2010年10月にBussiness Continuity Institute (BCI)から、サプライチェーンに強く依存する組織(以下、「サプライチェーン組織」)の事業継続能力の現状について『サプライチェーンレジリエンシー2010(Supply Chain Resilience 2010 - BCI survey of resilience professionals)』という名の調査結果報告書が発表されました。調査は、35カ国15業種におよぶ310組織に対してアンケートを使って行われたもので、調査期間は2010年6月30日から9月2日までの約3ヶ月間です。
なお、エグゼクティブサマリは、BCIの公式ホームページで閲覧することが可能です。(英語のみ。記事下部関連リンク参照)
20あまりの調査項目結果をまとめた報告書
この報告書には、様々な質問に対してのアンケート結果をベースに、集計されグラフ化されたデータが掲載されています。主な調査内容には以下のような項目があります。- インシデントの記録状況
- サプライチェーンに関連するインシデント件数および種別
- インシデントによってもたらされた被害額
- サプライチェーン組織におけるBCM導入の状況と、その導入方法の特徴
- サプライチェーン組織におけるRTO
- BCM導入に関しての取引先との連携の仕方
- BCM取り組み状況について取引先選定基準としての考慮度合い
- 主要取引先がBCM要求事項に合致していなかった場合の対処方法、など
サプライチェーン組織のRTOは24時間
サプライチェーン組織におけるRTOに関する調査結果については(当然、組織により数値は大きく変わりますが)概ね、金融機関で数時間~24時間、製造業で数日~1週間、小売業で24時間、エネルギー関連で、数時間~1週間(ただし在庫に大きく依存)、ICTサービス関連で24時間程度といった傾向が見られたとのことです。また、「主要取引先におけるBCM取り組み状況の調査をどこまで行っているか」という問いに関しては、「アンケート調査への回答依頼」や「BCM関連文書類のコピーの提出を求める」という手法が最も多く、まったく調査を行っていない組織が全体の18%を占めています。さらに、「BS25999-2認証取得状況を答えさせる」という手法をとっている組織が、”その手法”の是非はともかく2009年(前回)調査に比べて2倍の12%に増えているとのことです。
さらに「主要取引先が自組織のBCM要求事項に合致していなかった場合の対処方法」については、「他のサプライヤーとのつきあいも始める」「保険に加入する」「BCM改善計画を策定し合意をする」などが回答の過半数を占める中、傾向として「BCM改善計画を策定し合意をする」といった手段を用いる組織が一番多いことが分かっています。
自組織の課題を客観的にみつめるための1つの参考指標としての活用
さて、本調査の利用方法ですが、調査項目によっては回答基準が不明瞭なものもあるため、全ての結果をそのまま鵜呑みにすることは必ずしも望ましくないことを理解しておくことが重要です。たとえば調査報告書ではインシデント回数が最も多かった業種として金融機関を挙げていますが、そもそも金融機関は業界としてレジリエンシー要件ならびに報告要件が高いため、他業種に比べて多く記録されたものだと推察されます。BCMの取り組みが進んでいる組織も進んでいない組織も、そのような点を留意しつつ、自組織のBCM課題を特定する1つの参考指標として、この調査報告書を活用することができます。サプライチェーン組織全体、地域、業界、前回調査結果などといった観点から、収集されたデータを比較しながら、傾向についてまとめられているので、自組織が現在のトレンドとどれだけ乖離しているのか、ある程度知ることができるでしょう。