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ガイドライン

PAS200

2012年01月05日

PAS(※)200とは、企業の“クライシス(危機)への対応力”を向上させることを目的として、イギリス政府(内閣府事務局)およびBSIが2011年9月に発行した規格です。

PAS200という規格は、その正式名称が「PAS200:2011 クライシスマネジメント-ガイダンスおよびグッドプラクティス」なっていることからも分かるとおり、いわゆる企業においてクライシスマネジメント(危機管理)体制を構築するための参考書とも言えるものです。

※PAS: Publicly Available Specification (一般仕様書)の略であり、IS(International Standard)化の前に暫定的に公開されるものです。IS化は通常、プロセスが長期間にわたるため、未完成であっても、早めに公開をして広くあまねく、組織が標準化の恩恵をうけることができるようにすることを狙いとするものです。

クライシス(危機)=想定外の事態

PAS200ではクライシス(危機)を次のように定義しています。

「組織の戦略目標、評判、または存続への脅威となる、本質的に異常、不安定、かつ複雑な状況」

わかりやすく言えば、クライシス(危機)とは“想定外の事態”であり、市民暴動や従業員の死亡、企業スパイ、または自然災害などを指します。

遭遇した事態が“想定内”なのか“想定外”なのかは、企業の考えや行動に依存するため何であるのかを一義的に明確化することはできませんが、具体的には例えば、アメリカのハリケーン・カトリーナ災害(2005年8月)、BP社のメキシコ湾オイル流出事故(2010年4月)や東日本大震災における津波・原発事故の同時被災(2011年3月)、イギリスの暴動(2011年8月)などを挙げることができます。

危機対応と事業継続の違い

PAS200では、対象とする事態を“クライシス(危機)”と呼び、一方、事業継続マネジメントの代表規格であるBS25999やISO22301では、対象とする事態を“インシデント”(※)と呼んでいます。規格の定義に基づけば、クライシス(危機)は先述したように“想定外の事態”ですが、インシデントは“(ある程度)想定できる事態”と解釈することができます。

事業継続マネジメントでは、必ず特定の事態(例:従業員が突然、半分近く出社できなくなった場合など)を想定して事業継続計画(BCP)を策定しますが、クライシスマネジメントは、そもそもこうした事業継続計画(BCP)の抜本的な見直しを迫られるような想定外の事態への対応を求められることになります。
※インシデント: 事業の中断、損失、緊急事態、またはクライシスである状況またはこれらに至る可能性のある状況(BS25999-2:2007より)

PAS200の構成

PAS200は全7章(+補足資料)から構成され、このうち後半の3~7章が規格の核となる部分です。

3章「クライシスの理解」では、「クライシス(危機)」という言葉の定義について丁寧に(規格全体の1割以上のスペースを割いて)解説しています。

4章「クライシスマネジメント能力の開発」では、クライシスマネジメントシステムという枠組み(フレームワーク)を図で示すとともに、このフレームワークを企業に導入する際の3つのポイントについて触れています。なお、その3つとは「戦略的コミットメント」、「人的資源」、「構造およびプロセス」であり、とりわけ「構造およびプロセスの構築」について、導入の際の推奨事項や役立つツールの紹介を行なっています。

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【図:クライシスマネジメントのフレームワーク (PAS200:2011より)】

5章「クライシスへの対応と復旧の計画及び準備」には、実際に企業がクライシス(危機)へ遭遇した際の対応や復旧、準備について、マネジメントに望まれる推奨事項が書かれています。5章では、予め準備しておくべき計画書の中身、人員配置や招集のあり方、人員を率いるリーダーに求められる資質について言及するなど、前章がクライシス(危機)対応全体の基礎的な考え方に終始していたのに対して、比較的具体的な内容となっています。

6章「クライシスにおけるコミュニケーション」では、文字どおりクライシス(危機)が発生した際におけるコミュニケーション戦略や計画のあり方について言及しています。なお、ここで言うコミュニケーションには、内部・・・すなわち従業員などに対する情報発信のみならず、外部の利害関係者やメディアへの対応が含まれます。

7章「クライシスマネジメント能力の評価」では、企業のクライシス対応力を向上させるための方法について述べています。具体的には、訓練や演習、他事例からの学習などについてです。

PAS200の対象者はあくまでもトップマネジメント

PAS200では規格の利用対象者として明確に「トップマネジメント」をうたっています。トップマネジメントとは企業の中でクライシス(危機)への予防や対応の全責任を追う立場にある人のことです。

実際に規格の中で紹介されているツール類はトップマネジメントを意識したものが多く、また全体的に戦略的・概念的な記述にとどまっていることから、主として“クライシスマネジメントを浅く広く理解したい”という人・・・すなわち、トップマネジメントを意識した規格である、ということができます。

なお、PAS200では「マネジメントシステム構築導入の現場の責任者にもメリットがある」としていますが、そういった方は、むしろ、ISO22320(記事下部、関連記事)を参照されたほうが望ましいでしょう。

(文責:勝俣 良介

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