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災害時優先通信

掲載:2011年06月08日

用語集

「災害時優先通信」とは、あらかじめ特定の電話番号を登録しておくことにより、地震など大災害が起きた際においても、その番号(「災害時優先電話」と呼びます)からは優先的に電話をかけることができるサービスです。

         

災害時優先通信は災害時に重要通信を確保するためのサービス

当該サービスについて、総務省では次のように定義しています。

地震などの「災害の救援、復旧や公共の秩序を維持するため、法令に基づき、防災関係等各種機関等に対し、固定電話及び携帯電話の各電気通信事業者が提供しているサービス」
災害等の非常時では大量の電話が殺到するため、発信規制や接続規制といった通信制限が実施され、一般の携帯電話や固定電話は繋がりにくくなります。このような状況下にあっても、「災害時優先」サービスを利用することができれば、そうした通信制限を受けずに「発信」を行うことができるようになります。

誰もが利用できる万能なサービスではないことに留意が必要

「災害時優先通信」は、あくまで、特定の電話番号からの電話発信を「優先」扱いするものであり、相手先に必ずつながることを保証するものではありません。相手が通話中の場合などには、接続できないことも考えられます。あわせて、「着信」が優先されるサービスではないことから、たとえ災害時優先電話を使っていたとしても、回線が輻輳している場合には、その電話に対する着信は実質的に受けることができません。このため、総務省では「災害時優先電話」の利用について、電話番号を外部に公表せずに、あくまでも発信専用電話として利用することを推奨しています。

また、「災害時優先通信」は従来の銅線を使ったアナログ(加入)電話やISDNに適用されるものであり、近年の普及が著しいIP電話には必ずしも適用されるものではありません。

さらに、「災害時優先通信」の利用には電気通信事業者への事前申込が必要になる上、対象は後述する「重要通信」の対象機関に限られるといった制約があります。

「災害時優先通信」の利用申請ができる機関とは

「重要通信」の対象機関については、電気通信事業法第8条および電気通信事業法施行規則第56条の規定に基づき、「総務大臣が指定する機関」(平成21年3月9日総務省告示第113号)において、以下の分類のもと、個別具体的な機関が定められています。
  • 気象機関
  • 水防機関
  • 消防機関
  • 災害救助機関
  • 秩序の維持に直接関係がある機関
  • 防衛に直接関係がある機関
  • 海上の保安に直接関係がある機関
  • 輸送の確保に直接関係がある機関
  • 通信役務の提供に直接関係がある機関
  • 電力の供給に直接関係がある機関
  • 水道の供給に直接関係がある機関
  • ガスの供給に直接関係がある機関
  • 選挙管理機関
  • 新聞社等の機関
  • 金融機関
  • その他重要通信を取り扱う国又は地方公共団体の機関
ただし、指定対象機関においても、災害時優先電話に割り当てられるのは「重要通信」を行うための必要最低限の電話回線に限られています。

「災害時優先通信」を可能にする電気通信事業者の権利と義務

電気通信事業法第8条第1項では、「重要通信」を次のように定義しており、電気通信事業者に対し、非常事態における「重要通信」の確保・優先的取扱いを法的に求めています。
  • 「天災、事変その他の非常事態が発生し、又は発生するおそれがあるとき」に「災害の予防若しくは救援、交通、通信若しくは電力の供給の確保又は秩序の維持のために必要な事項を内容とする通信」
  • 「公共の利益のために緊急に行うことを要するその他の通信であって総務省令で定めるもの」
また、同法を根拠として電気通信事業者は必要がある際には、電気通信業務の一部を停止する(例:発信規制を行うなどの)権利を持ちます(同法第8条第2項)。これにより重要通信を確保するために他の通信の接続を制限、又は停止することが可能となっています。

指定対象機関以外の企業・私人がとれる通信の選択肢

「災害時優先通信」サービスの利用を申請できない組織にも、とることのできる有効な手立てはいくつかあります。その1つが、一般公衆電話を利用することです。一般公衆電話は「災害時優先通信」に指定されているため、通信に関して先述したメリットを享受することができます。ただし、最近は公衆電話の数が全国的に少なくなってきているため、平時より自宅や勤務先の近辺のどこに設置されているかを把握しておくことが重要です。

他の選択肢としては、災害用伝言ダイヤル「171」・災害用ブロードバンド伝言板「web171」のような個人間の安否確認システムの導入、業務無線などの自営通信網の構築や、重要な拠点間への専用線の敷設、衛星電話の用意など、といった代替通信手段の確保が考えられます。
(安否確認手段の特徴については「安否確認」をご参照ください。)

通信網のIP化に対応した今後の在り方

前出のとおり「災害時優先通信」は、インターネットを使ったIP電話に対して必ずしも適用されるものではありません。しかしIP電話やこれを支えるインフラ(光ファイバー)網の急速な普及・拡大を受け、現在IP電話における「災害時優先通信」の導入について、積極的な議論がなされています。

2008年5月に公表された「重要通信の高度化の在り方に関する研究会」報告書における提案事項の内、IP電話に関わるところでは、2011年までに以下の対応が行われています。
  • IP電話(0AB~J)および携帯電話・PHSの「災害時優先通信」対応の法制化
  • 災害時の電話の利用方法についての国民利用者への周知・啓発活動

今後は更に、
  • 音声通信に止まらない、非音声サービスの優先利用(例:特定の救急車と病院の間で優先的なデータ通信を実現する)
  • 重要通信対象機関の追加・削除の検討、重要通信の優先度のきめ細やかなクラス分けなどによる実効性ある体制の再構築
といった項目についての検討が進められるとしています。

企業は、こうした「災害時優先通信」に関わる公的な動きを見据えつつ、自社の災害時における有効な通信手段の確保を考えていくことが求められます。
 
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