21ヶ国を対象としたITガバナンスの実態調査を公表(ITGI)

掲載:2011年07月01日

執筆者:執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント 内海 良

コラム

IT Governance Institute(以下ITGI)よりGlobal Status Report on the Governance of Enterprise IT (GEIT) 2011が公表されました。これはITGIが定期的に実施しているもので、今回で4度目のレポート公表となります。

今回は、ビジネスを成功に導くITのあり方、経済不況のITへの影響、IT部門の外部委託、ソーシャルネットワーキング(SNS)、そしてクラウドコンピューティングを切り口として、計39の質問項目からなるアンケート結果がレポートにまとめられています。

*レポートについてはITGIのウェブサイトからダウンロードすることが可能です。(英語のみ。記事下部関連リンク参照)

         

広範囲を対象としたアンケート

このITGIによるレポートがユニークな点はアンケートの対象とその規模です。
グローバルというレポートの名前からもわかるとおり、幅広い対象に対してアンケートを実施しています。

【アンケート対象】
  • 834名の経営者もしくはIT責任者
  • 21ヶ国(*)
  • 10業種
  • 中小企業および大企業
*国名は表記されていないものの経済発展の目覚ましいBRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)は含まれているとのこと。また日本語で実施されたとの記述もあることから、日本企業も対象となっていると思われます。

【アンケート項目の内訳】
7項目: 回答者に関わる質問。役職や組織構成など
11項目: 企業内でのIT戦略に関わる質問。ITの役割、現状の課題と今後の予定など
12項目: 企業内で利用しているアプリケーションについて
9項目: 外部委託やクラウドコンピューティングなど現在興味のあるトピックについて

アンケート項目はその時のトレンドを加味する必要があるため、毎回変更となりますが、前回のものと同様のものが含まれる場合も多く、その場合は前回と比較した傾向分析も結果としてレポートに表記されています。

結果が示唆するITガバナンス力の向上

レポートには様々な結果がグラフ形式で解りやすく紹介されていますが、その中で特徴的だったものをいくつかピックアップしてみましょう。

「ITのトップが経営陣の一員となっているか」という質問に関しては、大企業の77%がYesと回答しています。中小企業でもYesの回答が71%を超えており、経営とITの関わりはより深くなっていることが示唆されています。

また「過去1年間で発生したITの課題はなにか?」という質問に対してITコストの増加(38%)、ITスタッフの不足(34%)、ITスタッフのスキル不足(31%)がトップ3に挙げられています。この結果を2008年のものと比較すると、変化が顕著に見てとれます。2008年度では課題として投資利益率(ROI)を挙げる企業が41%もいたのですが、今回は19%と大きく減少しています。この結果からITガバナンスが着実に根付いてきていることが見て取れます。

「ITガバナンス構築に際し、どのフレームワーク/ガイドラインを参考にしているか」という質問については、ITIL/ISO20000が28%で1位、IS27001が21%で2位、Six Sigmaが15%で3位となっています。2008年度と比較すると、Six Sigmaが2%から15%へと大きく数値を伸ばしているのに対し、Cobitは14%から12.9%と数値を落としています。ITIL/ISO2000は24%から28%と数字を伸ばし、着実にIT業界に浸透してきているようです。

最後にITガバナンス導入後の効果について見ていきましょう。

「ITガバナンスが企業にもたらした結果はなにか?」という質問に対し、IT関連リスクの減少が42%、ITとビジネスサイドの関係改善が39.6%、ITコストの改善が38%という結果となっています。ITガバナンス導入後に効果を実感している企業は多いようです。

他にも「IT関連プロジェクトを途中で中断した理由はなにか?」など、特徴のある質問に対する結果がまとめられています。

地域特性はあえて省いたレポート内容

このレポートの対象21の国という話は冒頭で書きましたが、レポートを見る限り地域特性は見て取れない内容となっており、残念ながら日本企業の立ち位置がどこなのかということはわかりません。ただITガバナンスに関しては海外先行、日本追随の傾向が強く、グローバルマーケットで海外企業と伍していくには、ITガバナンスのあり方も問われてくると思われます。今回のレポートはグローバル展開を視野にいれいている企業には示唆に富んだ内容といえると思われます。興味のある方には一読ををお勧めいたします。
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