行政でのAI利活用推進と行政通則法の両立に向けてガイドライン策定へ、調査研究会が中間整理をとりまとめ 総務省
総務省は9月22日、「行政通則法的観点からのAI利活用調査研究会」がとりまとめた中間整理を公表しました。行政手続きの現場において、法的なリスクが不明確なためにAI利用を躊躇している実態がうかがえると指摘、円滑かつ適正なAI利活用が進むようガイドラインを策定することや、行政通則法の観点から許容されないAI利活用を「ガードレール」(法的な限界線)として示すことが必要だとしました。
行政通則法とは、行政手続法や行政不服審査法、情報公開法など、行政に共通する法制度の総称です。そして行政通則法的観点からのAI利活用とは、これら法律の目的である国民の権利利益の保護や行政の公正性・透明性の確保といった意義が損なわれないようにしつつ、行政の現場でAI利活用を進めていくための視点を指します。
行政手続法や行政不服審査法、情報公開法は、行政機関による処分などについて救済手続きや説明責任を規定しています。これは国民の権利利益の保護、行政の公正性確保・透明性向上を目的としています。しかし、AIを活用した場合、判断過程がブラックボックス化するなどして、これらの目的が損なわれるリスクがあります。そのため、調査研究会ではまず実態調査を行い、それを踏まえて今後の検討方針をとりまとめました。
実態調査によると、現在の行政機関におけるAIの利活用は、職員の判断を助ける「補助的な利用」が中心であるとわかりました。処分性のある業務にAIを直接活用している事例は見られなかったと報告されています。
現時点では、AI利活用が補助的な利用にとどまっているため、行政通則法上の課題は顕在化していません。しかし今後は、生産年齢人口の減少に伴い公務の担い手不足が深刻化するため、行政機関においてもAIの利活用は不可避であり、AI技術の革新的な進展に伴いAI活用が拡大すれば、行政通則法上の課題が顕在化すると示唆しました。
中間整理では、こうした現場での慎重な利活用の実態と課題認識を踏まえ、ガイドライン策定を優先的に検討すると記しました。具体的には、行政通則法の観点から許されないAI利活用の限界線を「ガードレール」として明確化し、その内側での積極的な利活用を後押しする方針です。
ガイドラインでは、導入可能なAIと禁止されるAI、導入可能な業務、導入時に対応すべき事項、残すべき記録などの目安を整理します。また、行政通則法の観点から違法・不当となる利活用の態様や、ただちに明文の条項には抵触しないものの法の趣旨に反する利活用などを整理するとしています。
さらに、現下の想定とは異なる新たな行政通則法的課題が顕在化する可能性に言及、将来的な備えとして検討課題の芽出しを行うと記しました。AI活用によって可能になる新しい行政サービスやユースケースを想定し、ルールの規範形式(ハードロー/ソフトロー)および担保方策(事前統制、事後救済、監督をどう組み合わせるか)などについて検討すべきとしました。