経済産業省は2025年5月14日、「サイバーセキュリティ人材の育成促進に向けた検討会最終取りまとめ」を公表しました。
有識者から成る「サイバーセキュリティ人材の育成促進に向けた検討会」は、国内のサイバーセキュリティ人材が不足している現状などを踏まえて、今後の対策を議論しました。また、これまで一定の効果を生み出している既存の施策の拡充・改善をベースとして、実際に政策ニーズを有する組織へのヒアリングも実施しました。その上で5月に政策対応の方向性がまとめられました。
本報告書は、今後の方向性を3つ示しています(①セキュリティ・キャンプの拡充②登録セキスペの活用促進③中堅・中小企業などにおける人材確保策の提示)
まず①について、セキュリティ・キャンプとは、世界に通用するトップクラスの人材を育成・発掘する取り組みのことです。本報告書によると、単純拡大ではなく、人材の裾野を広げるという観点から、AIなど特定の専門性と高度なサイバーセキュリティの知見の双方を兼ね備えた人材を育成するために、新たに「セキュリティ・キャンプ コネクト」が行われる予定です(2026年春ごろ)。また、2025年度中には修了生向けコミュニティの活動が始まります。
このような取り組みを通して、サイバーセキュリティの最前線で活躍する「トップガン」人材の育成規模を現状の2倍以上に拡大させ、セキュリティ人材としてのキャリアをより魅力的かつ持続可能なものにする狙いです。
②について、「登録セキスペ」とは情報処理安全確保支援士のことで、セキュリティに関する専門的な知識・技能を備えた国家資格を持つ人材です。検討会は、「登録セキスペアクティブリスト」 (個社の状況に応じた個別相談・支援が可能な登録セキスペをリスト化したもの)を整備しました。2025年度中には運用を開始する予定で、中小企業とのマッチングなどに活用させる方針です。
③について、検討会は、中小企業にむけてセキュリティ対策の内容・人材確保・育成策のポイントを段階的に示した「人材確保・育成の実践的方策ガイド」をβ版として整理しました。今後は、このβ版の実証や事例調査を通して内容をブラッシュアップし、正式な実践ガイドとして成案化する方針です。
②③のような試みによって、セキュリティ人材の活躍の場を増やす狙いがあります。また、これまで「十分なコストがかけられない」「人材を内部で育てられない」「外部に人材が見つからない」などの理由でサイバーセキュリティ対策が進められていなかった中小企業でも、適切かつ効率的に人材を確保・育成できるようにする狙いです。
そして、本報告書によると、2025年4月時点で2.4万人となっている登録セキスペの人数を、2030年までに5万人にする目標も掲げられています。