2010年5月31日に「地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会」から『地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会報告書』が公表されました。本報告書は、現代においての「地震発生時の望ましい退避行動のあり方」についての研究成果をまとめたものです。
今回、このような研究がなされるにいたった背景には、そもそも「地震発生時の退避行動のあり方」について、環境の変化のスピードに比例した形での見直しがこれまで十分に行われて来なかったことがある、と報告書では述べています。
実際、「グラッときたら火の始末」などといった標語に代表されるような、もはや我々の体に染みついていると言ってもいい「避難行動のあり方」のベースは、1930年に策定された「地震に出会ったときの心得」にあります。
「地震に出会ったときの心得」10箇条
「地震に出会ったときの心得」10箇条とは、以下の通りです。- 我が身と家族の身の安全
- グラッときたら火の始末、火が出たらすばやく消化
- あわてて外に飛び出さない
- 窓や扉を開けて出口の確保
- 戸外では頭を保護し危険なものから身を避ける
- 百貨店・劇場などでは係員の指示に従う
- 自動車は左側に寄せて停車、規制区域では運転禁止
- 山崩れ・がけ崩れ・津波に注意
- 避難は徒歩で、持ち物は最小限に
- デマで動くな、正しい情報で行動
アップデートが必要な「地震の心得」
今回の研究成果によれば、上記10箇条において、いくつか見直すべき項目があることが分かっています。たとえば「(2)グラッときたら火の始末、火が出たらすばやく消化」ですが、技術革新が進み自動で火を消す装置が普及した現代にいたっては「まず火を消すのではなく、身体の保護を第一に考えて行動するべき」である、ということを指摘しています。このように、本報告書では様々な角度と過去の地震時における人間の行動データから、上記10箇条の有効性について検証した結果をまとめているものですが、企業が考えるBCPの観点からは、この「退避行動のあり方」はインシデントマネジメントプラン(初期初動対応)に位置するものであり、地震発生時に人間がとるべき最初の重要なアクションの指標になるものです。企業の方が、普段、首からぶら下げて持ち歩くポケットカードを策定する際にも考慮に入れたい内容であると言えるかも知れません。
この報告書は、文部科学省の以下のリンクよりダウンロードすることができます。