リスク管理Navi
リスク管理Naviは、リスクマネジメント(Risk Management)に関しての情報サイトです。
TIS 様
お客様 |
管理本部 副本部長 兼 リスク統括部 部長 竹生 智 様 管理本部 リスク統括部 エキスパート 古田 理 様 管理本部 リスク統括部 セクションチーフ 安川 秀敏 様 管理本部 リスク統括部 エキスパート 上野 信哉 様 |
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ニュートン・コンサルティング |
エグゼクティブコンサルタント 坂口 貴紀 チーフコンサルタント 大久保 活水 |
TISインテックグループに属するTIS様は、創業50年以上の歴史をもつ国内大手の総合ITサービス企業です。金融、製造、流通、サービス、公共、通信など幅広い業界に向けて、システム・インテグレーションやシステム開発をはじめ、アウトソーシング、コンサルティング、クラウドサービスなど、多様なITソリューションを提供されています。
今回は、ここ数年のERM(全社的リスクマネジメント)の改善の取り組みを振り返るとともに、今後の展望について、管理本部 副本部長 兼 リスク統括部 部長 竹生 智 様、管理本部 リスク統括部 エキスパート 古田 理 様、管理本部 リスク統括部 セクションチーフ 安川 秀敏 様、管理本部 リスク統括部 エキスパート 上野 信哉 様にお話をうかがいました。
竹生:当社は、金融、製造、流通、サービス、公共、通信業界など、多岐にわたるお客様3,000社以上へITサービスを提供しております。特に金融・決済分野に強みがあり、クレジットカードの基幹システム開発においては国内市場で約50%のシェアを、ブランドデビットカードのサービス提供/システム開発では約80%のシェアを占めています。
また、当社グループは59社のグループ会社をもち(2025年7月1日時点)、各分野に強みを持つ企業のM&Aにより規模を拡大しながら、国内外での事業を積極的に展開しています。海外では中国、タイ、アメリカ、ベトナム、シンガポールに拠点を有しており、グループ企業とシナジーを生み出しながら、ボーダレスにサービス提供ができる点にも強みがあります。
竹生:当社グループでは一層のERM強化を図るべく、2021年にTIS内にリスク統括部を設置しました。同年からニュートン・コンサルティングのサービスを導入し、初めてERM成熟度評価を実施したところ、主に2つの課題が明らかになりました。
1つ目は、「ERMが体系的ではない」ということでした。リスク一覧や影響度の指標などはすでに定めていたものの、それらを統合して活用する仕組みが不十分だったのです。2つ目に、ニュートンさんから「ERMの成熟度アップのために、もっとトップ層を巻き込むべき」と指摘を受けました。当時はどちらかというと、ボトムアップ寄りのリスクマネジメント体制でしたが、経営層と現場の双方向によるリスクマネジメント体制を整えることが重要であると学びました。
そこで、この4年間で次のように、段階的にERMの実効性向上を追求してきました。
古田:STEP1では、まず国内グループ会社の各社ERM事務局向けの研修を実施し、取り組みを推進する仲間を増やすことから始めました。
STEP2では、カテゴリ1と位置付けるグループの主要事業会社の社長へのアンケート・ヒアリングを実施し、グループ全体で注視すべき重点管理対象リスクを整理しました。また、グループ会社のERMを個社レベルで改善するために、各社社長への勉強会を実施したほか、社長によるトップリスクダイレクションの仕組みを導入・展開。さらには、国内グループ会社事務局向け研修を半期に一回行うようになりました。
STEP3では、前年度の活動サイクルを継続実施。その上で、キープレイヤーのさらなるリスク感度向上を通じて、グループ全体のリスク管理能力の向上を図りました。また、活動の活性化のため、成果発表会を年に一度のペースで行うようになりました。海外展開においては段階的な成熟度評価の実施と、経営層向け勉強会などに取り組みました。
STEP4では、各社社長と事務局の力量向上について手応えもあり、第二ライン部門への本格的な研修の展開に取り組みました。そのほか、全従業員向けのe-learningの実施、将来に向けたリスク選好に関する検討に着手。さらには4年間の取り組みパフォーマンス評価のため、国内グループ会社を対象に、2021年度に実施したERM成熟度評価を再度実施しました。
安川:以前は各社が独自の手法でリスクマネジメントに取り組んでいましたが、「各社の社長には必ずインタビューやERM研修を実施する」という仕組みを導入したことで、各社の社長がより体系的かつ高度な知見を習得し、グループ共通のフレームワークのもとでERMに対応できるようになりました。
また、各社のリスク担当者や現場社員にも、半年ごとに研修やe-learningを行う仕組みに刷新し、経営層以外のレイヤーにおいてもリスク管理能力を底上げしました。このような取り組みを通して、ボトムアップとトップダウンの両面からグループ全体のERM体制を強化することができました。
国内グループ会社のリスク担当者向け研修は、回を追うごとに難易度を上げています。各社の事務局も、反復的に学ぶことで知識だけでなく自信もついてきたようで、リスク対応に関する報告は、より具体的かつ高精度なものになってきていますね。
昨年、3年ぶりに実施した二度目の成熟度評価では、前回に比べて各項目の評点が大幅にアップしました。この4年間の取り組みを通じて一人ひとりの意識が変わり、それが結果に結びついたのだと思います。
竹生:ニュートンさんから「リスクコミュニケーションの活性化につながります」とアドバイスを受け、2023年度に国内グループ各社のリスク担当者が一堂に会する成果発表会を実施したのですが、予想以上の発見が得られました。成果発表会に大きな意義がある、というのは新たな気づきでしたね。
まず、成果発表会という場がなければ、各社の取り組み・過程を知る機会もないので、インシデントなどの問題が起きた時には「この会社はちゃんと対策していたのか?」と責めるだけになってしまいます。しかし、こうした場があれば、「普段から各社では、リスクを防ぐためにこのような活動をしているのだ」ということが可視化されます。さらに好事例やノウハウをシェアすることで、グループ全体で前向きにERMに取り組むことができます。加えて、グループ内のリスク担当者が交流し、会社の垣根を越えて課題を共有する機会にもなります。今では、成果発表会は大変好評な恒例イベントとなっていますし、この取り組みのおかげで、グループとしてのリスクマネジメント力が加速度的に向上していると感じています。
上野:毎回研修を行った後は、参加者アンケートの結果を読み込んだ上で、次回以降の訓練設計に臨んでくれていますよね。その真摯な姿勢が心強いです。
また、スケジュール管理が徹底されている印象です。「この議題についてはもう何度か触れてきて、皆さん慣れてきたので、打ち合わせのウエイトも軽くしましょう」など、時には柔軟に対応してくださるのもありがたいです。
そして、型にはまったコンサルティングではなく、当社の風土やその都度の現状に見合ったプランを提案してくれます。この4年間で当社がERMの成熟度を上げることができたのは、ニュートンさんが私たちに適切な道のりを示してくれたおかげだと感じています。
古田:海外のグループ会社におけるERM成熟度向上にも、今後力を入れたいと考えています。海外のグループ会社の場合はM&Aが多く、既存の会社との人的交流がない状態であり、各社にそれぞれの組織風土が根付いています。さらに海外企業となると、その国・地域特有の文化もあるため、当社グループのERM体制を定着させることに難しさを感じているのです。この点は、引き続きニュートンさんと一緒に模索していきます。
※取材は2025年5月に実施。記事内の所属先および役職名は、プロジェクト当時のものです。
名称 | TIS株式会社 |
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所在地 | 東京都新宿区西新宿8丁目17番1号 |
創業 | 1971年4月28日 |
設立 | 2008年4月1日 |
事業内容 | システム・インテグレーション、システム開発、アウトソーシング、コンサルティング、クラウドサービス等の事業を展開 |
利用サービス | ERM構築/再構築・改善サービス |
エグゼクティブコンサルタント
坂口 貴紀
TISインテックグループが実現した「人を起点としたERM」への進化
「人を忘れた経営からは良質な企業活動は決して生まれません」
TISインテックグループ様のWEBサイトを覗くと基本理念である“OUR PHILOSOPHY”の説明があります。すばらしく確立された理念・メッセージの中でも、個人的に特に目を引いたのがこの言葉です。
研修後のアンケートの回答率は8割を超え、自由記述欄にはたくさんのコメントをいただきます。そのコメントからは仕組みをより良いものにしていきたいという強い想いが感じられます。
グループの経営者の方、事務局の方、第二ラインの方など少なくとも200名以上の方々と接触をさせていただいた中で私が感じたのは、「オネスト」「オープン」「パイオニアリング」といったグループが掲げるスタイル、グループらしさとしての価値観がお一人お一人に一貫して浸透している組織だということです。
本プロジェクトの最大の成果は、TISインテックグループらしい企業カルチャーを最大限活かした「人を起点としたERM」に進化させることができたことです。一方、グループの皆さまは新たな課題を捉え、未来に向けたさらなる改善のためのアクションを起こされています。「人を起点としたERM」への進化が、グループのERMの継続的改善、すなわち永続的な発展につながるものと確信しています。