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中堅・中小企業にこそ有効な「強い会社を作るリスクマネジメント」第5回: リスクアセスメント(特定、分析、評価)はこうやる

掲載:2016年06月01日

執筆者:代表取締役社長 副島 一也

コラム

リスクマネジメントの活動の中で、リスクの洗い出しや、その大きさの算定、リスクへの対応優先度を評価する一連のプロセスが「リスクアセスメント」です。リスクアセスメントの3つのステップについて解説します。

リスクアセスメントの3つのステップ

前回のコラムで、リスクマネジメントの年間を通しての活動例を提示しました。その中で、特にイメージしづらいのがリスクアセスメントだと思います。今回は従業員数十人規模の会社を想定しながら、リスクの洗い出しをしていく様子をお伝えしたいと思います。

まず、リスクマネジメント委員会のメンバーは、社長を含む経営幹部の皆さん全員です。5~6人でしょうか?もちろん10人でも結構です。さあ、我が社のリスクは何だと洗い出すわけですが、それではなかなか進みません。リスクアセスメントは組織共通の目標があるからこそ、それを阻害するリスクを特定できるのです。なので、まず始めるのは実はそこからです。

  • ステップ1.目標を共有する
  • ステップ2.目標達成するための施策やスケジュールを共有する
  • ステップ3.目標達成を妨げるリスクを洗い出す
ステップ1.目標を共有する

明らかに会社としての目標が共有できていればその確認をするだけですが、念のため、あらためて、経営幹部全員で共通認識を図りましょう。そもそもリスクって、何をどうしたいのかという意思があって発生するものです。

さて、何を目標にしましょうか?例えば、「売り上げ対昨年比15%アップ」でしょうか?「特定エリアでのシェアナンバーワン奪還」でしょうか?もしくは、もう少しだけ長期的な視点で「3年後売り上げ2倍」としましょうか?みんなで一緒に考え、いま最も重要で目指したい目標はこれだよねということをしっかり合意しましょう。

ステップ2.目標達成するための施策やスケジュールを共有する

例えば、「3年後の売り上げ2倍」をみんなで目指すと決めたとします。そうしたら次は普通にそのための施策を考え合意します。「あれ?これはただの経営戦略じゃないの」と思われるでしょう。その通りです。リスクマネジメントは経営戦略や事業計画をしっかり意識しなければできません。ここでは、営業力の強化や販路を拡大するために、営業研修を行うとか、人員を強化するとか、広報能力を高めることが重要ということに決まったとしましょう。

マーケティング支援コンサルティング会社に相談するとか、はたまた、採用計画強化、人事評価制度見直す、とか「3年で2倍」となるとやるべきことは広範囲に山ほど出てくるはずです。しっかり各幹部がそれぞれどの範囲にどう取り組むのか共有、合意形成を図りましょう。

ステップ3.目標達成を妨げるリスクを洗い出す

さて、いよいよここでリスクアセスメントが実質的にできる状態になります。いろいろなことに取り組むのですから、気になることはたくさんありますし、それらはそれぞれの会社によって全く違ったものになるはずです。
例えば、

  • 守備範囲が広くなりすぎて、「社長や特定の幹部が疲弊し、倒れる」
  • 営業がプレッシャーに耐えきれず、「メンタルの問題が起きる、離職者が出る」
  • 安値でたくさんの仕事を取って「品質事故が発生し大クレームが起きる」
  • 採用に時間とコストが膨大にかかってしまい「赤字になる」

というような自社固有のリスクから、もっと一般的な、大地震、世界同時金融不況、パンデミックなども考えておく必要があるかもしれません。
考えられるリスクをたくさん洗い出し、グループ分けし、何らかの対処をするかどうか意思決定していきます。

そう、具体的に見ていくと、リスクアセスメントは特別なことではありません。経営者がいつも考えていることなのです。この3つのステップはあえて「リスクマネジメント委員会」という名称でやってみたというだけです。ですが、あらためてこうした時間を取ることで、目標、施策、リスクの共通認識がしっかりと進みます。「気になっていたが…」「起きなければ良いが…」は、いつか必ず起きます。起きてからでは遅いのです。しっかりリスクの洗い出しと共有を図り、より安心して目標達成に向かっていきましょう。

大塚商会ウェブサイトより転載)
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