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医療機関における事業継続(BCP)ガイドライン

掲載:2014年02月05日

ガイドライン

「医療機関における事業継続(BCP)ガイドライン」は、東京都福祉保健局が平成24年7月に発表した医療機関向けBCP策定ガイドラインです。ここで「医療機関」とは、災害拠点病院、災害拠点病院以外の病院(20人以上の患者を入院させるための施設)を指します。このガイドラインは、これらの医療機関が有事の混乱下でも病院機能を提供し続けることができるよう、どのような備えをすればいいのか、その方法を示したものです。

         

ガイドラインの種類と構成

本ガイドラインには、利用者の有用性を考慮して、次の2種類が用意されています。
一般医療機関向け 災害拠点病院向け
大規模地震災害発生時における医療機関の事業継続計画(BCP)策定ガイドライン(PDF) 大規模地震発生時における災害拠点病院の事業継続計画(BCP)策定ガイドライン(PDF)
BCP文書イメージ(Word) BCP文書イメージ(災害拠点病院向け)(Word)
【参考】優先業務概要表(Excel) 【参考】機能維持に係る調査票(Word)

災害拠点病院は災害時に求められる役割も多いことから、一般医療機関のものに比べてガイドラインのボリュームはやや厚めですが、基本構成は非常に良く似ています。参考までに「大規模地震発生時における災害拠点病院の事業継続計画(BCP)策定ガイドライン」の構成を以下に、挙げておきます。


災害拠点病院における事業継続計画
一般的な事業継続計画の概念の取組フローの説明、近年の大震災(阪神大震災、東日本大震災)における病院への被害、ライフライン断絶による建物機能停止等の院内において想定される状況、災害拠点病院におけるBCPと災害対応マニュアルとの関係、本ガイドラインの位置付が記載されている。


災害拠点病院におけるBCP策定の進め方
BCP策定フロー、策定するBCP文書の説明、具体的な進め方を記載。
具体的な進め方は、下記の8Stepである。
Step1:
策定体制の構築
責任者、策定組織の選定。
Step2:
現況の把握
指揮命令系統、人員確保状況、場所・資材確保状況等
現状の把握。
Step3:
被害想定
東京都が想定している被害状況を踏まえ時間別の被害状況と院内の被害状況を想定する。
Step4:
通常業務の整理
優先度の高い業務を整理するために通常業務を列挙し各業務を実施するための経営資源を洗い出す。
Step5:
災害応急対策業務等の整理
災害時に新たに発生する応急対策業務を列挙し、各業務を実施するための経営資源を洗い出す。
Step6:
業務継続のための優先業務の整理
優先的に対応が必要な通常業務と災害応急対策業務を統合し関連業務の並び変えを行い、BCPとして優先業務の設定を行う。
優先業務毎に目標時間・実施レベルの設定を行う。
Step7:
行動計画の文書化
BCP文書イメージの行動計画を参考にし、災害時の具体的な行動の取りまとめを行う。
Step8:
BCP取りまとめ
行動計画について文書化を行い、最終的なBCPとして基本的な考え方等を定める。


災害拠点病院における優先度の高い通常業務・災害時応急対策業務等の内容
情報、体制、診療、搬送、医薬品・ライフライン等の確保及びその他付随業務の具体的な内容を示す。


災害拠点病院におけるBCP実践のための備え
第3章より具体的な内容を記載。


適切なBCPの運用への取組
BCPを着実に実行するための適切な予算化、中長期的な計画等の運用に向けた備え、BCPに基づく訓練・教育、BCPの点検・是正、見直しについて具体的な記載。
出典:東京都福祉保健局

本ガイドラインの特徴

内閣府の事業継続ガイドラインなど一般的なBCP策定ガイドラインに比べ、医療機関特有の項目がいくつも含まれています。また、本ガイドラインが出る前にも、医療機関向けのガイドラインがありましたが、そうしたものに比べても、より細かい情報が掲載されているのが特徴です。

具体的にはたとえば、本ガイドラインには「災害時の医療救護活動のフェーズ区分と必要な活動」という項目があります。これは発災後の状況変化に応じた関係機関の役割分担をより明確にしたものです。発災直後から6時間までを「フェーズ0」、72時間までを超急性期として「フェーズ1」、1週間程度までを急性期の「フェーズ2」、1週間~1ヵ月程度までは亜急性期の「フェーズ3」、3ヶ月程度を慢性期の「フェーズ4」、3ヶ月程度以降の中長期を「フェーズ5」と分けて、行政、病院、診療所・医療救護所ごとに必要な稼働を記載しています。

災害時の医療救護活動のフェーズ区分と必要な活動

本ガイドラインの主な利用者と利用方法

本ガイドラインは、BCP策定のガイドラインであることから、当然ながら医療機関におけるBCP策定者に有用です。図表や(簡易なものではありますが)様式などもついているので、BCPのイメージをつかめる、という意味では、病院のマネジメント層にも参考になるでしょう。ただ一方で、ステップバイステップの策定マニュアルではないので、このガイドラインさえ読めば、必要な情報やノウハウを手に入れられるわけではないということに留意が必要です。また、既にお持ちの緊急時のマニュアル(例:トリアージマニュアル等)をどのように取り込むかは、策定する病院側で検討しなければいけません。ですので、あくまでも、参考書として活用することが望ましいでしょう。

なお、実際には、BCP策定経験者をはじめ、病院長を中心とした各部門長をメンバーとした策定体制を整えてBCP策定に臨むことになります。

ちなみに東京都内の災害拠点病院は、平成25年3月末までに東京都へ病院BCPを提出しています。既にBCPを策定していた災害拠点病院では体裁を整えて提出しましたが、BCP未策定の災害拠点病院は、急遽提出用に策定した経緯があります。そのため実効性のある病院BCPにするため見直し作業が発生します。その際、本ガイドラインを使用することも有効になります。
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