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福祉施設経営における事業継続計画ガイドライン【地震対策編】

掲載:2011年08月03日

執筆者:エグゼクティブコンサルタント 久野 陽一郎

ガイドライン

「福祉施設における事業継続計画ガイドライン【地震対策編】」(以下、本ガイドライン)は平成21年3月に全国社会福祉施設経営者協議会(以下、協議会)により策定され、福祉施設にとって実効性のあるBCPの構築手順を説明しています。このガイドラインを策定するにあたって、阪神・淡路大震災や新潟中越沖地震に被災した施設(兵庫県3カ所、新潟県3カ所)とその所管行政(神戸市役所、新潟県庁)に対して実地調査し、実体験に基づいた重要なポイントがガイドライン中にちりばめられています。

         

分かりやすい事例集

協議会はこのガイドラインを策定しただけでなく、翌年の平成22年3月に周知・普及を目的として新潟県の2施設にガイドラインに基づいてBCPを策定してもらい、その事例を「福祉施設における事業継続計画ガイドライン【地震対策編】事例集」(以下、事例集)として取り纏めました。

BCP策定手順の説明と実際に構築した事例が対になっており、本ガイドラインの使い勝手はとても良いものになっています。加えて、実際に被災した経験を持っているため、被災時に課題になったものも整理されており、対策を立てる上で示唆に富んだものとなっています。

ガイドラインのポイント

本ガイドラインは、地震発生時に福祉施設がどのようにサービスの提供を続け、続けるための必要な準備と被災後に復旧するための手順を説明しています。内容は、体制の構築から地域貢献への方策まで一通りカバーしております。

目次
1章 被災に備えた体制の構築
2章 事業を継続するための対策の推進
3章 教育・訓練および維持管理
4章 被災時の対応事項
5章 地域との連携
6章 地域貢献の方策
上記に加えて、ガイドラインの項目に沿った「事前対策チェックシート」と備品一覧が添付してあり、ガイドラインの内容をおさらいできる作りになっています。

忘れてはいけないこと

福祉施設のBCPを構築する上で漏れてはいけない事が、ボランティアへの対応と地域との連携、貢献になります。人員を確保する際に、被災状況により施設に参集できない場合は、ボランティアの存在が大きくなってきます。ただ、通常の体制とは異なる為、備蓄品がボランティアまで行き渡らない、施設での従事経験が無い方が大勢着てしまうと混乱がおこることなど、事前に対応について話しあう必要があります。

また、施設自身が単独でサービスを提供することが難しい場合、以下の関係者と通常時から連携していくことが望ましいと本ガイドラインでは例示しています。
  • 法人間・施設間の連携(相互受け入れ、専門職員の派遣など)
  • 医療機関との連携(重傷者、重病者など施設で対応できない方のヘルプ)
  • 業界団体との連携(ボランティアの受け入れなどを社協等と連携)
  • 自治会との連携(地域住民が施設に避難する際に、役割分担や対応を協力)
  • 行政との連携(緊急移動のためのパトカー出動など)
加えて福祉施設は公共性が高いため、例え地域避難場所に指定されていなくても、実際に被災者が助けを求めてくることが、実例としてあげられています。本ガイドラインには対応できる範囲を事前に把握し、被災時に地域にどの程度まで提供できるか通常時から検討することが必要と説かれています。

最後に本ガイドラインでは、実地調査の結果から指摘事項を現状の課題として纏めています。地震対策の重要性の理解など全般的な内容から、ボランティアの調整機能の強化などといった個別事項もあげています。自施設のBCPを策定する際に、検討すべき項目として考慮しておくとより実効性の高いものになっていくでしょう。
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