インフルエンスオペレーション

掲載:2024年02月07日

用語集

インフルエンスオペレーションとは、虚偽情報やデマの拡散などを通じて、世論や標的の意見・行動に影響を与える活動のことです。近年、インターネットやSNSの普及により、サイバー空間を利用した情報操作が容易となりました。インフルエンスオペレーションは民主的な意思決定の妨害や、社会の分断を引き起こす脅威として認識されています。

         

インフルエンスオペレーションの目的と手法

インフルエンスオペレーションは、国家や政治組織、民間企業、個人など、さまざまな活動主体によって行われます。その主な目的は、以下のとおりです。

  • 世論を操作して政治・経済・社会に影響を与える
  • 特定の人物や組織を攻撃して権力や影響力を弱体化させる
  • 社会不安や混乱を煽って国家の安定を脅かす
  • 特定の企業や商品の宣伝を行う

実行者はこうした目的を実現するため、以下のような手法を用います。

  • SNSやフェイクニュースを使った虚偽情報の拡散
  • SNSの偽アカウントやボットによる意見の操作
  • ハッキングや情報のリークによる標的の信用低下や世論の誘導
  • マスメディアを利用した情報操作

また、近年はディープフェイク*や標的の行動解析など、AI技術を使ったより巧妙かつ効果的な手法が広がり、その脅威が高まっています。

*AI技術を使用して、実在する人物の顔や声をリアルに模倣した偽の動画や音声を生成する技術

インフルエンスオペレーションの事例

公安調査庁の「サイバー空間における脅威の概況 2022」および、情報処理推進機構(IPA)の「サイバーレスキュー活動状況」では、近年のインフルエンスオペレーション事例として、以下が紹介されています。

発生年 内容
2020年 アメリカ ロシア・イラン・キューバなどが、アメリカの社会的分断を企図して大統領選挙への干渉を試みたとされている
2020年 台湾 新型コロナウイルスに関連して、中国本土から「台湾の医療制度が崩壊」との偽情報が拡散されたとして台湾当局が調査
2021年 日本 台湾のセキュリティ業界や台湾政府に対する信用を損なうことを目的としたフェイクニュースや偽の公式文書を観測
2022年 ウクライナ ロシアのウクライナ侵攻に対して、ゼレンスキー大統領が降伏を表明するディープフェイク動画が流布されている

アメリカ大統領選や新型コロナウイルス、ウクライナ侵攻など、誰もが知る出来事の裏でインフルエンスオペレーションが行われていることがわかっています。

インフルエンスオペレーションへの対策

インフルエンスオペレーションに対しては、国家、組織、個人のそれぞれのレベルで異なるアプローチの対策が必要です。

  • 法規制の強化や国際協力
  • インフルエンスオペレーションの脅威に関する教育や啓発
  • 情報操作の検知・対策技術の開発
  • 国民の情報リテラシー向上

個人がインフルエンスオペレーションに煽動・利用されないためには、情報リテラシーを高めることが重要です。日頃から、以下のような意識・姿勢で情報に接するようにしましょう。

  • インターネットやマスメディアの情報を鵜呑みにしない
  • 複数のソースから情報を得る
  • 感情に流されず冷静に判断する
  • 裏付けのない情報をSNSなどで安易に拡散しない

インフルエンスオペレーションは、社会の安定を脅かす脅威となり得ます。一人ひとりが意識を高めて対策を講じることが重要です。