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ガイドライン

建設BCPガイドライン

2011年08月29日

2010年4月 社団法人日本建設団体連合会 発行

このガイドラインは首都直下型地震を想定し、内閣府中央防災会議の『事業継続(BCP)ガイドライン』に準拠する形で作成されました。2006年7月に社団法人日本建設業団体連合会にて第1版が作成され、同年11月に第2版が発表されました。内容は2部構成となっており、第1部が基本編でBCPのあり方の解説。第2部は実践編で、内閣府の『事業継続ガイドライン』に沿って、取組みの項目毎に具体的な事例も含めた解説が記載されています。また、補足資料として、モデル企業を設定した文書構成の具体例が提供されています。

なぜ建設業にBCPが必要なのか

被災地での復旧活動の様子を、私たちがテレビで目にするとき、印象に残るのが自衛隊の活躍です。

日頃の訓練を活かし、てきぱきと効率よく作業をこなしている姿は実に頼もしく、感動的です。しかし、自衛隊が支援活動を開始するためには、その場所へ到達するための道が必要です。これらは多くの場合、地元の建設業者がいち早く行動して整備しているのです。

大規模災害が発生したとき、インフラ復旧工事の早期実施が社会全体の早期復旧に直結します。有事における建築物の被災状況調査や復旧支援など、建設会社が担い手となる事業活動そのものが社会から期待されていると言ってよいでしょう。

建設BCPガイドラインは「自社の危機管理体制強化」といった、一般的に業種を問わず企業に求められる目的のみではなく、災害時、建設会社が事業継続することを社会的使命と位置付け、それが実現できるよう、平時から災害時に備えた活動を推進するための手引きとして生まれました。

建設会社におけるBCPの特徴(応急業務への対応)

ガイドラインでは、例えば、建設会社が災害時に緊急に実施する建物や道路等の応急復旧工事などは、「平常時の業務の継続」というより「災害後に新たに発生する業務への対応」ととらえるべきであるとしています。その上で、建設会社におけるBCPは平常時の業務である「通常業務の継続」と、災害後に新たに発生する「応急業務への対応」に分けて考えることが特徴であるとされています。

災害時において新たに発生する応急業務は、規模の大小を問わず顕在化します。当然、並行して通常業務も継続する必要があります。これを別個の業務として切り離し、個々の作業レベルに展開して優先順をつけると混乱が起きにくくなるでしょう。建設業以外の企業では、建設業ほど応急業務のウェイトが高くはないものの、あてはまるケースもあると考えます。その観点から参考にしてみると、自社の取り組みをより向上させることができるでしょう。

建設BCPの策定

建設BCPガイドラインは内閣府中央防災会議の『事業継続ガイドライン』をベースに作成されていることは冒頭でお伝えしました。では、事業継続計画の策定手順について、建設BCPガイドラインでは、どのような特色があるかに着目して見てみましょう。

1) 影響度評価

通常業務の中断に対し、企業としてどの程度耐えられるかの判断を行います。この際、建設BCPでは施工中現場の工期延長、重要得意先への早期接触といった、平常時業務に対する分析の他に、インフラ復旧工事や支障物撤去作業などの応急業務に対する分析、評価が求められるとされています。後者の場合は政府の評価や社会的評価なども影響度の尺度になり得ます。

2) 建設会社における重要業務

重要業務の一つとして「インフラ復旧工事等への迅速な対応」が挙げられており、行政側主導の場合は要請に対応できる体制整備が求められ、自主的に復旧工事を推進する場合は、まず自社周辺の主要インフラ被災状況を調査し、迅速に復旧工事に取り掛かる必要があるとされています。この他「自社施工物件の被災状況確認と施主の復旧支援」、「施工中現場の早期再開と品質管理」が例として挙げられています。

3) 建設会社における目標復旧時間

通常業務では顧客や施工物件の情報管理の目標復旧時間ゼロを目指すとされています。これは一般企業とあまり相違がなさそうですが、建設BCPでは、応急業務において、まずそれに取りかかるまでの時間(目標開始時間)を設定することが推奨されており、インフラを被災前の状態に戻すまでの時間ではないことがポイントです。

4) ボトルネックへの対応

重要業務の目標復旧時間や応急業務の目標開始時間を設定後、それを実施するにあたって、障害となる要素(ボトルネック)を洗い出します。ガイドラインでは、ボトルネックへの対策を、短期間で解消するものと時間を要するものに分け、前者についてはボトルネックが解消された想定で計画を策定し対策も速やかに実行する。後者についてはボトルネックの存在を前提とした計画を策定し、対策を実施し始めたら、解消度合いに応じて、計画の見直しに反映させることを推奨しています。

5) BCPの策定

内閣府の『事業継続ガイドライン』では計画策定において、以下5項目が重要な施策として列挙されています。

1. 指揮命令系統の明確化
2. 本社等重要業務拠点の機能確保
3. 対外的な情報発信及び情報提供
4. 情報システムのバックアップ
5. 製品・サービスの供給関係

この他、事業継続とともに求められるものとして「生命の安全確保と安否確認」が重要施策とは別に設定されています。一方、建設BCPではこの「生命の安全確保と安否確認」を計画の第一項目に位置付けている点が大きな違いです。人的資源の損失に対する危険性を意識し、可能な限りそれを回避する計画の策定や災害時の初動対応においては人命救助を最優先とするなど、建設業界特有の考え方が反映されています。

また、「5. 製品・サービスの供給関係」については建設業における事業の形に合わせ、「インフラ復旧工事への対応」、「施工中現場への対応」、「竣工物件への対応」に置き換えています。さらに「協力会社との連携」が事業継続計画に欠かせない事項として新たに追加されています。

建設業以外の企業にとっても有効なBCPガイドライン

ここまで見てきて、建設BCPガイドラインは事業継続計画として基本的な部分はしっかり押さえつつ、建設業界特有の、社会的要求を考慮した要素が盛り込まれたものであることが、お分かりいただけたと思います。業界を問わず、災害による事業の中断にはできれば直面したくないものですが、もし回避することができないのであれば、災害時にこそ、その企業特有の価値を発揮できる新たな業務がないか、考えてみるのもBCPの方針を策定する際のひとつのポイントではないでしょうか。たとえば、物流、医療、情報インフラなどに従事する企業は、災害時において社会からの期待値が大きいといえるでしょう。そのような観点でBCPを検討する際、当ガイドラインは建設業を営む企業にはもちろん、他の企業が参考にしても、多くのヒントを与えてくれそうです。

(文責:高橋 篤史

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