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コラム

H5N1鳥インフルエンザの真相

2011年04月06日

コンサルタント

森 孝夫

昨年からH5N1鳥インフルエンザ(以下、H5N1)・ウイルスが日本中で検出されています。2011年1月以降の日本国内での主な発生・発見事例は32件に上っています。以下にその一部を挙げます。
 

発生日 発生地域 詳細
1/4-10 福島県郡山市 豊田浄水場貯水池 キンクロハジモの死骸からウイルス検出
1/21 宮崎県宮崎市佐土原町 養鶏場で発生
1/23 北海道浜中町 オオハクチョウの死骸からウイルス検出
1/25 鹿児島県出水市 養鶏場で発生
1/26 愛知県豊橋市 養鶏場で発生
1/26 島根県松江市 宍道湖 キンクロハジモの死骸からウイルス検出
1/27 宮崎県都農町 養鶏場で発生
2/2 大分県大分市 養鶏場で発生
2/7,8 大分県中津市 オシドリなどの死骸からウイルス検出
2/8 宮崎県諸塚村 カイツブリの死骸からウイルス検出
2/8 大分県別府市 コハクチョウの死骸からウイルス検出
2/16 京都府精華町 ハヤブサの死骸からウイルス検出
2/16 三重県紀宝市 養鶏場で発生
2/17 宮崎県延岡市 養鶏場で発生

こうしてみると、日本でH5N1が「流行」していることがおわかりになると思います。しかも管理された養鶏場の内部だけではありません。カモ類の死骸から検出されていることから、一般のヒトと接触しやすい野鳥にも拡がっており、ヒトの身近にH5N1ウイルスが存在している事がわかります。
 

ヒト間での流行は、もうすぐそこに

家禽や野鳥の間でのH5N1流行が意味するものは何でしょうか?一般社会では「H5N1はあくまでも鳥の病気であり、ヒトの健康には余り関係がない」という認識がされ、あまり深く考えられていないようです。しかし、この認識は間違っています。H5N1はヒトに感染する能力を持つ強毒性の感染症です。

日本ではあまり報道されていませんが、海外ではH5N1によるヒトの感染・死亡の事例は続いています。今年に入ってからも、カンボジアで3人が発症し全員が死亡しています。またエジプトでも6人が発症し1人が死亡しています。こうした感染例は、H5N1に感染した鳥との接触によるものです。

日本が関心を持つべき感染例が2月17日にカンボジアで発生しています。19歳の母親と11ヶ月の男児が、H5N1に汚染された鶏肉を調理して食べた後、鳥インフルエンザを発症して死亡したという事例です。当局の発表によると2人は食べてから2日後に発症。その後母親が2月12日に死亡し、男児は17日に死亡したとされています。H5N1に汚染された肉を食べてもヒトには感染しないという情報が見られますが、間違いであるのは明らかです。

日本人は今まで感染した事がないから大丈夫だろうという意見もあるかもしれません。確かにH5N1の感染・発症については(ヒト側の)遺伝子特性に影響を受ける可能性があります(ヒト-ヒト間の感染事例は、親子間のものしか見つかっていない事等)。しかし、これは間違いです。日本でもH5N1への感染例は見つかっています。

2004年に京都府で発生した鶏の集団感染事例の際に、防疫作業従事者58名に対し、H5N1に対する血清抗体価調査が実施されています。この結果、5名がH5N1に感染していたことが確認されています。トリから日本人への感染は十分に起こりうるのです。

現在のままヒトとH5N1に感染した鳥の接触が進むと、ヒトへの感染の可能性が高まることになります。インフルエンザ・ウイルスは感染により遺伝子変異を起こす可能性が高く、そうした変異によりヒト-ヒト間で容易に感染する能力を獲得する可能性が十分に高いのです。

相変わらず危機感の薄い日本

これまで述べてきたようにリスクが極めて大きいにもかかわらず、国民の間での危機感は低いようです。なぜ日本ではH5N1流行への危機感が低いのでしょうか?一つの理由としては、2009年のH1N1新型インフルエンザが比較的弱毒性のもので大きな人的被害をもたらさなかったことにあるのかもしれません。実際にはH1N1はH5N1とまったく違う種類のウイルスであり、毒性を比較するのは間違っています。にもかかわらず、「インフルエンザ・パンデミックは怖くない」という楽観を日本社会は持つようになったのかもしれません。

また報道機関も十分な報道をしていない感があります。不要なパニックを抑えるためかもしれませんが、「羹に懲りて膾を吹く」になってしまっているのではないでしょうか。特に東日本大震災以降は(やむを得ない面もありますが)報道も震災が中心になり、千葉の養鶏所での流行や青森・三沢でハヤブサの死骸から検出されたことは余り報じられていません。

政府や自治体も積極的にヒトへの感染を予防するような広報活動を行っていません。厚生労働省は「海外での感染防止」として「鳥インフルエンザが流行している地域」への渡航者への警告を発しているだけです。海外でこうした警告を守っていれば、日本には関係ないように思える内容です。しかし今の日本はまさに「鳥インフルエンザが流行している地域」だといえます。にもかかわらず日本では警告を促すような情報はあまり発表されていません。

いまこそ企業に求められる姿勢とは

政府・自治体や報道機関が積極的に取り組まないのであれば、企業などの民間がやるしかないことになります。結論として企業が今H5N1に対し採るべき警戒態勢の一つは、下記のようなH5N1に関する正しい認識の普及でしょう。
  • H5N1はヒトに感染しうる強毒性の感染症であり、その病原体が日本に今蔓延している(単に現在はヒトヒト間で感染しにくいだけ)
  • ヒトへの感染経路は感染した鳥との接触によることが多い。感染したトリの肉を食べたことで感染した事例は、世界中で報告されている
  • 日本人が感染した事例が存在し、日本人の健康にも無関係ではない

こうした認識もなく今のまま(日本にとってはあくまでも鳥の病気でしかない)でいけば、日本が新たなパンデミックのグラウンドゼロになってしまう可能性も十分ありえます。

そして正しい認識の下に、ヒトへの感染についての情報を中心に日本国内外でのH5N1の流行状況について情報を収集し、パンデミックという最悪の事態への備えをしておくことが重要です。以前のコラムでも書いたことですが、一般の報道だけでなく、国立感染症研究所などの専門機関の発信情報にも注目しておくべきです。

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