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ガイドライン

ITIL

2011年11月20日

ITIL( Information Technology Infrastructure Library)とは、英国商務局(OGC)がITサービスマネジメントに関するベストプラクティスをまとめた、その名のとおり書籍群(Library)です。ITIL導入の究極の目的は「顧客に提供するサービス品質の向上」が挙げられますが、その過程では以下のような様々な導入効果が期待できます。

  • IT運用プロセスの可視化→運用業務の効率化
  • 問題発生の原因追究→ITに関わるインシデント、問題発生の減少
  • 投資対効果の把握→ITシステム運用に関わるコストの低減、など
例を挙げると、ITILのインシデント管理では、サービスデスクが受けた問い合わせ内容は逐一記録されます。記録することにより、問い合わせ数と時間から作業量を定量的に把握することができ、適切な人員計画の立案が可能となり、ひいてはコスト削減や品質向上へとつなげることができます。

ITILの歴史

現在広く普及するに至ったITILですが、その歴史は古く、初版となるV1は1989年に発行されています。以降、不定期に改訂され、現在はITIL 2011が最新版として発行されています。
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そもそものITILの始まりは、当時の英国政府がITサービスに関し課題を抱えていたことにあります。投資対効果が得られていないことを問題視した英国政府が、課題解決のためにITサービスに関する体系的なガイドラインの策定を行い、そのガイドラインに準じたサービス提供を取引業者に求めることにとしたのです。このガイドラインがITIL V1であり、V1は40冊を超える膨大なものでした。

このITIL V1が2000年前後にかけて大幅な改訂が加えられ、40冊余りの書籍が7冊にまとめられました。これがITIL V2です。 このITIL V2からITILはグロバールスタンダードとして広く普及するに至ります。

そして、2007年5月、ITIL V3が発行され、2011年7月に、ITIL V3にさらに改訂をくわえたITIL 2011が発行されました。但しITIL 2011は言葉の整合性などに主眼を置かれたV3のマイナーアップデートにとどまり、大きな変更はありません。

ITILの特徴

前述したとおり、ITサービスマネジメントに関するフレームワークはCOBITやCMMなど数多く存在します。

その中でITILが特徴的なのは、ITに焦点を絞ったフレームワークということが挙げられます。ITに焦点を絞っているという点では、ITシステムの運用管理部門のみでの導入が可能なフレームワークといえるでしょう。
フレーム
ワーク
特徴
ITIL 質の高いITサービス管理を提供するためのベスト・プラクティスを集めたフレームワーク。ITシステムとその運用管理を業務の遂行を手助けする「ITサービス」ととらえ、サービスを要求に応じて適切に提供すること、高い投資対効果で継続的に改善していくことを目指している。
Cobit ITガバナンスを確保するためのフレームワーク。「リスク」という概念を中心に、ITを積極活用できる体制づくりの指標を提示し、IT投資の評価、ITのリスクとコントロールの判断、システム監査の基準などに使われる。
CMM IT組織のソフトウェア開発プロセスの成熟度を5段階で評価する品質管理基準。
主にスケジューリングやマネジメントの能力を評価するモデルで、マネジメントが成立していないレベル(レベル1)からプロジェクトの最適化を図れるレベル(レベル5)まで、5段階に分かれている。

ITIL V3/2011の構成

ITIL V3/2011は、サービスストラテジ、サービスデザイン、サービストランジション、サービスオペレーション、継続的サービス改善の5つのコア書籍から構成されています。
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※ITILコア書籍を基に当社にて作成

•サービスストラテジ
どの顧客に対して、どのようなITサービスをどのように提供するかといった方針を中長期的なスパンでまとめたもの。サービスストラテジのプロセスには、財務管理、需要管理、サービスポートフォリオ管理があり、ITサービス全体をビジネスニーズに合った形で提供するための戦略を立てることに重きを置いています。

•サービスデザイン
サービスストラテジで明確にしたビジネスニーズや戦略を反映したITサービスの設計手法についてまとめたもの。サービス設計では、サービスに必要な要素が一通り含まれるようにプロセスが設けられており、サービスカタログ管理、サービスレベル管理、キャパシティ管理、可用性管理、ITサービス継続性管理、情報セキュリティ管理、サプライヤ管理が含まれています。

•サービストランジション
新規もしくは変更されたサービスの運用段階への移行をスムーズに行うための手法をまとめたもの。ITサービスはこの段階で、変更管理、サービス資産管理および構成管理、リリース管理および展開管理、サービスの妥当性およびテスト、評価、ナレッジ管理というプロセスが含まれています。

•サービスオペレーション
ITサービスの提供を効果的に行うための手法をまとめたもの。ここでは、イベント管理、インシデント管理、問題管理、要求実現、アクセス管理、サービスデスク、技術管理、IT運用管理、アプリケーション管理という機能が含まれています。

•継続的サービス改善
ビジネスニーズの変化などに合わせ、ITサービスやITサービスを支えるプロセスや機能の維持、改善についてまとめたもの。7ステップの改善、サービス報告、サービス測定、サービスレベル管理といったプロセスにより構成されています。

V2からV3/2011への一番大きな変更点は「設計、開発、変更、リリース、運用、改善、廃棄に至るプロセス全体をカバーするライフサイクル・モデルを採用したことです。このライフサイクルの観点を軸に構成が再整理されました。上記の図からも判るとおりライフサイクルの中心となる「継続的サービス改善」がサービスストラテジ、サービスデザイン、サービストランジション、サービスオペレーションを包括する形で定義されています。

もう1つは、サービスストラテジが充実したことが挙げられます。V2はITの運用管理に主眼を置いたベストプラクティスでしたが、V3/2011では「そもそも運用管理を行うトリガーとなるものは何なのか」という観点から、ビジネス戦略がIT運用に反映される仕組みがサービスストラテジという一冊にまとめられています。

V3/2011に改訂されたことを受け、より企業活動を支えるフレームワークとして進化を遂げたといえるでしょう。

※個々のプロセスの内容については、ITILNaviの用語集をご参照ください。

ITILの活用方法

すべてのバージョンを通していえることですが、ITILにはベスト・プラクティスは列挙されていますが、実装する方法については言及されていません。導入する場合には、常に自組織に照らし合わせ、どの部分を導入し、どのように実装するのか詳細に検討する必要があります。但し自組織の規模や業種によって実装方法に傾向はあります。有識者からのアドバイスや他者の事例を参考にしつつ導入することをお勧めします。
 

(文責:内海 良

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