事例紹介: 多摩火薬機工株式会社

多摩火薬機工株式会社 BCP策定プロジェクトメンバーの方々。火薬を扱うため安全確保は最重要課題です。今回の取組で3歩先を行く対策ができました。

-事業内容を教えてください。

火薬類の販売、発破工事、非発破工事、調査業務の4本の柱で事業を行っております。建造物の基礎部分のコンクリートなどの硬い構造物の破壊において、当社の提供する無公害、振動・騒音を低減した破砕工事には定評があります。また当社の強みは、従来の「火薬を使って物を壊すこと」だけではなく、火薬を利用して建設工事のための杭基礎調査を行うことまでサービスとして提供していることです。

-今までの防災対策を教えてください。

今までは最低限の防災対策しかしていませんでした。当社は事業の性質上、火薬取締法の準拠が求められているので、今までもこれを遵守するという前提で必要な処置は行っていました。しかし、法律に定めてあるのは取り扱い方法や保管方法などに関する簡単な規定ですので、今となってはとても十分な対策ではなかったと感じています。

-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。

多摩火薬機工 代表取締役 児島 郁男 氏
多摩火薬機工株式会社
代表取締役 児島 郁男氏

実は7月に不審者が火薬庫の敷地内に不法侵入するという事件がありました。幸いすぐに気が付き警察に通報し、何も問題は発生しなかったのですが、その際に、何か問題が起きたときの業務マニュアルが社内にないということに気が付きました。今回も実際に警察を呼ぶ際に近隣の高尾警察署に電話をしたところ、110番に電話をしないと対応ができないと断られ、初動対応が非常に遅れる、という事態がありました。

危険物を扱う業者としてこの状態は良くないと思っていたところに、東京都がBCP策定支援事業を始めたとのニュースをみました。「BCP」という言葉は聞いたことがなかったのですが、当社としては火薬という人が触れないものを扱っている業者ということで、近隣住民の安全確保を第一に考える必要があること、他の業種以上に高い意識を持ち続ける必要があるので、早速申し込みました。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

今回当社は水害に対するBCPを策定しました。地理的条件から考えて地震よりも水害の方が発生可能性が高く、尚且つ被害状況が深刻であろうと考えたからです。

当社では有事でも火薬類の販売を継続するための対策を構築しました。現在2ヶ所の火薬庫を利用しているのですが、その設備面での増強計画と有事の際の運用方法の見直しをいたしました。

設備面での増強というのは、火薬庫の裏手にある斜面の土壌補強です。水害時に崖崩れがおこらないようにコンクリートで固めるという案があるのですが、この方法は非常に高価であるだけでなく、地主との調整なども必要になるので、長期的に取り組んでいきたいと考えています。

火薬庫の運用方法の見直しでは、平常時と有事の際の運用方法をかえることにしました。平常時は2ヶ所の火薬庫を使い勝手の良い方法で利用するのですが、有事の際には、事業継続に必要な火薬類をより安全な方の火薬庫に事前に運搬することで、水害の被害を最小限に抑えることを目標にしています。当社が今回想定しているリスクは水害なので、連続降雨量がある一定数値を超えたら火薬庫内の物品整理を行うという仕組みを考えました。

また、災害時の連絡体制としては18名の社員に対しては社長自ら全員に安否確認を取ることにより効果的な事業継続策が遂行できるよう心掛けていきます。

【BCPの概要】

対象事業火薬類の供給
対象リスク水害
被災シナリオ水害による第二火薬庫の倒壊
事業継続策2火薬庫体制を1火薬庫体制にて火薬の供給を継続
備考危険物取扱に関する法令等に留意

-策定プロセスで何か気付きはありましたか?

一つ一つが発見でした。当社は中小企業ですので、いつも金儲けのことだけ考えているわけです。でも、今回は今まで考えていたのと180度違う視点から金儲けについて考えさせられました。つまり、「事業を継続すること」こそ金儲けなのだ、ということです。今までの考え方は、利益を追求する傍ら最低限必要なものだけ守ればいい、ということであったと思います。しかし、今回の取組で、積極的に3歩くらい進んだものを取り入れ防衛する、というふうに意識があがりました。

何かあった時には他社が動けなくても、当社は1日でも2日でも早く対応を開始できる、事業を再開できることのメリットを感じています。

また、BCP策定による期待効果としては、社員の事業に対する意識の向上や、災害時の早期の事業復旧による社会的地位の向上及び企業のイメージアップと競争力の強化が考えられます。

多摩火薬機工 代表取締役 児島 郁男 氏

-取組を検討中の企業へメッセージをお願いします。

経営者の方には「何かあった時に平常の業務に戻すには何をすれば良いのかを考えたことがありますか?」とお尋ねしたいですね。実際、私は今まできちんと考えてこなかったと実感しました。会社を経営している限り、自己防衛は必要です。何かあった時に社員やその家族を守らなくてはなりません。人命はもちろん大切ですが、会社がなくなってしまえば生活していけなくなってしまう。そういう備えが企業には必要だと、私自身伝えていきたいと思っています。

関連サービス詳細

プロジェクトメンバー

代表取締役児島 郁男 氏
主任児島 辰彦 氏
業務課長小澤 勉 氏
会社情報
称号: 多摩火薬機工株式会社
本社所在地: 東京都八王子市小津町135番地5
設立: 1970年5月
資本金: 2,000万円
従業員数: 18人
代表者: 代表取締役  児島 郁男
事業内容: 火薬類の販売、発破工事など
URL: http://www16.plala.or.jp/tbecjp/

(2010年9月末日現在)

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