-事業内容を教えてください。
当社は、三つの責任(社会・荷主・従業員とその家族への責任)を経営理念として、総合物流サービス(道路貨物運送、通運、精密機器・重量物運搬搬入、倉庫・流通加工、梱包、産業廃棄物収集運搬及び中間処理、国際複合一貫物流、人材派遣等)を提供しています。東京多摩地区及び国道16号線を中心に26拠点、名古屋、大阪、広島、福岡と計30拠点、関連会社は国内10社、中国の瀋陽、大連にも3社展開しております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
直接の応募のきっかけは東京都トラック協会からの紹介でしたが、やはり東日本大震災の経験が大きいです。当社は大きな被害はなく事業継続は問題ありませんでしたが、社内には様々なリスクがあると思っています。事業継続のための対策を講じる必要があることを痛感し、業態に合ったBCP策定が必要であると考えました。特に東日本大震災以降、お客様から燃料の確保を強く言われており、必要であればコストをかけて取り組みたいと考えていました。
また、運送業は労働集約型の産業であり、社員がいかに集まるかが事業継続のポイントにもなるため、連絡及び参集方法の確立が必須であると考えていたことも取り組んだ要因の一つです。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
対象事業を運送・倉庫(保管・荷役)事業とし、対象範囲を多摩地区に限定してBCPを策定しました。
当社の取扱荷物は精密機器などの機械物が多く、震災が起きた場合、運搬中止となる荷物も多いため、お客様・トラック協会・行政などの緊急輸送要請に応えられる体制を築くことが第一義と考えました。
最初に立ち上げる業務は受付業務です。受付業務には本社及び各営業所機能(人員・通信手段)の復旧が必要です。幸いにも従業員は職住接近しており、人員確保は難しくないと判断しました。免震等の予防策を講じた上で、本社及び各営業所機能を迅速に立ち上げるため、連絡方法・自動参集のルールを決めました。また通信手段については、停電中でも業務立ち上げができるよう自家発電設備などを整備することにしました。また燃料の確保については、自家用地下タンクの設置を検討しております。
さらに、車両が足りない場合は、関東圏の他店所に応援を要請することにしました。
対象事業 | 運送・倉庫(保管・荷役)事業 |
---|---|
対象リスク | 多摩直下地震 |
被災シナリオ | ・社会インフラの停止と交通規制 ・燃料確保困難と輸送手段の一部喪失 ・社員の出勤困難 |
対策 | ・自動参集可能社員による迅速な緊急対応/危機対応体制構築 ・携帯電話・メールによる社員緊急連絡網構築とPHSの活用拡大 ・サーバ室免震化と燃料確保用インタンクの導入 ・自家発電装置の導入 ・営業所・保管倉庫機能維持(ポータブル発電機、自動参集) ・紙ベースの配車業務・ピッキング業務遂行 ・被災していない拠点による応援(社員、車両他) |
-何か新たな気付きはありましたか?
今回は本社の関係部門の責任者で検討を行ったため、事業継続対策に関する具体的なイメージを持つことができ、被災想定や各種対策についてある程度客観的に評価できました。予防策ももちろん大切ですが、事業継続では現場の人をどう動かすかが勝負になります。今回ある程度その動かし方も見えてきましたし、やるべき事が共有され役割分担も明確になりました。拠点・現場への展開も本社各部署が同じ価値観で展開できるので、災害対応力は強化されたと考えています。
また、現場の長である営業所長の力量、所員のモラルやモチベーション、家族の安全、取引先との良好なコミュニケーションの維持についても非常に重要であると認識しました。
残された課題として、訓練の実施・継続、メール・携帯等で実施予定の緊急連絡が通信回線不通時にどうなるのか、交通規制が実施された時に、どのように帰庫・運行するのか等、引き続き検討していきたいと考えています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
短期間で多摩運送のBCPの幹ができたことについて、皆様に本当に感謝しております。今回は関係部門の責任者が集まり策定しましたが、BCPに関する認識ややるべきことが明確になりました。また事業継続のために必要な部門間のクロストレーニングが予想外にできていたことは嬉しい誤算でした。今後は幹だけでなく、葉を茂らすために、当社のBCPを引き続き発展・充実させていきたいと考えています。当BCP策定事業に参加して本当に良かったです。