島にいる人であれば誰もが浴びる総量・・・という意味ではありません。1時間、衣類を身につけず外に立ち続けることで浴びる可能性のある総量です。仮に、1年間まったく同じ放射線量が放出されるとすると、(24時間365日裸で外に立ち続けていたとして)17.5ミリシーベルトを浴びる換算になります。

17.5ミリシーベルトが持つ意味は何か?

これは前出のとおり、「1回のX線CTによる撮像」程度の被曝量です。

現在(2011年4月)報道されている放射能汚染の状況は油断していいものではありませんが、放射線に関する知識を深め、最新の情報を適切かつ冷静に評価していくことが重要です。

一方で、今まで殆どの組織で想定されていなかった放射線被害が企業のBCPの被害想定のひとつとして加わったことは否めません。

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