地震調査委員会が公表している全国地震動予測地図の意義について、事業継続(BCP/BCM)の観点からまとめました。
全国地震動予測地図とは?
「全国地震動※1予測地図」とは、国民の防災意識の向上および効果的な地震防災対策の促進を”ねらい”として、地震調査研究推進本部※2が、その最新の研究結果をわかりやすく、まとめたものです。日本において、今後数十年間にわたり発生するであろう地震の”発生可能性”と”ゆれ”について、俯瞰的に把握することができるようになっています。
この予測地図は、2005年3月に初めて公開され、その後、毎年のように更新が行われており、2013年1月現在、2012年度版が最新です。
本資料は、PDFとしてダウンロードすることができるだけでなく、オンライン上で動的にデータを閲覧することができるようなサービスも利用できるようになっています。オンラインサービスは、独立行政法人防災科学技術研究所ホームページの地震ハザードステーション(J-SHIS)※3 にて公開されています。
※1. 地震動:”地震のゆれ”を意味します。
※2. 地震調査研究推進本部:平成7年に設置された行政機関であり、文部科学大臣を本部長に据え、地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進について総合的かつ基本的な施策を立案することを目的として活動を行なっています。ちなみに、この機関に関連する組織として、中央防災会議(昭和36年に内閣府に設置)があり、これは防災基本計画および地域防災計画の作成およびその実施の推進を行なうことが活動の主な目的となります。
※3. Japan Seismic Hazard Information Station:http://www.j-shis.bosai.go.jp/
全国地震動予測地図の特徴は?
「全国地震動予測地図」では、大きく「今後の地震の発生可能性(確率論的地震動予測地図)」と「地震が発生した際の”ゆれ”の分布(震源断層を特定した地震動予測地図)」の2種類のデータを確認することができます。
発生確率などの複雑な要素を考慮して算定したものであることから、かなり信頼性が高い情報であるということができます。したがって、たとえば本資料では「今後30年以内に震度6強の発生が予想されるエリアは?」といった疑問に対しての回答を簡単に得ることができます。
【(参考)表: 今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の高い上位5都市】
県庁所在地 | 2012年度版 |
---|---|
静岡 | 89.70% |
津 | 87.40% |
千葉 | 75.70% |
横浜 | 71.00% |
奈良 | 70.20% |
出典: 従来の方法による全国地震動予測地図2012年度版の参考資料(都道府県庁所在地の市役所(東京は都庁)及び北海道の総合振興局・振興局庁舎付近(庁舎位置を含むメッシュの中心位置)において、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(平均ケース))
「全国地震動予測地図」は、先述したとおり「今後数十年間において発生するであろう地震の”発生可能性”と”ゆれ”についての情報を示すもの」であるため、BCPを策定する際にも有益な情報源となります。具体的には、特に、
- リスクシナリオの設定
- リスクアセスメントの実施
- 事業継続戦略の策定(代替拠点の選定など)
などといった活動に対して有効な情報と言えるかもしれません。
ただし、本資料は、あくまでも地震の発生や影響を確率論の観点からとらえたものであり、その予測には限界があることを理解しておくことが必要です。事実、地震調査会は東日本大震災を契機として、地図の有効性やその予測手法、表現方法等について、解決すべき多くの課題が見つかったとして、現在、枠組みそのものを含めた見直しを行なっているとのことです(2012年12月21日公表の「今後の地震動ハザード評価に関する検討~2011年・2012年における検討結果~」を参照のこと)
中央防災会議が出している地震被害想定や関係省庁が出しているハザードマップ資料など、他の関係資料と合わせた活用をしてゆくことが望ましいでしょう。