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「事業継続ガイドライン 第3版」 ―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―(平成25年8月 内閣府 防災担当)

掲載:2014年04月08日

執筆者:執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント 内海 良

ガイドライン

内閣府が発行する事業継続ガイドラインが平成25年8月に改訂されました。

         

事業継続ガイドラインとは

防災の視点からBCPの重要性と普及啓発を促した第一版、あらゆる組織に適用できる形にし、定着にも力点を置いて改訂した第二版を経て、今回の第三版は平常時の取組みとしての事業継続マネジメントの普及促進とあらゆる危機的事象を対象とすることに力点を置き、改訂されています。
策定時期 目的
第一版 平成17年8月 企業・組織の災害時における事業継続計画(BCP)の策定促進
第二版 平成21年11月 ガイドラインの実用性向上
第三版 平成25年8月 企業・組織の平時からの事業継続マネジメント(BCM)の普及促進災害教訓、国際動向の反映

当ガイドラインの構成

本ガイドラインは34ページの本文と付録、別添チェックリストから構成されています。
構成 概要
序文 本ガイドラインの概要 本ガイドライン全体の概要
本文 Ⅰ 事業継続の取組の必要性と概要 事業継続の取組に関する基本的な事項及び事業継続の取組みを行う必要性やメリット
Ⅱ 方針の策定 事業継続マネジメント(BCM)の基本方針の策定及びBCMを策定・実施するための体制の構築
Ⅲ 分析・検討 有事に継続すべき重要業務やそれを復旧すべきかなどを分析する「事業影響度分析」及び優先的に対策を検討すべきリスクを特定する「リスク分析・評価」
Ⅳ 事業継続戦略・対策の検討・決定 重要業務を復旧すべき時間内に復旧・継続させるための事業継続戦略
Ⅴ 計画の策定 BCMにおける計画の策定及び文書化
Ⅵ 事前対策及び教育訓練の実施 計画に従った事前対策及び教育・訓練の実施
Ⅶ 見直し・改善 BCMの見直し・改善について
Ⅷ 経営者及び経済社会への提言 企業・組織の経営者及び経済社会に対し、事業継続に取り組むことの重要性及び取り組む上で考慮すべき事項に関する提言
付録 用語の解説 本ガイドラインに関する用語の解説
参考文献 本ガイドラインの策定・改訂にあたり、参考とした文献の一覧
別添 チェックリスト 事業継続の取組の達成状況を確認するためのチェックリスト

第二版と比較すると、第三版でのポイントとしては、1)利害関係者および経営者/層の視点の導入、2)平時の事業継続マネジメントの取組、3)様々な事象に対応するリスク分析・評価の手法、の3つが挙げられます。

1. 経営者/層、理解関係者の視点を導入
第二版でも経営者/層のBCPへの関与に対する重要性は触れられていましたが、第三版ではより明確にその姿勢が打ち出されています。それは「経営者に求められる事項」として、BCP/BCMへ取り組む前段階で経営者が理解しておくべきことが個別の項目として記載されています。それは経営理念やビジョンとの整合、時間と労力の投資の必要性、BCM活動に経営者として積極的に参加することの重要性、予想を超えた事態が発生した場合の既存BCPを活用した対応、などが求められています。また構築後の見直し・改善の項目でも、経営者よる見直しや、継続的改善への関与などが明確にうたわれています。加えて基本方針の作成として、利害関係者や一般社会からの要求・要請の整理も第三版で新たに追加された視点と言えます。

2. 平時の事業継続マネジメントの取組
平時の事業継続マネジメントへの取組として、実施体制の構築という項目が追加されています。これはBCP/BCM構築時もさることながら、構築以降も解散せず、事前対策及び教育・訓練、継続的な見直し・改善を推進する役割を担うことが記載されています。またこの体制の統括責任者が改めて経営者であることも明記されています。

3. 様々な事象に対応するリスク分析・評価の手法
リスク分析・評価の手法も第二版から大きく変わったポイントです。第二版では「地震被害を想定する」としてとりわけ地震被害を想定する際のポイントが記載されていましたが、第三版では、さらに詳細なリスク分析・評価手法が記載されています。地震としてはじめから決め打ちせず、①事業中断につながる可能性のある「発生事象の洗い出し」、②発生事象について、その発生可能性と影響度を可視化し優先順位づけする「リスクマッピング」、③自社の経営資源や調達先、社会インフラの影響を想定する「発生事象によるリスクの詳細分析」となっています。より論理的かつ具体的な手法が記載されており実用性が向上しています。

すでにBCP策定が完了した組織にも有用

前述したとおり、平時の運用に重きを置いた内容となっています。これはBCPを策定した企業・組織がさらに取組を一歩進めるための改訂とも見てとれます。とくにBCP策定済企業が役立つと思われるポイントは巻末のチェックリストです。第二版でもチェックリストはありましたが、よりBCP/BCMが企業・組織活動として定着し、役立つことを念頭に置いたチェックリストとなっています。BCP未策定企業も策定済企業も一度目を通すことを強く推奨いたします。
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