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「カテゴリー別リスクマネジメントの進め方」第4回: 風評リスクを考える

掲載:2016年11月01日

執筆者:代表取締役社長 副島 一也

コラム

経営に大きな影響を与える風評被害。近年はインターネット上で一気に広がるため被害も大きくなりがちです。風評被害にどう対応すればよいのか、風評リスクをどう捉えるべきかを解説します。

         

中堅・中小企業にとっても他人ごとではない風評被害

前回のコラムでセキュリティについて取り上げましたが、先月まさにオリンピックのセキュリティ対策の取材でリオデジャネイロに行ってきました。

行く前に、周りの知人から散々言われたのが、「リオは危険だ」ということです。「外出の時にスマホは持って行ってはいけない」「夜は外で食事しないほうが良い」「ビーチに行くなどもってのほか」などと聞かされ、とても緊張して現地入りしたのですが、いざ現地に行ってみると、そこに住んでいる日本人のガイドさんたちに笑われてしまいました。

リオは世界から多くの観光客が訪れる素敵な観光地で、ラテン系の人々は明るく親切で、とても心地よく過ごせました。もちろん日本と違い気を付けるべきことはたくさんありますが、出発前に言われていた印象とは明らかに違いました。これは結構な「風評被害」だなと感じたものです。

さて、翻って、そうした風評被害などの状況は、昨今、我々の周りでも取り上げられることが増えてきました。人々の口づてにとどまらず、インターネット上で一気に広がるようになったのも大きな理由でしょう。

では、風評被害とは何なのでしょうか?

簡単に言えば、「あることないこと言われ、信頼を失い、会社が影響を受けること」です。その影響は、主に三つで、

  • 仕事が取れなくなる
  • 採用が難しくなる
  • 既存社員がやる気をなくす

これらは、経営にとても大きく影響することです。書き込みをするのは、主に元社員、競合他社、お客様で、例えば以下のような事例が増えてきました。

  • 転職サイトに元社員が「ブラックだ」と書き込む
  • 競合他社が独自見解の比較表を公表し、当該社の製品は品質が低いと示す
  • 製品(サービス)にご不満を持たれたお客様が「対応が悪い」など批判的な書き込みをする

などです。これらの例を見て分かるように、こうしたことは、いつどんな会社でも起きないとは限りません。もはや中堅・中小企業にとっても他人ごとではなくなってきているのです。

風評被害にどう対応するか?

では、風評被害には、どんな対応を取ればよいのでしょうか?

まず、起きてしまったら、感情的、直接的に反応してはいけません。相手の書き込んだサイトに会社名で直接的に反論するなどもってのほかで、ほぼ炎上し、被害は拡大するでしょう。

法的な措置の話はここではしませんが、何らかの主張をする場合は、あくまでも自社サイトで、他者の批判をすることなく自社見解を述べるのが良いでしょう。書き込みを消す、目立たなくするなどの対応を専門の事業者に相談するのも一時的には有効かもしれません。日ごろから、検索サイトで自社名を検索する、転職サイトで自社の書き込みを確認するなど、できる範囲でモニタリングすることもタイムリーな対応を行うためには有効です。

ただし、そうしたことは恒久的な解決にはなりません。どんなリスクも根本的には自社の風土・文化に根差した自社の言動を元に発現していきます。悪い書き込みをされる原因は自社にあるわけで、そうした時は、腹が立って仕方がなくても、良い機会だと捉えて改善していきましょう。社内の現状を把握し、教育を実施するチャンスです。

また、リスクとはマイナスの影響だけを指す言葉ではありません。モニタリングしていれば、インターネット上で自社を賞賛する書き込みや、良い意味で有名にしてくれる書き込みもあるかもしれません。引き合いが増えた時、どんな書き込みが増えているのか、インターネット上でどんな評判が立っているのか、それを知り、活用することでブランドを強くすることもできるのです。

「マイナスもプラスも管理する」それがリスクマネジメントの醍醐味とも言えます。

大塚商会ウェブサイトより転載)
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