太平洋津波警報センター
掲載:2013年08月20日
執筆者:コンサルタント 伊藤 隆
用語集
太平洋津波警報センターはハワイのオアフ島にあり、アメリカ海洋大気庁(日本の気象庁にあたる)が運用する津波警報システムの中核機関で、太平洋地域の地震・津波の監視及び情報発信を行っています。本センターは、1946年にハワイやアラスカに165人の犠牲者を出したアリューシャン地震とそれに伴い発生した津波を受けて1949年に設立されました。その後1967年にはアラスカ・カナダ及びアメリカの西海岸地域の地震・津波を監視する西海岸・アラスカ津波警報センターが下部組織として設立され、それぞれの地域を分担する形となりました。
太平洋津波警報システムの国際間協力の動き
太平洋津波警戒・減災システムのための政府間調整グループは、その後も太平洋地域に地域津波警報センターの設置を検討していました。それに対し日本の気象庁は、北西太平洋地域におけるその役割を担うことを提案し、グループからの合意を持って2005年3月28日から情報の提供を開始しました。これが現在の北西太平洋津波情報センターで、太平洋津波警報センターの下部組織として北西太平洋地域を分担しています。この関係を図で表すと図1のようになります。
北西太平洋津波情報センターの役割と提供情報
北西太平洋津波情報センター(気象庁)は、北西太平洋地域において大きな地震(マグニチュード6.5以上)が発生した場合に、関係各国の気象・水文管轄省庁に対して北西太平洋津波情報を提供します。提供する情報の内容は以下になります。
これらの情報は、中国、韓国、フィリピン、インドネシア、ベトナム、マレーシア、タイなど11ヶ国に提供されています。
- 地震の発生時刻、震源の位置、マグニチュード、推定される津波の発生可能性の有無
- 指定された沿岸地点における津波到達時刻及び高さの予測値の提供
- 北西太平洋地域のリアルタイム潮位データ及び津波が観測された場合の観測値の提供
これらの情報は、中国、韓国、フィリピン、インドネシア、ベトナム、マレーシア、タイなど11ヶ国に提供されています。
参考情報 その他の地域における国際間協力の動き
ユネスコの政府間海洋学委員会は、他の地震・津波発生危惧地域への同様な地域津波警報システム設立の調整を進めており、既に以下三つの地域での設立が決定されています。
- インド洋津波警報システム
2004年12月に発生した、22万人を超える死者・行方不明者を出したインドネシア・スマトラ島沖大地震によるインド洋の広範囲への大津波を教訓とし、それらの地域をカバーするインド洋津波警報センターをインドネシア、インド、オーストラリア3か国が独自で開発し、2011年10月に情報提供を開始しました。それまでは暫定的な支援措置として、日本の気象庁と米太平洋津波警報センターが、インド洋向けの津波情報を提供していたとのことです。 - 地中海及び北東大西洋津波警報システム
2005年6月に設置された地中海及び北東大西洋津波警戒・減災システムのための政府間調整グループは、同地域津波警報センターの設置を決定しました。その後2011年8月16日付で国連センターより、警報システム用の通信ネットワークのテストが成功裏のうちに完了し、センター設立への重要な一歩が刻まれたと報道されています。 - カリブ海津波警報システム
2008年3月にメンバー国の代表団による会議がパナマで開かれ、カリブ海津波警報センターを2010年までには設置する旨の決定がなされたとのことです。しかし2011年3月25日の報道によれば、メンバー国33ヶ国が参加し、警報システムの演習が行われたとのことです。