マグニチュードとは?震度との違い・数値が1増えると何がどう変わるのか・地震規模の仕組みをわかりやすく解説
| 執筆者: | 取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 勝俣 良介 |
| 改訂者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
マグニチュードとは、地震そのものの規模を示す指標で、地震計で観測された地震波の振幅などから算出される数値です。ニュースなどで耳にすることが多い言葉ですが、「震度」との違いや、数値が1増えると地震の規模がどの程度変わるのかは意外と知られていません。本記事では、マグニチュードの基本的な定義や特徴、算出方法、過去の地震の例をわかりやすく解説します。
1. マグニチュードとは
「マグニチュード」とは、地震そのものの大きさ(規模)を表し、断層運動によって放出されたエネルギーを示す指標です。地震は地下の断層がずれることで発生し、その際に蓄積されていたエネルギーが一気に解放されます。このエネルギーが地震波として伝わり、地震の揺れとして観測されます。マグニチュードは、この地震波の振幅(揺れの大きさ)を基に、対数(log)を用いて算出されます。
気象庁は、マグニチュードについて「マグニチュードは地震の規模を表す指標であり、観測された地震の記録(最大振幅あるいは地震波形全体)を用いて計算される」と定義しています。加えて、「マグニチュードの算出には、地震計の種類や設置環境、観測網の状況などに応じた様々な経験式が用いられており、国際的に統一された規格はないが、最も標準的なものは、モーメントマグニチュードである」としています(※1)。
日本では、過去100年以上にわたり一貫した基準で地震活動の規模を比較・評価できるように「気象庁マグニチュード」(地震時の地面の動きの最大値から計算される変位マグニチュード)と呼ばれる独自の手法に基づいた指標を採用しています。東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)などの巨大地震の場合は、モーメントマグニチュードが用いられることがありますが、基本的には、気象庁マグニチュードの代表値が発表されます(※2)。
マグニチュードは、地震発生後、気象庁が日本全国に配置した地震計の観測データを基に決定・発表されます。これは気象庁が発表する地震情報(震源、震度、長周期地震動観測情報など)の一つです。地震の揺れの強さを表す指標には「震度」をはじめ「カイン(速度)」や「ガル(加速度)」など様々なものがあるため、それぞれの定義や意味を整理して理解することが重要です。
(※1)気象庁「気象庁マグニチュード算出方法の改訂について(平成15年9月17日報道発表)」
(※2)気象庁「地震情報等に用いるマグニチュードについて」
マグニチュードと震度の違い
「マグニチュード」と混同されがちな用語に「震度」があります。両者の違いを比較してみましょう。どちらも地震に関する数値ですが、「マグニチュード」は、地下の震源で地面の揺れを引き起こした地震全体の規模(エネルギー)を表すのに対して、「震度」は、ある場所の揺れがどのくらいだったかを示すもので、各地の揺れ(地震動)の強さを表します(※3)。
「震度」は、地震が発生した際、観測地点に設置された計測震度計により自動的に観測される値です(※4)。そのため、同じ市町村であっても観測地点が異なれば、震度が異なる場合があります。各地の震度が異なる要因としては、震源からの距離や地盤の性質などが挙げられます。地震動は地盤や地形に大きく影響を受けるため、一般的には震源から距離が近いほど、地盤が軟らかいほど震度が大きくなっていきます。
一方、「マグニチュード」は地震そのものの規模を示すため、一つの地震に対して一つの値しか存在しません。ただし、前述したようにマグニチュードには算出方法により様々な種類が存在するため、2011年の東日本大震災では「モーメントマグニチュード(Mw)9.0」、「気象庁マグニチュード(Mj)8.4」と、それぞれの値が発表されています。
なお、地震情報などで発表される「震度」は、観測点の計測震度を「気象庁震度階級表」に照らし合わせ換算したもので、「震度階級(気象庁震度階級)」で表されます(※5)。震度階級は10段階(震度0~4、震度5弱・5強、震度6弱・6強、震度7)に分類されており、平成7年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では、観測史上初めて震度7が記録されました。
2. マグニチュードが1増えると
マグニチュードは、1935年にアメリカの地震学者チャールズ・リヒターが最初に考案したもので、地震の規模を客観的に評価するために導入されました。リヒターは、震源から100km離れた標準地震計で観測された地震波の最大振幅を測り、その数値の対数(log)を「マグニチュード(M)」と定義しました(※6)。
この定義に基づき、マグニチュードは対数スケールで表されるという特徴があります。そのため、数値が1増加するだけで、実際の地震の規模は大きく変化します。
具体的には、マグニチュードが1増えると、地震波の振幅は約10倍になります(※7)。例えば、マグニチュード7の地震は、マグニチュード6の地震と比較して、地震計に記録される揺れの大きさが約10倍に達します。さらに、マグニチュードが2違う場合には、振幅は10倍の10倍である約100倍となります。
一方で、地震のエネルギーの増加はさらに急激です。マグニチュードとエネルギーの関係は対数的に表されており、「log10E=4.8+1.5M」(E=エネルギーの大きさ/M=マグニチュード)という関係式に従います(※8)。このため、マグニチュードが1増加すると、エネルギーは約32倍に増加します。マグニチュード6の地震と比較すると、マグニチュード7は約32倍、マグニチュード8は約1,000倍(約32倍×約32倍=約1,000倍)に相当します。つまり、振幅の増加以上に、地震そのものの規模は大きく拡大することになります。
マグニチュードはこの対数という仕組みによって、非常に幅の広い地震の規模を、比較しやすい数値として表現しています。
(※6)防災科学技術研究所「1.2 マグニチュード」
(※7)U.S. Geological Survey「Earthquake Magnitude, Energy Release, and Shaking Intensity」
(※8)国土交通省中部地方整備局「自分で考え自分の命を守る防災テキスト 用語集」
3. マグニチュードの算出方法
マグニチュードの算出方法は、リヒターにより導入された後、この算出方法に対する種々の補正式が考案され、各国で使用されてきました。現在の日本で主に使われている算出方法は「気象庁マグニチュード(Mj)」および「モーメントマグニチュード(Mw)」です。
近年の巨大地震において、地震波の最大振幅に基づいて算出される「気象庁マグニチュード(Mj)」は、従来の地震計の特性上、正確に地震波を捉えきれず、実際のエネルギーよりもマグニチュードの数値が小さく見積もられてしまう「頭打ち」という問題が生じることが課題として浮き彫りになりました(※9)。
そこで活用されるようになってきたのが「モーメントマグニチュード(Mw)」です。これは揺れの幅ではなく、断層運動の物理的な規模に基づいて計算されるため、巨大地震についても正確に評価できるという利点があります。
気象庁では現在、2つの指標の長所を活かし、状況に応じて使い分けています。それぞれの特徴は以下の通りです(※10)。
- 気象庁マグニチュード(Mj):
速報性(迅速な計算が可能であること)に主眼をおいた指標です。地震発生後数分で発表する第一報などに使用します。地震計で観測される波形の振幅を利用して求めるもので、過去約100年間にわたって一貫した方法で算出されているため、過去の地震データとの比較がしやすいというメリットがあります。他方、巨大な地震(M8を超えるものなど)の規模は正しく求められないというデメリットもあります。 - モーメントマグニチュード(Mw):
気象庁マグニチュードでは求められない巨大地震の規模を表す場合や、第一報発表後に津波警報などを更新するとき、発生した地震が南海トラフや日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の想定震源域に影響を及ぼすか判断する際に使用します。断層運動により起きる岩盤のずれの規模(ずれ動いた部分の面積×ずれた量×岩石の硬さ)をもとに計算されます。物理的な意味が明確で巨大地震の規模も正確に解析できる一方、計算が複雑で、地震発生直後に迅速に求められないのがデメリットです。
地震波は震源に近い観測点から順に届くため、時間経過とともにデータが集まります。より多くのデータを使うほど正確な規模がわかるため、マグニチュードは後からより適切な数値へと更新されます。東日本大震災では、発生直後の速報値では「マグニチュード(Mj)7.9」でしたが、当日の16時に「マグニチュード(Mj)8.4」、17時30分に「モーメントマグニチュード(Mw)8.8」、その2日後に「モーメントマグニチュード(Mw)9.0」と順次更新されました(※11)。
(※9)防災科学技術研究所「1.2 マグニチュード」
(※10)(※11)気象庁「地震情報等に用いるマグニチュードについて」
4. 主な地震とマグニチュード
過去に発生した国内および世界の地震をマグニチュードの観点から整理してみます。
国内の地震
国内の地震で過去最大のマグニチュードを記録したのは東日本大震災(2011年)で、マグニチュード9.0と突出しています。国内では他にもマグニチュード8クラスの地震が多く発生しています(表1参照)。また、阪神・淡路大震災(1995年)はマグニチュード7.3でしたが、死者6,000名超・住家被害(全壊)10万戸超という戦後最大の被害状況(当時)となりました。近年では、震度7の揺れが連続して発生した熊本地震(2016年)も最大マグニチュード7.3を記録しています。
表1:明治以降に日本国内で発生したマグニチュードの大きな地震
| 順位 | 地震名 | 発生年月日 | マグニチュード(M) |
|---|---|---|---|
| 1 | 東日本大震災(東北地方太平洋沖地震) | 2011年3月11日 | 9.0 |
| 2 | 明治三陸地震 | 1896年6月15日 | 8.2 |
| 2 | 十勝沖地震 | 1952年3月4日 | 8.2 |
| 2 | 北海道東方沖地震 | 1994年10月4日 | 8.2 |
| 3 | 昭和三陸地震 | 1933年3月3日 | 8.1 |
| 3 | 択捉島沖地震 | 1958年11月7日 | 8.1 |
| 4 | 濃尾地震 | 1891年10月28日 | 8.0 |
| 4 | 昭和南海地震 | 1946年12月21日 | 8.0 |
| 4 | 十勝沖地震 | 2003年9月26日 | 8.0 |
| 4 | 喜界島地震 | 1911年6月15日 | 8.0 |
気象庁「過去の被害地震」、気象庁「過去の地震津波災害」、地震本部「択捉島南東沖の地震活動」、国土交通省「平成6年(1994年)北海道東方沖地震(10月4日,M8.1)」を基にニュートン・コンサルティングが作成
世界の地震
世界最大のマグニチュードを記録したのがチリ地震(1960年)です。チリ地震ではマグニチュード7~7.5の前震が5~6回続いた後、マグニチュード9.5の本震が起こりました。その後もマグニチュード6程度の余震が続いたとされています。1万7,000km離れた日本でも、チリ地震が引き起こした津波が太平洋沿岸まで到達し、北海道や三陸沖などを中心に100名超の死者を出しています。
表2:世界で1900年以降に発生したマグニチュードの大きな地震上位5位
| 順位 | 地震名 | 発生年月日(日本時間) | マグニチュード(Mw) |
|---|---|---|---|
| 1 | チリ地震 | 1960年5月23日 | 9.5 |
| 2 | アラスカ地震 | 1964年3月28日 | 9.2 |
| 3 | インドネシア、スマトラ島北部西方沖 | 2004年12月26日 | 9.1 |
| 4 | 東日本大震災(東北地方太平洋沖地震) | 2011年3月11日 | 9.0 |
| 4 | カムチャツカ地震 | 1952年11月5日 | 9.0 |
気象庁「地震について」を基にニュートン・コンサルティングが作成
5. まとめ:マグニチュードを理解する意義
マグニチュードは地震そのものの規模を、震度は各地点での揺れの強さを表します。この違いを正しく理解することは、適切な防災対策の第一歩です。マグニチュードが大きい地震ほど、広い範囲で長時間の揺れや巨大な津波が発生する可能性が高まり、直接的な地震被害だけでなく二次災害や複合災害への警戒も必要になります。
地震発生時には、発表されるマグニチュードの数値を参考に、周辺の状況を素早く把握しなければなりません。日頃からハザードマップなどを確認し、近隣でどのような揺れや被害が想定されているかを知っておくことで、いざというときの冷静な判断や避難につながります。また、企業においては、想定されるマグニチュードと被害予測を事業継続計画(BCP)に活用できます。建物や設備の耐震補強、データのバックアップ、代替拠点の確保といった具体的な対策を検討しておくことが重要です。