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品質/環境マニュアルを廃止した生出マネジメントシステムでISO9001/14001:2015認証取得 ~ 株式会社生出様

掲載:2016年10月06日

執筆者:エグゼクティブコンサルタント 英 嘉明

コラム

株式会社生出(おいづる)様は、2014年に、ニュートン・コンサルティングの支援を得てマネジメントシステム(MS)再構築プロジェクトを立ち上げました。“経営と現場に役立つ”ことを目的に品質マネジメントシステム(QMS)、環境マネジメントシステム(EMS)、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の抜本的な見直しと統合化を行い、ひとつの『生出マネジメントシステム(OMS)』として再構築しました※。
 
2016年5月には、QMS/EMS/BCMSの統合審査を受け、ISO9001/ISO14001:2015への移行を含め、不適合ゼロ、Good Point 7件の結果と共にISO認証を維持しました。そこで今回、統合審査及びISO9001/14001:2015への移行審査の状況を振り返りつつ、再構築後の生出としての活動をどのように行っているかに焦点を当ててみることにしました。生出治社長と加藤慶治取締役事業部長にお話を伺いしました。

         

まず、『生出マネジメントシステム(OMS)』の構築後の運営状況をお聞かせください。


  代表取締役社長 生出 治氏         取締役 事業部長 加藤 慶治氏

    MS再構築プロジェクト後も、当時打ち立てた方針(下記参照)を踏襲したマネジメントシステムの運営を行っています。当然ながら、運営の中で社内外の変化や問題点が出てきていますので、それらに関してOMSの見直しを適宜行っています。
 
【マネジメントシステム再構築方針】
・経営課題の解決に役立つ
・現場の仕事に役立つ
・現場自らが作る
・使わない文書は持たない
・不適合を恐れない

ちなみに、プロジェクト後からこれまでにMS運用年間計画の一環として下記の改訂作業と教育を実施しています。
 ・新工場設立に関連したOMSの改訂
 ・企画商品開発に関連したOMSの改訂
 ・お客様の移転に関連した業務プロセスの変更
 ・全社員向けOMS研修の実施
 

さて、そんな中で受けた今回のISO統合及び移行審査ですが、審査の為に何か準備をされましたか?

再構築時に掲げた「審査のための準備はしない」という方針に則り、“ISO審査の為の準備”作業は特に行いませんでした。日常活動の実施状況のまま審査を受けました。以前は、審査前になると、とっていなかった記録を急いで作成するなど、審査準備のために多くの工数を割いていました。あたり前のことではありますが、そのことを考えるととても大きな前進だと感じています。
 
なお、審査会社からの事前資料要求に対しては、OMSで日常使用している「全社共通ルール」、「業務プロセスチャート」、「OMS体系図」、「OMS年間カレンダー」をそのまま送付しました。審査会社からは、ISO9001/14001:2015年版対応の文書化について特に「リスク及び機会への取り組み」と「2015規格に基づくマネジメントレビューの実施(特にインプット)」に関する文書化の状況確認がありました。
 

受けたISO統合及び移行審査の内容はどのようなものでしたか?

今回の審査対象はQMS/EMS/BCMSの3規格でした。加えて、これらの規格に対し、更新審査、移行審査、変更審査、定期審査の4種が混ざった形での審査となりました。具体的には下記に示すとおりです。
 
 ・QMSとEMSについては、更新審査とISO2015年版への移行審査および変更審査
 ・BCMSについては、定期審査および変更審査
 
なお、審査チームは2人、審査期間は3日で実施されました。また、トップマネジメントに対するインタビューは審査員2人によって行われました。さらに、QMS、EMS、BCMSの各事務局機能、及び、営業、営業事務、包装設計、生産管理、製造、品質保証、資材物流、管理等の業務については、審査員が分担する形で行われました。現場に出向いての審査が重視されていたように思います。
 

トップマネジメントインタビューでは、どのような点が確認されましたか?

トップマネジメントインタビューでは、単に経営方針や経営課題を聞かれるだけではなく、経営・業務とマネジメントシステムとの関連やトップとしてやるべき事に関して、具体的な方法まで踏み込んだ確認を受けました。これらの確認点についてOMSで行っていることを答える中で、新たな気づきを得ることができましたが、それらの気づきは今後の経営、業務に非常に役立つ内容と思っています。

            【トップインタビューでの確認事項例】
              ・中期経営方針に向けての基盤強化の内容はどのようなものか
              ・リーダーシップをどのようにとっているか
              ・業務プロセスとOMSとの関連をどのように考えているか
              ・OMSの方向性をどのように認識しているか
              ・人材育成をどのように行っているか
              ・社長と幹部の共通理解は、どのように行っているか
              ・経営課題とリスクのギャップの解決をどのようにしているか
              ・変化をしっかり見ているか
              ・リスクに対する予防策としてはどのようなものがあるか
              ・トップマネジメントの判断が適切であることをどのように判断しているか

今回のISO審査で従来と特に違った点は何でしょうか?

ISO規格箇条を直接持ち出した確認はほとんど無く、経営及び業務で通じる言葉での確認がQMS、EMS、BCMSについてミックスして行われました。確認内容としては、ISO9001/14001:2015の新たな要求事項が中心だったと思います。「全社共通ルール」と「業務プロセスチャート」との整合性、ISO要求内容に関する実施内容、教育、力量、パフォーマンス、有効性の視点等からの確認がありましたが、各責任者が自信をもって対応していました。
 

特に評価が高かった点はありますか?

わが社では「経営計画」「全社共通ルール」、「業務プロセスチャート」「目標管理シート」を、会議室の壁に掲示し(写真参照)、日常のマネジメントにおいて使用しています。審査では、それらを用いながらトップマネジメント、事務局及び各業務リーダーは審査員に対応しましたが、審査員から「掲示によりOMSのつながりがよく見えるようになった」との評価を得ました。

また、審査報告書では、MSの強みとして、“経営とMSの一体化”、“MSの見える化”、“フローチャート形式のOMSマニュアルが組織の事業プロセスへのMS要求事項の統合を実行している”点が評価されましたが、これらはMS再構築プロジェクトが目指した点そのものです。

改めて、ISO-MS再構築プロジェクトの成果をどのようにお考えですか?

再構築プロジェクトが完了し、ISO審査も受けましたが、約2年が経過した今でも本当に良かったと心から思っています。
 
統合・移行審査を終えて改めて思うことは、ISO規格の章立て・内容に合わせた品質/環境/事業継続マニュアルを廃止し、経営・業務運営においてISO規格を意識しないようにしたことが、根本的な解決策だったことです。今では、MS文書が、そのまま経営資料となっており、“MSと経営・業務の一体化”が実現したと言えます。そして、ISO導入当初の狙いである、“経営品質の向上”につながっています。
 
以前はQMS、EMS、BCMSの規格中心の運営だったものが、今では生出としてのマネジメントシステムを実態に即して一本化したこともあり、現場での“ISOやらされ感”は無くなったと思います。OMSの徹底運用は、競争に勝つために必須、環境対応はお客様の要求に応える為に必須、と社員も納得していると思います。
             
あるグローバル企業のお客様による協力企業品質調査で、当社製品の受入検査実績が非常に優れていると、高い評価を得ました。これは、作業の基本を一つ一つチェックしてやることの徹底、社内不適合のオープン化、情報を社内の関連部署にきちんと伝えること、などのOMSの基本ができてきていることの成果と思っています。
 

今後に向けての抱負をお聞かせください。

審査員から、いくつかの役立つコメントを頂いておりますので、それらを検討しつつ、経営品質の向上のため、さらなる改善に努めていきたいと思っています。その為にも、社員には「お客様の目線に合った仕事をしよう、感度を上げよう」と言っています。
また、タイにも工場を有していますので、時間はかかると思いますが、日本での経験をタイ工場の品質向上に役立てたいと思っています。
 

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