情報処理推進機構(IPA)は、3月26日に「トラスト入門」を公開しました。
テクノロジーの進歩やグローバル化の進行により、データの国際流通やデータ利活用などのあらゆる分野で「トラスト」の必要性が高まっています。しかし、現状としては、トラストという言葉を各話者が異なる意図で使うことで誤解が生じるケースがあります。また、トラストの確立方法には、対面によるものやIT技術を応用したものまでさまざまなものがあります。
そこで、ステークホルダーがトラストに関する共通認識を持ち、議論を円滑かつ活発に進められるよう、初心者向けに「トラスト入門」が公開されました。
前半では、トラストの定義を「相手が期待を裏切らないと思える状態」とした上で、トラストの基本的な考え方を解説しています。
Trustor(信頼する側)は、Trustee(信頼される側)の特性(Trusteeが備えていると主張する性質・特徴のようなもの)を総合的に判断します。Trustorの期待値を越えていれば、TrustorはTrusteeを信頼に足る対象と見なしてトラストを確立します。
TrustorがTrusteeの特性を判断する際には、①本人・本物なのか(対象真正性)②内容が事実・真実であるか(内容真実性)③約束は守ってくれるのか、そして守らなかった場合の補償やリカバリ策はあるのか(振る舞い予想・対応可能性)という3つの側面について、多面的・複合的に着目することになります。
TrusteeがTrustorに対して、信頼のよりどころとして特性を示すための手段にはさまざまなものがあります(容貌や適合性認証、有価証券報告書、住民票など)。しかし、何を提示するかはTrustorの主観や社会情勢などによって変わってくるため、Trusteeはユースケースを踏まえ、適切な手段を選ぶことが重要です。
また、デジタル社会が広がる昨今、顔が見えることを前提としたような従来の方法では、トラストを確立できないケースも増えています。そこで必要となるのが「デジタルトラスト」(デジタル空間におけるトラスト)です。デジタルトラストを確立するための手段として、電子署名やタイムスタンプ、eデリバリーなどが例示されています。
「トラスト入門」の後半では、Society5.0(内閣府が提唱している、日本が目指すべき未来社会の姿を示す概念)の実現に向けたトラストについて解説しています。具体的には、Society5.0で実現すべきとされている「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステム(Cyber Physical System:CPS)」を例に、トラストの検討方法を示しています。