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コラム

静岡県小山町の国土強靱化地域計画

2016年08月01日

コンサルタント

齋藤 香織

国土強靱化地域計画とは、国の国土強靱化基本計画に基づいて、各地方公共団体が地域の強靱化(致命的な被害を負わない「強さ」と迅速に回復する「しなやかさ」をもつこと)を目指して策定する計画です。 地域防災計画がリスクを特定し、それぞれのリスクに対する対応を計画しているのに対し、国土強靱化地域計画は、あらゆるリスクを見据えつつ、多くの人命が失われるなど最悪の事態に陥らないよう、その対策について計画しています。 (詳細はNavi記事「国土強靱化地域計画」

現在、国の主導で策定が推進され、2016年6月14日現在で31都道府県と18市町村が国土強靱化地域計画の策定を完了しています。

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小山町HPより

静岡県小山町について

静岡県小山町は、富士山の山麓に位置し、「金太郎生誕の地」でもある風光明媚な町です。豊富な湧水と緑豊かな自然環境から田園風景が広がる一方、眼前にそびえる富士山や富士スピードウェイ、あしがら温泉など観光資源も多くあります。

一方で、日本の多くの地域と同様、過去には自然災害による被害をこうむってきました。このため、小山町では以前から南海トラフ巨大地震の被害想定を踏まえて「小山町地震対策アクションプログラム2013」(2013年度策定)を策定するなどして、 防災・減災、町民の安心・安全の確保に取り組んできました。

また、静岡県の防災・減災と地域成長を両立させた「内陸のフロンティア」を拓く取組みに呼応し、「三来(みらい)拠点事業」を展開するとともに、2015年10月には「小山町まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定するなど、将来に向けた取り組みも多く行っています。

今回、これらの多岐にわたる取組みに加えて、国土強靱化という視点から、更に地域の発展と強さ・しなやかさに資するため、小山町では、2015年11月に、町長を委員長とする小山町地域強靱化計画策定委員会を立ち上げ、小山町国土強靱化地域計画の策定を始めました。 委員会は、国のナショナル・レジリエンス懇談会委員、静岡県の危機管理部の職員、町の副町長と部長等で構成し、内閣官房よりオブザーバーを迎え、事務局を小山町町長戦略課が担いました。 また、委員会の下には幹事会を設置し、町の個別施策について最も理解が深い関係部署の課長等が直接携わり、短期間であっても担当部課全体が協力して計画の策定を進めました。

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小山町HPより

国土強靱化地域計画策定の5STEP

国土強靱化地域計画の策定について国は、「国土強靱化地域計画策定ガイドライン(第3版 平成28年5月)」を定め、策定の基本的な進め方として5STEPを推奨しています。 小山町でも、本ガイドラインの5STEPに則って国土強靱化地域計画を策定しました。

【STEP1 目標の明確化】

小山町では、国の4つの基本目標を参考にいかなる災害が発生しようとも、

  1. 人命の保護を最大限図る
  2. 地域社会の重要な機能の致命的な障害の回避及び維持を図る
  3. 町民の財産及び公共施設に係る被害の最小化を図る
  4. 迅速な復旧復興を図る

という基本目標を設定しました。また、事前に備えるべき目標として、9つの目標を設定しています。 国のガイドラインにある8つの目標を参考にしつつ、静岡県国土強靱化地域計画の目標に倣い、9つ目として「防災・減災と地域成長を両立させた魅力ある地域づくり」を掲げています。 これは、先述の「三来拠点事業」の取組みの基本的な考え方であることから、目標として設定しました。

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小山町国土強靱化地域計画より 小山町地勢図

【STEP2 リスクシナリオの設定・強靱化施策分野の設定】

小山町では、想定する自然災害として、駿河トラフ・南海トラフや相模トラフ沿いの大地震、富士山噴火、土砂災害等を想定しました。 これは、静岡県の被災想定においても、南海トラフ等の大地震は被害が甚大になると想定されていることや、小山町が過去の富士山噴火において被害を受けたこと、 直近の台風による山腹崩壊や河川の氾濫等により、流域集落等が大損害を受けたこと等、地域の特性と過去の被災経験に基づいています。

災害によるリスクシナリオの設定については、国の基本計画における45の起きてはならない最悪の事態(リスクシナリオ)を参考とし、 小山町の地域特性を踏まえた34の起きてはならない最悪の事態を設定しました。小山町の地域特性とは、たとえば、小山町が内陸に位置するため巨大地震が起きても津波による被害がないことや、 町内には関東と関西を結ぶ重要な東名高速道路や国道246号が走っており噴火や土砂による遮断を回避しなければならないことがあげられます。 そして、強靱化施策分野の設定については、上記で定めたリスクシナリオに対し、「小山町総合計画」における4つの基本目標に基づき設定しました。 これは、国土強靱化地域計画をあらゆる計画の最上位計画として位置づけたことと、施策分野を総合計画と合わせることで、現在の個別施策の取組みについて、後述の施策プログラムや横との連携を意識しやすくするためです。

【STEP3 脆弱性の分析・評価、課題の検討】
脆弱性の分析については、まずSTEP2で設定した強靱化施策分野と、現状実施しているあるいは今後実施予定の個別施策についてマトリクスにして分析を行い、 リスクシナリオごとに施策プログラムを設定しました。たとえば、小山町のリスクシナリオ「(1)地震による建物等の倒壊や火災による死傷者の発生」については、 4つの施策分野がすべて該当します。うち環境・都市基盤という施策分野からは、住宅の耐震化率向上、健康・福祉・危機管理という施策分野からは、 地域消防力の確保というように複数の個別施策を組み合わせてプログラムとしました。 

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表1 小山町リスクシナリオマトリクス(一部抜粋)

そして脆弱性を評価するために、個別施策の実施状況について数値化をしました。前述の住宅の耐震化率であれば、平成26年度末現在で77%、という数値が脆弱性評価の対象になります。 また、これが次のステップの対応方策の検討でプログラムごとのKPIにもなります。 STEP3は、リスクシナリオ別に町としての脆弱な事項を網羅し、既存の個別施策や新規施策に照らし合わせるということが非常に重要です。

小山町では、幹事会を立ち上げたことで、施策の洗い出しやその個別施策の現状や数値目標の設定について、各担当部課の協力を得られ、また顔を合わせて検討や議論を行うことで漏れなく施策プログラムを設定することができました。 STEP3の最後に脆弱性評価の結果として、複数のプログラムに共通するなどの特に配慮すべき重要な課題として次の4つが浮かび上がりました。 ①事前復興の視点を取り入れた安全・安心で魅力ある地域づくり、 ②超広域災害に備えた地域防災力の強化、民間との連携、 ③地域交通ネットワークの機能や代替性の確保、 ④魅力ある地域づくりです。 4つの課題に共通するのは、町民の命を最優先とすること、官民一体となって経済的にも強いまちづくりを目指す点です。

【STEP4 リスクへの対応方策の検討】

国の基本計画では、リスクシナリオごとの最悪の事態を回避するためにプログラムの推進方針を設定することになっていますが、 小山町では具体的に「町・民間事業所・町民」が、それぞれどのような取組みをするかを明らかにし、またSTEP3で数値化した現状値について、 更に取組の進捗度・達成度を定量的にはかれるよう、施策の目標を数値化しました。 たとえば、前述の住宅の耐震化は、「町は住宅の倒壊による死傷者を出さないために、補助金制度の周知等により住宅の耐震化率向上を図り」、 一方で「町民は、補助金制度の活用による自宅の耐震性評価や耐震工事を行ってください」と役割と取組内容を具体的にあげました。 また、目標値として平成26年度末77%の耐震化率を、平成31年までには90%とする目標を掲げました。

【STEP5 対応方策についての重点化、優先順位付け】

対応方策の重点化について小山町では、町の役割の大きさ、影響の大きさと緊急度の観点から、12の重点化すべきプログラムを選定しました。 事前に備えるべき目標から見ると、主に(1)人命の保護と(2)迅速な救助・救急、医療活動等の2つの目標に関するプログラムが重点化されています。 小山町では、国土強靱化地域計画に掲げたプログラムの進捗状況等を踏まえ、必要に応じて継続的に見直しを行うことを計画に明記し、 外部委員を含めた専門委員会で協議していただき、計画の推進とその見直しにより町を「強靱化」をしていくことで、町民の皆さんの安心・安全につながる計画を策定しました。

込山正秀 小山町長からのコメント

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小山町では、平成27年度国のモデル調査実施団体に選ばれ、国や県等の御支援をいただき、平成28年5月に「富士山頂のあるまち、金太郎生誕の地にふさわしい元気で、強く、安全な地域社会の実現」を基本理念とする、「小山町国土強靱化地域計画」を策定しました。この計画は、私がマニフェスト(政策提言)に掲げている「防災日本一のまちづくりを進める」を実現させるための計画であり、他市町に先駆けて策定できたことは、当町の防災・減災に対する強い意気込みを表せたものと考えております。 今年度からは、計画に掲げた施策を具体的に推し進める段階となります。その1つとして、本計画の最重要目標である、「人命の保護」を図るため、木造住宅の耐震化を促進して参ります。 今後も、本計画に掲げた施策の進捗状況を把握しながら、様々な世代の町民の方々が元気に、安心して暮らせる環境を整備して参ります。

国土強靱化の今後の展望

国土強靱化地域計画は、地域防災計画と異なり、自治体に策定が義務付けられているものではありません。 しかし、地域防災計画と違って、国土強靱化地域計画の主体には、地方公共団体にとどまらず、地域の民間事業者や住民が含まれます。小山町では、地域柄、防災・減災への取組みを積極的に行っていることもあり、 日ごろから指定公共機関や民間事業者との災害時協定の締結や、県際(けんぎわ)の他市町村と協力体制を構築するなど行政が中心となって、 町の防災・減災、そして事前復興の体制を築いています。今回の国土強靱化地域計画を策定する過程で、より広く町内外との顔が見える関係を築けたことも強靱化を促進するものとなりました。 また、国土強靱化計画の策定により、国からの補助が受けられるようになりますので、ハード面の強靱化がより一層期待され、地域住民の方の安心につながると考えられます。

なお、弊社では、地方自治体様の地域特性に応じ、客観的立場であるが故に見えてくる想定外のリスクという視点や、 5STEPのそれぞれのフェーズに、ERM・BCP策定のご支援から得た独自のわかりやすいリスクアセスメントの知見やノウハウをプラスして、ご支援をさせていただいております。

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