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耐震構造・制震構造・免震構造

掲載:2011年09月14日

用語集

地震から生じる被害の一つとして建物の倒壊が挙げられます。 建物の倒壊を防止するための構造(工法) として、耐震構造、免震構造と制震構造の3つがあります。東日本大震災以降耳にする機会も多くなりましたが、この3構造(工法)について整理します。

         

耐震構造(工法)

建物の構造自体を堅固に建築することにより強度を高め、地震の揺れに耐えるよう建設する工法です。建物を頑丈な造りにすることにより、地震による倒壊を防止します。

建物の揺れ自体を減少させるわけではないため、建物が損傷する場合があります。見えない構造部分が損傷していることも考えられるので、震災時は建物のチェックや修理が必要となるケースもあります。繰り返し余震が発生したときには倒壊する危険性もあります。建物の内部の揺れも軽減できないため、室内の家具や什器の転倒を防止することはできません。

一方で、費用は比較的安価です。この工法の採用は建築基準法で義務付けられており、1981年の同法改正による新耐震基準(記事末尾、関連記事参照)に準拠した建物であれば、耐震構造で建設されていると考えられます。

制震構造(工法)

地震時に発生する建物の揺れを吸収する装置を設置することにより、地震エネルギーを建物に伝わりにくくして、建物の揺れを軽減する工法です。制震装置は,電気などのエネルギーを用いて揺れを制御するアクティブ型と、動力を使わず物理的な力を制震に利用するパッシブ型に大別できます。アクティブ型にはメンテナンスが必要になります。建物側に装置を取り付けるため、地盤の強度を問いません。

地震による建物の揺れを吸収するため、建物の損傷を抑えることができます。繰り返す地震にも有効で、余震による倒壊の防止にも効果が期待できます。建物内部の揺れも軽減されるため、室内の家具や什器の転倒なども減少します。

後述する免震構造と比較すると、揺れを抑える効果は少ないですが、安価です。

免震構造(工法)

地面と建物の間に専用の装置を設置することにより、地震エネルギーを吸収して地震の揺れを建物に伝わりにくくする工法です。安定した地盤に建設する必要があります。
この工法により地面と建物が切り離されるため、建物のダメージも揺れも大幅に減少します。建物内の揺れが抑えられるため、室内の家具や什器の転倒も減少します。縦揺れには横揺れほどの効果がありません。
建設コストは高価です。さらに、免震装置は定期的にメンテナンスする必要があるため、ランニングコストも発生します。

近年のデータセンターでは必須の工法と言えます。鎌倉の大仏にも同様の仕組みが取り入れられているそうです。
 
工 法 耐震工法 制震工法 免震工法
仕組み 建物の構造自体を強化して揺れに耐える 装置を設置して地震の揺れを吸収する 建物と地盤を切り離して建物に地震の揺れを伝えない
揺れの衝撃感
施工コスト
地震での建具損傷 有り 少ない 少ない
軟弱地盤への適応 不適
メンテナンス 不要 アクティブ型:必要
パッシブ型:不要
必要
被災後の補修 有り 少ない 無し
 
これら3つの工法がどの程度の効果を発揮するのかは、発生する地震の規模や震源からの距離など様々な要因が関係するため一概には言えませんが、コストさえ折り合えば、単純に比較すると地震対策では免震構造に分が有ります。いずれにしても、免震構造や制震構造を選択している建物は、地震に対してより安全性が高いと考えることはできると思います。近頃は「断震構造」という、空気の力を利用して建物を浮かして地震の揺れを断ち切り、地震の揺れから建物を守る構造が、主に住宅向けに開発されています。今後新たな技術が開発される可能性もあります。命を守り、事業を継続するためにも、建設技術には注目していきたいものです。
 
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