金融庁は4月1日、2025年度の有価証券報告書レビューについて実施内容とともに、昨年度のレビューによる審査結果とそれを踏まえた留意点などを公表しました。有価証券報告書レビューは記載内容に関して適正性の確保と充実化の促進を目的に金融庁が各財務支局などと連携して例年実施しているものです。
公表資料によると、審査は大きく3つあります。一つは法令改正事項に関する審査です。2025年3月31日以降に終了する事業年度が対象で、有価証券報告書の全提出会社を審査します。2つ目は重点テーマ審査と呼ぶもので、この2つの審査が有価証券報告書レビューの柱となります。重点テーマ審査の対象会社は有価証券報告書の提出会社の中から選ばれます。
2025年度の重点テーマは①サステナビリティに関する企業の取り組みの開示、②コーポレート・ガバナンスに関する開示(政策保有株式関連の開示を含む)の2つが示されました。さらに、加藤勝信金融相が2025年3月28日付けで上場企業の代表者宛てに発出した「株主総会前の適切な情報提供について(要請)」に関する法令改正等関係審査を踏まえ、「深度ある調査」を実施するとしています。金融相の要請は、株主総会の開催日よりも前に有価証券報告書を提出・開示するよう求める内容です。
審査内容の3つ目は情報等活用審査と呼ぶもので、適時開示や報道、提供された情報などを踏まえ必要に応じて実施されます。
サステナビリティ情報は2023年1月に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」で有価証券報告書に記載する欄が新設されました(2023年3月期以降が対象)。有価証券報告書レビューでは、一昨年度および昨年度ともに主な審査対象範囲はサステナビリティとコーポレート・ガバナンスに関連した開示などとなりました。昨年度レビューを踏まえた課題としては例えば、一昨年度レビューにもあった「サステナビリティ関連のガバナンスに関する記載がないまたは不明瞭である」や「取締役会、会社が任意に設置する指名・報酬委員会、監査役会等の開催頻度、具体的な検討内容、出席状況などの記載がない」といったことに加え、「識別したサステナビリティ関連のリスクおよび機会に対応する戦略並びに指標および目標に関する記載がないまたは不明瞭である」や「政策保有株式の銘柄ごとの保有目的が安定株主の確保にあるにもかかわらず、当該目的が記載されていない」といったことも加わりました。
金融庁では識別された課題に企業が対処できるよう、レビュー結果の詳細とともに参考になる開示例なども示した文書を作成、公表しました。