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新耐震基準

掲載:2011年04月20日

用語集

新耐震基準は、建築基準法(建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた法律)に定められる設計基準の一つです。

         

新耐震基準は法律上求められる建築構造上のルール

新耐震基準は、以下を目的としたものです。

  • 頻繁におこる大きさの地震に対しては建物の構造に損害がないようにする
  • 滅多に起こらないが大きな地震に対しては、致命的な損害を回避し人命を保護するようにする

なお、「頻繁におこる大きさの地震」とは、おおよそ震度5程度を想定しており、また「滅多に起こらないが大きな地震」とは、おおよそ震度6強から震度7程度の地震を想定したものと言うことができます(但し厳密には、気象庁が定める7段階の震度階を基準として設計するわけではなく、ここでわかりやすく伝えるための、あくまでも目安としての表現です)。したがって、この基準では、仮に震度6強の揺れが発生したとしても、即座に建物が崩壊しないことが期待されます。

ちなみに、この基準が施行された1981年よりも前の、いわゆる旧耐震基準では「震度5程度の地震に対して、即座に建物が崩壊しないこと」が前提となっていました。しかしながら、1978年の宮城県沖地震(M7.4、震度5)で甚大な家屋倒壊被害が発生したことを機に現行の新耐震基準に移行したという背景があります。

新耐震基準の適用対象

新耐震基準は一部の例外(極めて小規模な建物)を除いて、ほぼ全ての建物に適用されます。中でも、比較的大きな建物、具体的には、以下の条件に合致する建造物については、より高い信頼性を確保する必要があることから、新耐震基準にもとづき、より厳格な検証作業(地震による建物の変形具合を検討する、など)を行うことが求められています。
  • 木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500平方メートル、高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの
  • 木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの
  • 高さが13メートル又は軒の高さが9メートルを超える建築物で、その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)を石造、れんが造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造その他これらに類する構造造としたもの

新耐震基準がもたらす実質的な効果

過去の比較的大規模な地震から判断する限りでは、当該基準の有効性は高いものと考えられています。たとえば、震度7が観測された1985年の阪神大震災(M7.3)や2011年の東日本大震災(M9.0)において、新耐震基準で設計された(1981年以降に着工された)建物で、内部にいた人が避難する間もなく建物が崩壊したというケースはほとんど報告されていません。

新耐震基準の落とし穴

新耐震基準は「この基準をクリアして建てられた建物であれば、震度6や7の地震に対して絶対に安全である」ということを保証するものではないことに注意が必要です。

理由の一つは、先述したように「震度6から7に耐えうる」と言っても、“震度”という単位は、あくまでも目安にしか過ぎないためです。実際は、震度を基準にした設計が行われているわけではないため(“ガル”という震度7段階よりも、より細かい指標を基準に設計されているため)同じ震度7の地震であっても、場合によっては、設計上の想定を超えてしまう場合があるわけです。

理由の二つ目は、国が設計上の偽装を必ずしも100%見抜けるとは限らないためです。2005年の姉歯一級建築士が起こした構造計算書偽装問題がいい例です。

理由の三つ目は、この基準は、複数の大きな地震が連続して起こることを想定したものではないことです。先述したように新耐震基準は「(目安ですが)震度6以上の地震が発生しても、即座に崩壊しないこと」を目的の1つに掲げていますが、その表現は“即座に崩壊しない”であって“半永久的に崩壊しない”ではありません。もちろん、現実的には、想定を超える地震が起きても建物が崩れなかったというケースが数多く報告されていますが、「新耐震基準をクリアしているから100%大丈夫」ということではない、ことを理解しておくことが重要です。