-事業内容を教えてください。
弊社は創業以来70年、地元荒川区を中心とした中小企業・個人事業主様のビジネスドクターとして、税務・会計サービスのみならず、経営サポートサービスを提供しております。財務・会計業務では一括でも一部分でも、お客様のご要望に応じてサポートいたします。経営サポートでは、お客様の経営計画策定支援や目標設定から、計画と実績のズレを把握するための支援まで行い、お客様の永続的な発展をサポートします。それぞれの社員の担当企業を絞ることで、お客様へのきめ細かいサービス提供を実現しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災の際は、自社社員と連絡がつかず、また社員各人が何をどうすればいいのかわからないまま、各人の判断で対応せざるをえませんでした。そういった苦い経験を反省し、特に顧問契約を締結しているお客様に対するサポートを止めないためにも、災害の時こそビジネスドクターとしてお客様をサポートしたいと考えました。会社としての対応ルールを明確にし、それぞれの社員が自分の役割を認識し、来たる大震災に備えて主体的に行動できる体制を整備していきたいと思いました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
税務・会計サービスをBCPの対象事業とし、中断できない重要業務としては、税務書類の作成・申告のうち法人税・消費税などの予定申告、年末調整・償却資産、確定申告等の手続き業務と決めました。それぞれの業務には年間でのピークがあり、このピーク時に被災したものと想定しました。
対象リスクは地震とし、PCやサーバの故障や停電による使用不能、社員の出勤率低下といった状況を想定し、かつ国税に関する申告・納付等の期限延長はないと仮定した厳しめのシナリオでBCPを検討しました(東日本大震災の際には期限は延長されました)。
上記業務にはサーバに格納された各会計ソフトのデータとPC、そして担当者とインターネット環境が必要になります。なかでもボトルネックとなるのはサーバで、損傷した場合には社長宅に保存されたバックアップデータを金庫内の代替PCにリストアしてサーバの代替とします。会計ソフトのインストールディスク等も金庫に保管することにしました。また万一、担当者が出勤できない場合には、従来から記録している顧客情報をまとめた文書ファイルによって、代替の担当者が対応することにしました。最後に、ネット環境が復旧しない場合にはプリントアウトまたは手書きにて申請書類を作成することにしました。
対象事業 | 税務会計サービス |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・サーバ故障、パソコン故障 ・従業員の出勤率低下 ・社会インフラ停止 |
予防・低減策 | ・インストールメディア等の保管場所の変更 ・PC、サーバ、複合機の固定及び保管場所の変更 ・バックアップデータの保管及び運用の変更(検討中) |
代替策 | ・文書ファイルを活用した代替要員による対応 ・バックアップデータの活用によるサーバの再構築 ・代替拠点の活用(パートナーシップを結んだ会計事務所での業務遂行) |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
東日本大震災を経験したこともあり、検討すべき課題は理解しているつもりでしたが、実際にプロジェクトが始まってみると頭を悩ませる点があったというのが正直な感想です。自社だけで検討していたら、顧客の同時被災も考慮せずに検討してしまっていたと思います。厳しい想定で検討を進めたため、弊社が事業を継続する上では、サーバが停止するリスクがボトルネックであると認識できました。また、先々代より継続してきた、顧客情報の文書ファイルが被災時の顧客対応に活用できることがわかったのは収穫でした。
-BCPを策定した感想をお願いします。
経営資源の洗い出し過程では、日常の中で当たり前のように進めている業務と経営資源の関係を整理して確認できました。多くの会計ソフトを使用していますが、PCとソフトの依存関係などを整理できたことは良かったと思います。また、事業継続する上でボトルネックが明らかになりましたので、今後、予防・低減策の設備投資を判断する材料に活用できると思いました。
お客様のサポートの際にBCPの視点からも指導できるのではと感じています。BCPは、非常時のことであり、特別な対応と考えがちでありますが、常日頃から問題意識を持ち、その問題を放置せず、問題を解決する体制や仕組みができていれば災害時にも十分に対応できると思いました。
通常業務と並行しての取組は大変でしたが、集合研修から実質2か月程度でBCPを策定できたことは良かったと感じております。