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「カテゴリー別リスクマネジメントの進め方」第1回: 人的リスクマネジメントを考える

掲載:2016年08月08日

執筆者:代表取締役社長 副島 一也

コラム

多くの中堅・中小企業の経営者が気になっている代表的なリスクを五つのカテゴリーに分類し、それぞれの対策を具体的に紹介していきます。第1回は、人的リスクマネジメントを取り上げます。

         

従業員に関するリスクや不安は多岐にわたる

中堅・中小企業において、リスクマネジメントのシステムを構築して運用していくことは現実的でなく、大きなハードルがあると言われています。私自身も中小企業経営者という立場から、それはその通りだと感じます。しかし一方で、経営を行っていくうえで、日々気になっていることは多いものです。そして、何も起きなければ良いがと思ってあいまいにしていても、その何かはほぼ起きてしまうことも経験上分かってきます。人生も経営もそんなに甘くないのです。

であるからこそ、多くの中堅・中小企業の経営者が気になっている代表的なリスクを大きく五つのカテゴリー(人的リスク、品質リスク、サイバーセキュリティリスク、風評リスク、事故災害リスク)に分類して、それぞれのカテゴリーごとに対策の進め方について具体的に考えていきたいと思います。自社で気になること、できることから対応を考えていただいてはいかがでしょうか?

今回、まずは「人的リスクマネジメント」について考えていきます。実は、多くの中堅・中小企業の経営者の皆様とリスクについて話していると、一番多く話題に上がるのがこの人的リスク(問題)です。まあ、だいたい、どの社長さんも労働基準監督署とも何らかの対応の経験があります。

「不当にサービス残業を強要されている」「残業代が正規に支払われていない」「会社の無理な要求が原因で病気になった」などから、「現場の主任が部下に対して暴言や無視など嫌がらせをする」「社員が集金したお金を横領した」などなど人にまつわるリスクは多岐にわたります。

こうしたことは多くの企業で起きていますし、自社でも過去に起きた経験はないでしょうか? そして今も誰かが倒れるんじゃないかとか、訴えられたら困るなとか、多少の不安を感じながら見えないふりを決め込んでいないでしょうか? もし、何かを感じるとするならば今、動く時です。やれることをやりましょう。

こうした問題は社長の決断がなければ解決しません。なぜ、この会社を創業したのか? この会社で何を大切にしたいのか? そのために自分はどうでなければならないのか? 売り上げも利益も社員や仲間があってのことです。みんながいきいきと元気で頑張れるから会社が成り立つのだ、そのために自分はできることを何でもやるという覚悟、決断です。

人的リスクマネジメント実践のヒント

1. 経営理念や信条などを社員に徹底させる

経営理念や信条などを社員と毎日一つずつ唱和し、その項目について社員が感じることを話し合うといったことを、経営者としてやるぞと言うこと自体相当の覚悟が必要です。いきなりやるぞと言ってもみんな半信半疑で、真剣に向き合ってくれないかもしれません。気恥ずかしく、1回やってすぐやめてしまえば、経営者の気まぐれでやったんだなと思われてしまいます。恥ずかしがらず、なぜやるのか、どうなりたいのか自分の気持ちを正直にみんなに伝え、やり続けることが重要です。

2. 社長自らいろいろな部署の社員と情報交換会を実施する

普段からコミュニケーションが取れているつもりでも、案外、お互いのことをよく知らないものですし、「社長が何を大切にしているのか」や「社員は何が気になっているのか」など分かっていないもので、情報交換会を定期的に持つことでお互い分かりあえコミュニケーションが良くなります。

3. 従業員満足度調査を実施する

社外のサービスを利用することもできますし、いったん、社内でアンケートを作ってやってみてもいいでしょう。無記名で正直な調査ができるようにしましょう。結果については、社長として傷つくことや腹立たしいとこもあるかもしれませんが、社長が傷つく分、社員の気持ちは楽になります。その成果をもって社長は反省と満足をしましょう。改善活動を行うことで社員の満足度も上がれば人的問題は改善されます。

4. 社内に人的問題掲示板を作る

ここまでやっている企業は少ないです。全社員公開で何を書かれるか分かったものではないからです。しかし、こうしたことを実行している企業は人的問題が格段に少ないです。

ここで、いくつかの改善活動例を挙げましたが、人的問題への対応は、企業風土をどう構築するかにかかっています。上記のような改善活動のみならず、日々の問題対応の意思決定時にどういう態度を示すか、毎回、回を重ねることが風土を作る瞬間だと経営者は覚悟してやり続けるしかないのだろうと思います。

大塚商会ウェブサイトより転載)
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